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 ◇◇◇◇

 今しがた、出て行った彼女を見送ると、受付の女性、詩は疑問に思ったことを口にした。
 
「マスター、彼女を止めなくてよかったのですか?
 見たところ武器も持っていないようですし、いくら格闘家でも危険なんじゃ。」

 詩自身がギルドの受付を行い荒くれものにも自衛できるように、術を会得している。
 人を推し量る目も持っているつもりだ。
 少なくとも私が門前払いをしてきた人材は他のギルドに行って命を落とした一報を受けたりしている。

 その私が見ても彼女は門前払いするか迷った。
 これが意味するは彼女が及第点ギリギリの実力者ということ。
 いくら弱小ギルドで人材不足とはいえ、及第点ギリギリの人間を初見のダンジョンを一人で行かせるのは如何なものかとマスターに問うた。

「心配ねえよ。
 うまく隠しているが暗器を大量に持ち込んでいる。
 しかも俺が見た瞬間、解るようにしやがった。
 真昼間にあの量を見せられたら俺は警察呼んで撃退できるかどうかってところだ。」

 女の人なのに男らしい口調で話すギルドマスターにだから婚期逃すんだぞと、心の中で悪態付きながら私が察知しきれなかった指摘を確認した。

「え?
 あんな小さな子のどこにドン引きするくらいの武器が仕込んであるんですか?」

「知らねえよ。
 お、それよりか業務に集中しろ、他にも新人が来たぞ。」

 元気が溢れんばかりの活発系の声が建物の外から聞こえた。

「たのもー!」

 どこぞの有名馬のような立派なポニーテールをしたシルエットがギルドの入り口から見えた。

 ◇◇◇◇

 ところ変わってフィールド型ダンジョン榴ヶ岡。
 甲子園優勝経験校近くにあるところで野球スタジアムも近くにある。
 鉄道も通っているので利便性も非常にいい。

 そしてここには初心者にも最適な雑魚が多く、零細ギルドの常駐依頼にも最適で本日登録したばかりの若者がこのダンジョンを訪れていた。

「グギャ?」

「脆」

 ゴブリンの首をどんどん転がしていく。
 それだけでは無く、スライム、ホーンラビットの屍もどんどん増えていく。
 作業化していく獲物狩りは、ストレスが非常に溜まる。
 もう少し歯応えのある敵は居ないのかと索敵する。

 居た。

 こんな雑魚より骨のある敵が。

「ん?」

 他にも反応がある。
 感覚から行って人間。
 しかも女性と来た。
 私よりも筋肉量は多い。

「面白い。」

 相手がどんな出方をするのか、相まみえている女性を観察しに向かうとした。
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