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「うそーん、こんなところでゴブリンアルゴノーツなんて出てるんだー!」

 アシハヤ!
 パシリって呼びたくなるくらい早い。

 あれがゴブリンか、そうとは思えないほどたくましい。
 筋肉の付き方からして多少の無茶も聞くし、噴石を発射するような術も使っている。
 それに加えて、投石なども織り交ぜている。
 非常に厄介な敵だ。

 走っている少女を見ると全速力で逃げている。
 動き自体は彼女の方が良いのに、何故攻撃に転じないのかが不思議だ。
 逃げながら次の足場をしっかり確認しつつ投石や噴石にも目線を向けている。
 これだけ視野が広いのにもったいない。

 それとなんだあの文字通り馬のしっぽみたいなポニーテールは。
 走るたびに、ぴょんぴょん跳ねては頭に血液が送られていくように脈打っている。
 馬の後ろ脚全体に行きわたる生命の脈動のような激しい動きだ。

 筋肉と脂肪の配分は素晴らしい。
 長期的かつ短期決戦でもやれるような絶妙なバランス配分。
 すべてを維持するのは大変そうだが、なかなかな戦闘の体形をしている。

 容姿としては、ハイになっているから詳しくは説明できないが、優れているものととらえられる。
 瞳はおそらく茶色、今は血走っているせいか赤く充血も起こっている。
 髪の毛も同じような感じだ。
 胸は、私とどっこいどっこいだが負けている気がする。

「うおおお!私は行ける目指せ10秒の壁!」

「バカ?」

 何ギルド所属かはわからないけど、逃げることに命賭けている気がする。

 けど蹴り上げた礫が凄い威勢で飛んで行ってモンスターに当たっている。
 普通の人間だったら血だらけだろうけど足場のいい場所の丸みを帯びた礫程度では眼くらましにしかならない。
 痛いかもしれないが、血も流さないし、特段ダメージ入るとは思えないけど。

「キターー!
 キタキタキタキタ。」

 少女の叫ぶ先にあるのは岩石。
 あれを使うのかな?
 と思っていたら予想と反して振り返って突っ込んだ。

 ゴブリンアルゴノーツも、急に翻したものだから驚きながら対応している。

 勝負はそこそこ早かった。
 ゴブリンアルゴノーツを足場に使い一度も足を地につけることなく攻撃を繰り返して終わった。

 この状況から考えられるのは、集中するために走っていたとみるべきか。

 面白い。
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