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 ギルド
 同じ目的を持つ人々が手を取り合い助け合うための組合。
 しかしこの時代では違う。
 人々はギルドを命を賭けてロマンを追い求める者たち、冒険するモノ。
 彼らが集まる場所をギルドと呼ぶことにした。

 ここに同じくして集う同志たちが今日もまた、小さな町のギルドに冒険するモノが訪れる。

 「初めての方ですね。
 こちらで用紙の記入をお願いします。」

 今日も大型新人とか大型依頼とか来ないんだろうなあと思いながら、受付にボーっとしていると珍しく新人が来た。
 とは言っても4月、うちのギルドの年齢制限から離脱した大学生とかが来る頃か。
 若い女性とは珍しい。
 髪の毛は染めているのか、それとも地毛かわからないが緑がかった琥珀のような髪と、くっきりとした二重の瞼に隠されたまさしくアンバーと呼べる透明な金の瞳。
 くびれのあるおなか、羨ましい。
 唯一自分が勝っているものがあるとすれば慎ましやかな胸部くらいのものだろうか。

 私の容姿?
 平均的です!
 告白されたことなんかないもん!
 あの時、あの時、告ってればワンちゃんあったかもしれないのにぃ。
 今は趣味に生きると決めたんです!
 容姿なんてそれなりのことしてればいいんですよムキー。

 おっとダークサイドに陥ってしまった。
 しかし、落ち着きのある子だな。
 大学生で落ち着きのある子が冒険者やるなんて、お金に困っているのか仕事にありつけなくてしょうがなく冒険者になるくらいしかないんだけど。

「…」

 テキパキと書いていくことから、場慣れしている。
 一人暮らしを経験しているのかな?
 書類を書く経験がそこそこあるのは住民票なども写している学生さんが多いけど、それともフリーター?

「書けた。」

「はい、確認いたします....問題ありません。
 では本人確認できる書類を確認させていただきます。
 主にマイナンバーカード、運転免許証など顔写真付きのモノをお願いします。」

「....」

 スッと差し出してきたのは運転免許証。
 中型のバイクのみ、車を取っていないが女性で中型バイクのみとは珍しい。

「はい、確認できました。
 ようこそ、術師ギルド厚焼卵へ。」

「依頼。」

「早速依頼ですね。
 基本的にはクエストボードに貼っている依頼を受けるか。
 マスター直々に依頼を出す指名依頼の二種となっております。」

「ギルドマスターはあなた?」

「はい、若輩ながらマスターを務めております暇(イトマ) 詩(ウタ)と申します。
 よろしくお願いいたします。」

 ゴチン。
 背後から拳骨一発。
 痛そうな音とともに、石頭なのは確実と思わせる骨の音。
 瞬く間に彼女はヒヨコを4羽頭に踊らせております。

 尚、その犯人はバッキバキに割れた腹筋をスーツの上に隠した歩く筋肉です。
 冒険者自体はどこぞの戦闘民族のような恰好をしていたらしいですが、今はスーツが主みたいですね。
 内務の仕事は私に任せているのに、なんでスーツなんか来ているんだか。
 全身に筋肉だから体重も

 ゴチン。

 ピヨ
 ピヨ
 ピヨピヨ

 く、やつめ、私の体重計(電磁波感知型質量測定目視術)を看破したな。
 
「すまんなあ、私がギルドマスターの春だ。
 コイツは実力の方は確かだがすぐに嘘をつく。」

「そう。」

「依頼に関しては先ほど言った通りだ。
 しかし、小さなギルドには大した依頼は来ない。
 常駐依頼を進めていくことを新人の内は進めるぞ。」

「り」

 クエストボードを一通り彼女は見るとすぐに取った。

「これ。」

「常駐依頼の雑魚3種の駆除か。
 ゴブリンは眼、スライムは核、ホーンラビットは角をちゃんととって来いよ。」

 コクリ

 ◇◇◇◇
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