Hello,world

よる

文字の大きさ
7 / 10

アーリーアーリーモーニング

しおりを挟む

  午前8時。京獄は、久しく嗅いでいない日本の伝統的な発酵食品一つ、味噌の香りで目が覚めた。

「あかりん、おっはー」

「おはよう。もうそれ誰も使ってへんで」
 
 軽快なリズムでツッコミを入れた灯の手元には、白い皿の上で黄金に輝く卵焼きがあった。テーブルを見てみると、わかめの味噌汁、パックご飯、カット野菜のサラダが並んでいる。

「すごいこれ、あかりんが作ったの?」

「一宿一飯の恩です。あ、食材勝手に使ったけどごめんね。食べれるならどうぞ」

「ありがてぇー!一飯っていうか、十チョコだったけどね」

 一人分しかないことに気づき、灯に問うが「チョコがそこまで来てるから」とのことなので遠慮なくいただく。

「えー!すごいうまい!この味噌汁とか、心に染みるわぁー。いいお母ちゃんになれるよ」

「お母ちゃんて」

「じゃあ、いいお嫁さん?」

 京獄が発した「嫁」という単語に、聞き覚えのある声が重なる。また、頭の中に影が落ちてきたが、うまそうに卵焼きをほおばる京獄を見ていると、重ねて思い出すことが不純な気がしてやめた。

「……どっちも無理やろ」

「あははっ、ツッコミいただきましたー」

 京獄が、「あ、時間やばい!」と、慌てて味噌汁を流し込み、丁寧にごちそうさまをする。灯がその一連の様子を眺めていると「そうだ」と、後片付けを頼むみたいな軽さで京獄が言った。

「晩ごはんも作ってくれないかな?」

 あからさまに困惑している灯に、京獄は慌てて付け足す。さらに逃げ道をなくすため、いそいそと身支度をしながら。

「俺今日、昼も食べられないくらい忙しくて、晩ごはんはゆっくり家で食べたいんだよね」

 そんな京獄の小細工が効いた。灯は状況を察し、とても自信のない感じで「俺でよければ」と頷いた。

「助かる!夜8時には帰るね!あ、食材とか自由に買って!鍵とお金ここに置いとくね」

「あ、嫌いな物とかは……」

「ないない!あ、あと今日、機材借りに配信者くるけど、あかりんのこと伝えてるから気にしないで!行ってきます!」

「いってらっしゃい……」

 灯は、嵐のように去っていく京獄をただただ目で追うことしかできなかった。
 一方京獄は。

『え、お前は早すぎ!2時間前じゃんw』

『いや~ちょっと張り切りすぎちゃいました~?』

 駅で待ち合わせていた相手を困惑させた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

政略結婚したかった

わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏 有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。 二十歳までにデビューしたら婚約破棄 デビューできなかったらそのまま結婚 楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。 会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ひとりのはつじょうき

綿天モグ
BL
16歳の咲夜は初めての発情期を3ヶ月前に迎えたばかり。 学校から大好きな番の伸弥の住む家に帰って来ると、待っていたのは「出張に行く」とのメモ。 2回目の発情期がもうすぐ始まっちゃう!体が火照りだしたのに、一人でどうしろっていうの?!

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...