オタク草食系男子は超肉食ヤンデレ宝石令嬢に美味しくいただかれます~純愛から狂愛へダイヤモンドの瞳は狙った獲物を逃さない~

スライム道

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鉄の石言葉は「あなたの愛を待っている」

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玲菜の母、春菊の来襲により病室を抜けた玲菜は母にお礼を言っていた。

「お母さん、今日はありがとう」
「良いですよ。あの人が煽ったのも悪かったし、華道さんとこの息子さんはほんま人とかかわりを持とうとしないと聞きましたからね」

それは……あまりにも可哀想ではないかと思い口にしようとしたところを踏みとどまる玲菜。
人の生き方は人それぞれだし自分が良いから他人もいいわけではない。
それが海外生活の長い玲菜の導き出した結論だったからだ。

「1年日本で学んでバルタザールが学ばせてきたことが抜け落ちてないか心配だったけどその顔は杞憂そうね」
「はい。そういえばお父さんは蒼汰さんの中学より前のことを聞いてましたけど何を聞きたかったんでしょうか?」
『それはだね、彼のトリガーの原因についてだよ』

どうやら病院の待合室にたどり着いていたらしい。
父が待っていた。

「はあ、いい加減日本語話せるんですから話したらどうですか?」
「ごめんごめん、あまりしゃべらなくなったものだから忘れてしまってね。今思い出したよ」
「バルタザールが私に交際を迫ってきたときは必死に学んだのにもう忘れとりましたの?あんさんの思いはもう燃え尽きとるんちゃいます?」

夫婦の喧嘩をしているところを見たことが無い私にはとても新鮮に見えたがそれよりも蒼汰のことの方が勝っていた。

「それでお父さん蒼汰さんについてだけど何が気がかりなの?」
「特に気がかりとかそう言った物じゃないんだけど、彼のトリガーが結構何をトリガーにしてるかがわからなくってさ。怒られた人物たちはみんな口をそろえてトリガーがわからないって言ってたから、今回のトリガーは映像にもある通り彼の大切なものを壊されたからだと思うんだけど……他が何なのか知りたくってさ」
「そうなんですか?」

怒っているときの彼は普段の彼からは信じられない雰囲気だった。
まるで物語に出てくるような凶戦士とでも言うような強さだったしそうなる原因がわからないのなら警戒するのも無理はないと思った。
……が原因を知っている人物は身近にも居た。

「それなら華道さんの息子さんから聞きましたよ」
「「え?」」
「なんでも最初は育てていた花を踏みつぶされたからだとか」

子どもが怒る理由としては妥当なところだった。
……が二人が驚いたのはそこではない

「あれだよねお花屋さんでだよね」
「そうか春菊は花道教室で蒼汰君のところと繋がりを持ってるからそこから聞いたんだよな」
「違いますよ、彼は気付いていませんが幼少期から会っていますから」

何それって顔をお父さんがしていた。
私の表情も固まっていることに気が付いた。

「ほら、日本の我が家って山の方にあるでしょう。あそこも家の土地ですけど彼が1人で作った秘密基地があるんですよあそこ1人ずっと黄昏てましたよ」
「お、おかあさん馴れ初めはなんなの?」
「そうだそうだ!」

一応ここ病院だぞという白い眼を見られても関係ない。
二人は興奮しながら迫っていた。

「はあ、二人ともここは病院ですさかい。どこかお店に入ってからにしましょうか」
「「あ」」
「病院に来た皆さんうちのもんが失礼いたしました」

謝ってから病院を出ていった。
私たちは近くの喫茶店に行くと話を再開し始めた。

「あの子とあったのは最初公園でボロボロになった植木鉢を持ってた時ですかね」
「ボロボロの植木鉢?」
「服もボロボロでブランコで揺られていましたよ」
「なるほどその時にトリガーがかかったのか」
「あなたは黙って」

こう言われたときのお父さんは無力でお母さんの指示に従うしかない。
紅茶を優雅に啜り話を続ける春菊

「彼に聞いたらねタンポポを育てていたんですって」
「タンポポ?どこにでもある花だが?」
「うーん彼から聞いた話によるとね……」

◇◇◇◇

「坊やそんなボロボロになってどうしたの?」
「わかんない」
「わかんないって……おばちゃんに話してみんさい何か力になれるかもしれないよ」

これは幼少期の蒼汰の物語だ。
春菊は服がボロボロになり土をいたるところに着けている幼い子どもを見つけ不思議に思い話しかけていた。
少年はブランコに揺られながら割れた植木鉢らしきものを持っていた。

「僕が育ててたタンポポ、植木鉢と一緒に壊されちゃった。そしたら目の前が真っ暗になって気が付いたら誰も居なくなってた」
「そっか、坊やが育てた大事なタンポポ壊されちゃったんだね。また育てられないの?」
「やっと見つけたタンポポだから次はいつ見つかるかわからない」
「なにか特別なタンポポなの?」

子どもはボロボロと涙を流しながら語り始めた。

「セイヨウタンポポじゃないタンポポ見つけるためにたくさん探した。父ちゃんが珍しいっていうから母ちゃんに観てもらおうとして前咲いてたの引っこ抜いて育てようとしてた」
「大切なモノだったんだね」
「う゛ん」
「よしよし頑張ったね坊や」

思わず春菊は見ず知らずの坊やのことを撫でていた。

「そうだ、今度花をこっそり育てたいって思ったらおばちゃんの場所貸したる」
「いいの?」
「いいんよ」

坊やは安心したのか自分の胸に入って寝入ってしまった。

「あらまあ寝ちゃったか。玲菜を残して日本に戻ってきたけどこんな幼い子の顔を見てると会いたくなるわね」

しかしここで問題が発生したこの子を送り届けようにも家がわからないのだ。

「そうだ。前に花道部で使ってたお花屋さんなら知ってるかな。近所だし行ってみようかしら」

胸の内に居る子をおんぶして自分の知っている花屋に向かう。
件の

「あれ?花道部の春菊さん?確か海外の玉の輿に入ったって聞いたけど帰ってきたの?」
「お花屋さん。実はこの子が……」
「あら、蒼汰じゃない。しかもこんなボロボロ、ちょっと待ってね花蓮〰蒼汰が帰ってきたわ。それと一応救急箱持ってきて!」

大きな声で呼ぶ花屋のおばさん。彼女は同じ学校だった同級生のお母さんでもあった。

「華道さんところのお子さんだったんですか」
「そろそろ暗くなるから探そうか考えてたところだったのよ」
「とりあえずこの子にはこの紙を渡しておいてください」
「これは地図かしら?」
「華道君のお父さんに言えばわかると思いますので」

そのとき、彼の握っていた砂鉄と思われる赤い石が光った。

「もう行くのかいお茶でもしてけばいいのに」
「いえ今日はこの辺りに建てる家の土地を見に来ただけですので」
「そうかいこっちに引っ越すのかい?」
「引っ越すかどうかはまだわかりませんが、いずれはこの子と同じくらいの娘が来れるように、私が生まれ育った町にいつでも帰ってこれるように夫が建ててくれるみたいです」
「愛されているようで安心したよ。アンタ昔から厳しく育ってる感じだったからね。アンタの子ども厳しく育つのかな?」
「いえ夫と同じような押してダメなら押し倒す正確になっていますよ」

おばさんはその言葉に高らかに笑い

「そんな旦那じゃないとアンタの夫は務まらないわね。この子あれでしょタンポポ育ててたんでしょう」
「名誉のために聞かなかったことにします」
「まあまあ、タンポポの花言葉は覚えてる?」

もちろん覚えている「愛の神託」「誠実」「幸福」だ。
そして鉄の石言葉も「あなたの愛を待っている」
あの子の愛が誰かに止まり愛が来ることを祈ろう。

それしか今は私にできないのだから
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