オタク草食系男子は超肉食ヤンデレ宝石令嬢に美味しくいただかれます～純愛から狂愛へダイヤモンドの瞳は狙った獲物を逃さない～

ホオズキの花言葉は「自然美」

「ん？お前らどうしたんだまるでエベレスト登山から帰ってきたみたいな顔して……」

いつの間にかチャイムが鳴り担任が訪れていたらしい。
担任は理系の先生で名前は鼓舞《たいま》　忍《しのぶ》といい写真部の顧問でもある。
ジャージに白衣を着た女性で胸もそこそこあり眼鏡を外すと美人のだが色々とガサツであるため残念女子忍ちゃんと呼ばれている。

「とりあえず甘夏は席に座れよホームルーム始めるから」
「蒼汰さんが蒼汰さんが名前で言ってくれた言ってくれた」

現在トリップ中の玲菜さんには外部からの音声はきこえないらしい。

「ち、聞こえてねえな。おい、華道。甘夏に愛してるとでも囁け」
「Ha!?」
「なんだよ付き合ってねえのかじゃあしょうがねえ」

さらりと忍先生は玲菜さんの耳元まで近づき

「玲菜、俺はお前のことが好きだ」

忍先生の声は聞こえなかったがろくでもないこと言ったのは理解した。

「え？蒼汰さん本当ですか！！」
「悪かったな甘夏、今の声は私だ。そして席に就け」
「ふ、不覚です。偽物の声に惑わされるとは」

忍先生は耳元のホオズキのイヤリングを触りながら悪戯っ子の笑みを浮かべて答えた。

「鳥や野生動物を誘うときに声真似は便利なんだぞ」
「先生俺ら写真部は知ってますよ。それと今日はなんでイヤリングなんかしてるんですか？うちの学校アクセサリー禁止ですよ」
「おいおい、これは理事長からも許可をもらってるからいいんだよ。数日だけだがこれはつけておかないといけないんだ」

科夫がツッコミを言い放つがサラリとかわす忍先生だが他の女子生徒たちは納得がいかなかった。

「なんで先生だけオシャレしていいんですか！ズルいですよ！！」
「オシャレっていうより儀式だな。実は私事なんだが私の母が死んでな。遺言で数日はこのイヤリングをつけておくように言われたんだよ」
「むー」
「納得がいかないのも無理はないがうちの学校の校則には形見に限って言えば証明できるものを提示すれば生徒、教員の折り合いがつくまで身に着けていいモノに成ってるんだ我慢してくれ」

そんな校則があるのは珍しいが実際高校生や中学生の時期に成ると祖父母などの葬式が増えるのは事実。
親しい人物の死を受けられない場合も多々聞くためその対策として形見の持ち込みを容認している学校も特例としてだが認めているところもある。

「まあ社会に出ればいくらでもお前らを縛るものが沢山ある。この中でアルバイトをしている奴はいないが接客業なんかは髪の長さとかまで言われることがある。もちろんこの中には芸能界に行く者も多いだろう。けど縛るモノが多いことに変わりはない。今のうちに慣れとけっていうのも大人の理不尽かもしれないよな。でもな、大人は自己中なんだよ。もうお前らを社会の汚い部分から護れるようにするっていう契約を親と結んでるんだ」
「残念女子忍ちゃんがまともなこと言ってる！？」
「おいそこ真面目に言ってるんだから笑うなよ」

忍先生が言いたいのはあくまでも自分たちは生徒であり親に守られてい居るということを言いたかったのかもしれない。
蒼汰は一応動画による広告収入を受けている身としては契約という行為をある程度は理解しているつもりだった。
親は子を守る義務がある。そのために義務教育があるしそういう契約も学校や市、国と結んでいる。動画広告収入の際も保護者同伴で収入に関しても制限を設けることで蒼汰を護るという契約を果たしているわけである。

「で～も～忍ちゃんだけみたいな人が良くて私みたいなオシャレな人がつけたりしちゃいけないのは嫌だなぁ」
「おい海道《かいどう》、これはオシャレじゃないと言っているだろう？」
「えーでも私女優志望なんですよ。ピアスとか付けたっていいじゃありませんか」

この学校は一応芸能人も育成はしているのだがピアス穴はなどは認められていない為厳しいチェックが入る。

「オシャレはね自分の良いところだけを見てほしい時にするモノなの…わかる？」
「そんなの先生だって自分の良いところを見せたいんじゃないの？」
「違うわ。華道君ならこのイヤリングの意味は分かるんじゃないかしら」

急に話を振られた蒼汰だがとりあえず先生の言いたいことはわかったので答えることにする。

「先生のピアスのホオズキの花言葉は様々ありますが先生は儀式とおっしゃっていましたのでおそらくこのような意味を込めたんじゃないですか？」
「ちょっとまってよ花言葉とか関係ないじゃん！」
「関係あるんだなこれが、一応流行とかはあるけど花をあしらった装飾品は意味を込める場合がほとんどだ。むしろこれを無視する彫金師は皆無に等しい」

忍先生の言う通りいくら流行を作る人物たちでも花言葉や石言葉などの隠語として捉えられないように注意してデザインする。
ホウズキをあしらった装飾品を恋人向けにつくる職人はいないだろう。
なぜなら

「ホオズキの花言葉は「欺繭」「自然美」「偽り」です」
「それがどうしたっていうの？」
「海道も女優志望なのにロマンは無いんだな」
「先生に女優のなにがわかるんですか！」
「ったく華道説明してやれ」

忍先生はどうにも変なところで自分では言わない節があるらしい。
まあ今回は事が事だけに仕方がないかもしれないが……

「繭を纏い、自然体を偽ってほしい。そうですよね先生。心中お察しします」
「なにが言いたいのよ！」
「先生はあのイヤリングは誰の物って言ってた？」
「は？形見で……」

海道は黙った。
そのイヤリングをしている時だけは悲しむ姿を見せないで欲しい、いつもの彼女を見せてほしいそんな願いが込められていた。
忍先生も我慢しているのだ。彼女は華道が入院しているときに葬式があった。本来親族の葬式で親の場合学校では2週間休むことを許されている。

忍先生は見せたかったのだろう。
今亡き母に自分の仕事姿を……