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里芋の花言葉は「無垢の喜び」1
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学校に来ると案の定囲まれた。
「この人が来夢さんの許嫁?」
「なんか冴えないけど優しそう」
「そうね身だしなみは最低限整えてあるしオシャレっていうよりもサラリーマンって感じかしら」
来夢さんのお友達なのだろうか蒼汰のことを褒めているのか褒めていないのかわからない様子だった。
「みんな蒼汰君の事知ってるの?知らないのに悪く言えるってある意味凄いね」
友達ではなかったのだろうか
友達に向けるモノとは思えないほどの皮肉を込めた言葉に蒼汰たちを囲んでいた3人はたじろいだ。
「そ、そんな私は来夢さんのためを思って言ったのに……」
「そうだよこんな冴えない男よりもいい人が居るよ」
「だから吹奏楽部の助っ人辞めないで」
確かにこのような友達は友達とは呼べない。
来夢さんも友達とすら思っていないのだろう。
ただでさえ吹奏楽は団体競技、協調性や一人一人の意識がモノを言う世界だ。
それをたった一人に頼らねばいけないほどに追い詰められている部活なのだろう。
「ふむふむ、吹奏楽部もあろうものがたった一人の人材が居なくなるだけで成り立たなくなるほど無能しかいないのですか?」
こういうとき甘夏さんはズバズバ言ってくれるから安心だ。
海外の人はズバズバモノを言うとよく言うが甘夏さんもそれに当てはまるようだ。
「そもそもオーケストラなどの音楽は指揮者という役割があります。その役割が必要なほどに団体での音楽は難しい。しかしながら来夢さんは指揮者では無い。指揮者なら残ってもらいのもわかりますが指揮者でもない人間を頼った時点であなた方は指揮者に頼る以前のことができていないことと成ります。もちろん音楽の先生なども忙しいでしょうが自主練はしっかりしているんですか?あなた方の手や唇を見る限りではしていないように思えるのですが?」
「なによ手や唇がどうしたっていうの、関係ないじゃない!」
「いいえ、来夢さんの手や唇はケアはしていますが明らかに荒れています。あなた方のように綺麗ではないのです。それが何を意味するか解りますか?」
「な、何よ。そういう体質なのかもしれないじゃない」
反抗するがそれは悪手だ。
「この手を見てわからない時点であなたたちは歴史から何も学んでいないのですね」
「は?」
「ファーブルの伝記は御存知で?」
「ファーブル?伝記?何それ?」
「まさか伝記すら知らないとは学の無さを感じますね」
伝記とは第三者視点で書かれたその人物の半生を綴った書物である。
伝記には著名な人物が綴られたものが大半で学べることが多い。
もちろん授業では教えることが無いため学生、増してや高校生のうちに読む人物はあまりいないがこの学園は経営者の子どもも集まる学園だ。
経営学に置いても伝記などの経験談は教材として成り立つものだ。
もちろんこの学園には芸能人も居るがその大半は芸能活動に専念するために部活はしない。
「話を戻しますが来夢さんの指には管楽器特有のタコがあります。それに加えて唾液が付着しやすい唇が荒れていることから少なくとも貴方たちがやっているよりは練習を欠かさずやっている証拠でしょう。しかも来夢さんは管楽器だけでなく様々楽器を触っています。ですから他にも色んな傷があります」
「だから何よ!そんなの家の都合でしょ!」
「そうよそうよ!今まで部活に来てくれてたんだしこんな冴えない男に時間使うくらいなら今まで通り私たちに時間を使ってくれた方が余程有意義よ」
蒼汰はチラリと甘夏さんの方を観る。
案の定沸騰しかけている。
好きな人を馬鹿にされてしまっては怒りの沸点に瞬く間に到達しかねない。
「ほほう今年の一年はどうやらファーブルが嫌がりながらも認められた努力の手を理解できないとは教育が必要だな」
たむろしていた彼女らは後ろを振り向くとそこには蒼汰たちの担任にして理系教師の忍先生が居た。
「2年生の理系の教師とお見受け致しますが部外者は黙っていてください!」
「これは部の将来に関わることなんです」
「そうです。音楽の教師でもないあなたに何がわかるっていうんですか!」
白衣を揺らしながらタイツを見せる姿は男子生徒の目の的だった。
そして彼女たちの前に来ると……
「~♪~~♬~~~」
「「「え」」」
「これは今期の課題曲の幻想曲」
「へえ流石忍先生だね」
「ええ、蒼汰さんの声を真似るだけのことはあります」
忍先生はリコーダーの音を声のみで再現しながら二つのパートを一人で奏でていた。
「ふう一節ならこんなものか。声でこのくらいのことができるんだが、君たちは吹奏楽をしているんだろう?生物はね努力すればいろんな音が出せる。しかしそれをするには色んなことを知らなければならないんだ。その結果色んな所がボロボロになってしまう。私がこの声真似を習得するのにどれだけボロボロになるまで練習したと思う?そこの1年の視える苦労すら見て見ぬ振りをしたい君たちにはわからない領域さ。それと他人の将来と自分の将来なら私は恋人以外なら自分の将来を選ぶ。君たちのような他人に将来を委ねている時点で将来を語る筋合いは無いよ。これで話は終わり、吹奏楽部の顧問にも話はしておくから覚悟しておくように」
甘夏さんが怒る間も無く忍先生が颯爽と掻っ攫って行った。
季節はもうすぐ梅雨、雨の音楽が響き渡る季節を迎える。
「この人が来夢さんの許嫁?」
「なんか冴えないけど優しそう」
「そうね身だしなみは最低限整えてあるしオシャレっていうよりもサラリーマンって感じかしら」
来夢さんのお友達なのだろうか蒼汰のことを褒めているのか褒めていないのかわからない様子だった。
「みんな蒼汰君の事知ってるの?知らないのに悪く言えるってある意味凄いね」
友達ではなかったのだろうか
友達に向けるモノとは思えないほどの皮肉を込めた言葉に蒼汰たちを囲んでいた3人はたじろいだ。
「そ、そんな私は来夢さんのためを思って言ったのに……」
「そうだよこんな冴えない男よりもいい人が居るよ」
「だから吹奏楽部の助っ人辞めないで」
確かにこのような友達は友達とは呼べない。
来夢さんも友達とすら思っていないのだろう。
ただでさえ吹奏楽は団体競技、協調性や一人一人の意識がモノを言う世界だ。
それをたった一人に頼らねばいけないほどに追い詰められている部活なのだろう。
「ふむふむ、吹奏楽部もあろうものがたった一人の人材が居なくなるだけで成り立たなくなるほど無能しかいないのですか?」
こういうとき甘夏さんはズバズバ言ってくれるから安心だ。
海外の人はズバズバモノを言うとよく言うが甘夏さんもそれに当てはまるようだ。
「そもそもオーケストラなどの音楽は指揮者という役割があります。その役割が必要なほどに団体での音楽は難しい。しかしながら来夢さんは指揮者では無い。指揮者なら残ってもらいのもわかりますが指揮者でもない人間を頼った時点であなた方は指揮者に頼る以前のことができていないことと成ります。もちろん音楽の先生なども忙しいでしょうが自主練はしっかりしているんですか?あなた方の手や唇を見る限りではしていないように思えるのですが?」
「なによ手や唇がどうしたっていうの、関係ないじゃない!」
「いいえ、来夢さんの手や唇はケアはしていますが明らかに荒れています。あなた方のように綺麗ではないのです。それが何を意味するか解りますか?」
「な、何よ。そういう体質なのかもしれないじゃない」
反抗するがそれは悪手だ。
「この手を見てわからない時点であなたたちは歴史から何も学んでいないのですね」
「は?」
「ファーブルの伝記は御存知で?」
「ファーブル?伝記?何それ?」
「まさか伝記すら知らないとは学の無さを感じますね」
伝記とは第三者視点で書かれたその人物の半生を綴った書物である。
伝記には著名な人物が綴られたものが大半で学べることが多い。
もちろん授業では教えることが無いため学生、増してや高校生のうちに読む人物はあまりいないがこの学園は経営者の子どもも集まる学園だ。
経営学に置いても伝記などの経験談は教材として成り立つものだ。
もちろんこの学園には芸能人も居るがその大半は芸能活動に専念するために部活はしない。
「話を戻しますが来夢さんの指には管楽器特有のタコがあります。それに加えて唾液が付着しやすい唇が荒れていることから少なくとも貴方たちがやっているよりは練習を欠かさずやっている証拠でしょう。しかも来夢さんは管楽器だけでなく様々楽器を触っています。ですから他にも色んな傷があります」
「だから何よ!そんなの家の都合でしょ!」
「そうよそうよ!今まで部活に来てくれてたんだしこんな冴えない男に時間使うくらいなら今まで通り私たちに時間を使ってくれた方が余程有意義よ」
蒼汰はチラリと甘夏さんの方を観る。
案の定沸騰しかけている。
好きな人を馬鹿にされてしまっては怒りの沸点に瞬く間に到達しかねない。
「ほほう今年の一年はどうやらファーブルが嫌がりながらも認められた努力の手を理解できないとは教育が必要だな」
たむろしていた彼女らは後ろを振り向くとそこには蒼汰たちの担任にして理系教師の忍先生が居た。
「2年生の理系の教師とお見受け致しますが部外者は黙っていてください!」
「これは部の将来に関わることなんです」
「そうです。音楽の教師でもないあなたに何がわかるっていうんですか!」
白衣を揺らしながらタイツを見せる姿は男子生徒の目の的だった。
そして彼女たちの前に来ると……
「~♪~~♬~~~」
「「「え」」」
「これは今期の課題曲の幻想曲」
「へえ流石忍先生だね」
「ええ、蒼汰さんの声を真似るだけのことはあります」
忍先生はリコーダーの音を声のみで再現しながら二つのパートを一人で奏でていた。
「ふう一節ならこんなものか。声でこのくらいのことができるんだが、君たちは吹奏楽をしているんだろう?生物はね努力すればいろんな音が出せる。しかしそれをするには色んなことを知らなければならないんだ。その結果色んな所がボロボロになってしまう。私がこの声真似を習得するのにどれだけボロボロになるまで練習したと思う?そこの1年の視える苦労すら見て見ぬ振りをしたい君たちにはわからない領域さ。それと他人の将来と自分の将来なら私は恋人以外なら自分の将来を選ぶ。君たちのような他人に将来を委ねている時点で将来を語る筋合いは無いよ。これで話は終わり、吹奏楽部の顧問にも話はしておくから覚悟しておくように」
甘夏さんが怒る間も無く忍先生が颯爽と掻っ攫って行った。
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