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第十四章 兵(つわもの)どもが夢の跡
古代人と魔族
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――古代人がスカルペルに現れ、姿を消した理由(裏の説)
スカルペルには種族の敵、魔族が存在する。
この説では、古代人は有用なものを求めスカルペルに現れたわけではなく、知性ある我々を守るために異世界より訪れたという。
だが、激しい戦闘の末……。
「ここから先もいくつか説が分かれてしまうのだが、敗北して滅びた説。諦めて元の世界に帰った説。何かの事情で帰還せざるを得なかった説」
「最後の説はなんだか、ふわっとしてますね」
「エクアの言うとおりだ。これらの説はもちろんのこと、定説としての有用なものを求めて旅をしているを含め、正直、なぜ彼らがスカルペルに訪れ消えたのかは謎、というのが正解だろう」
ここで親父がある部分について、納得のいかない様子で言葉を漏らす。
「古代人が魔族を退治にって、そりゃサノアの役目でしょうに。何やってんすかね、我らが創造主様は?」
「親父のような意見が出るからこの説は機密、というか封印されている……その魔族は、サノアと敵対していた悪神の落とし子という話もあるのだが。まぁ、だからこそ、サノアの役目なのだろうが……」
「でしょうよ」
「だけどな、実際のところ魔族について詳しいことはわかってない。私たちよりも強く、コミュニケーションも取れない。そのため、なかなか調べることができないので生体は謎に満ちている。過去の解剖の所見によると、強再生の理由すらわからなかったらしい。その解剖もまた易々とは……」
「教会の連中がうるさいんですね?」
「その言葉にはっきりとは同意しかねるが、まぁそうだ。彼らは不浄なる存在である魔族を調べることを禁忌としているからな」
「教会もサノアも役に立ちやしねぇな」
親父は信仰心が薄く、教会やサノアをよく思っていないのだろう。
唾を飛ばすような口調を見せた。
すると、エクアがサノアを擁護する声を上げる。
「サノア様は悪神との戦いで傷を負ったと言われています。だから、魔族を滅ぼすことができなかったのでは?」
「それはそれで、俺たちを創った神様ってわりには情けなくねぇか?」
「そんな……あっ」
「どうした、エクアの嬢ちゃん?」
「もしかしたら、魔族を退治するためにサノア様が古代人を呼び寄せたのかも」
エクアの柔軟な発想に、私は軽い笑い見せて答える。
「ははは、そういった説もある。ま、記録が不確かな千年前の出来事。神話として割り切り、今はまだ謎ということにしておくしかないのかもな」
と、ここまでの話は、裏とはいえ従来の古代人渡来説・消失説にすぎない。
だが、我々理論派は彼らを知らべ、真実の一端を知った。これは理論派の一部とヴァンナスの支配階級しか知らぬこと。
古代人が訪れた理由は不明だが、魔族の正体と消えた原因はある程度推測できている。
当時、古代人たちは何者かと敵対しており、魔族はその敵が創ったものではないか? という推測と、ほぼ確実視されている説――古代人は敵によってばら撒かれた致死性の物質に侵されて滅んだ……。
敵が何者でどこへ行ったのかは全くの不明だが……少なくとも、かつて古代人に匹敵する存在がいた可能性がある。
ただし、その痕跡は見つかっていない。
あるのは、古代人を死に至らしめた痕跡のみ……。
このことを話せばフィナが気づきかねない。私や、勇者であるアイリやレイの正体を。
彼女は賢い。欠片から全体を知ることのできる人物。
だから、今はまだ、皆に真実を渡すわけにはいかない。
――私がサノアや教会を卑下する説を披露する中、会話に参加していなかったマフィンとマスティフが声を震わせて扉に向かい指を差してきた。
「あのニャ、楽しいご歓談の最中~、申し訳ニャいが……話しの頭で、このばいおなんちゃらマークは危険な病原体を扱うマークと言ったよニャ?」
「ああ、言ったぞ。このマークはそれに使われる。古代人も同じ意味で使っていたとすればだが」
「そうであるならば、相当まずいことでは? 扉が少し、開いておるぞ」
「え!?」
私は体ごと扉へ顔を向けた。
マスティフの言った通り、扉が少し開いている。
すぐさま青いひし形のナルフを浮かべ、扉とその隙間。そして、周囲を調べる。
「……異常なし。ふぅ~、少し焦ったな」
「安全、なんですか?」
「ああ、エクア。大丈夫、安全だ。室内にも汚染はないようだ」
「この部屋も他の部屋と同じで、空っぽなんでしょうか?」
「それは覗いてみないと。中には何かの研究器具があるかもしれん。有用なものがあれば嬉しいが」
といって、扉に近づくが、全く反応しない。
「扉が壊れているようだ。ならば、仕方がない。親父、マスティフ殿」
「こじ開けるってわけですな」
「それしかなかろう」
私たち三人は隙間に指を入れて、タイミングを合わせ扉を横にずった。
「おお~!!」
「むぐぐぐ!!」
「ふんぬ!!」
扉は横に押し込まれた。
私は息を切らし、内部へ目を向ける。
中には何らかの機械や器具とベッドの形をしたガラスケースのようなものがあった。
ケースの中には何も入っていない。
室内に入る前にナルフ浮かべ、調べる。
「うん、何もなしだな。ガラスケースの方も調べるか」
私は部屋へ入る。
後ろからエクアたちが続こうとしたが――突如扉が閉まり、私たちを分断した!
「なっ!?」
扉に近づき、扉を横へずらそうとする。
しかし、びくともしない。
「クソッ! みんな、聞こえるか?」
完全に密閉されているのか、室内で声が反響するだけで外には届いていないように思える。
「病原体を扱う研究室。密閉されていて当然か。おそらく、エクアたちがフィナを呼びに行ったはず。それまで大人しく、っ!?」
『fでょいhてぇんfllfほえrふぇjlごいyふぇjg』
室内に声が響き渡り、部屋全体に赤の点滅が広がる。
どう考えても、いやな予感しかしない。
私は扉を叩きつけ、横へ動かそうとする。
「この、うごけ、うごけ、うごけぇえぇ!」
――幻想のアーガメイトの書斎
フィナはナルフを使い、この部屋全体を解析していた。そこに、机に置いた懐中時計のアラームが鳴り響く。
その音に大きく心臓を跳ね上げ、次に大きく呼吸を行い、時計をポシェットに納めた。
「大丈夫。大丈夫よ」
フィナはそう言葉を残して、部屋から長廊下へと向かった。
スカルペルには種族の敵、魔族が存在する。
この説では、古代人は有用なものを求めスカルペルに現れたわけではなく、知性ある我々を守るために異世界より訪れたという。
だが、激しい戦闘の末……。
「ここから先もいくつか説が分かれてしまうのだが、敗北して滅びた説。諦めて元の世界に帰った説。何かの事情で帰還せざるを得なかった説」
「最後の説はなんだか、ふわっとしてますね」
「エクアの言うとおりだ。これらの説はもちろんのこと、定説としての有用なものを求めて旅をしているを含め、正直、なぜ彼らがスカルペルに訪れ消えたのかは謎、というのが正解だろう」
ここで親父がある部分について、納得のいかない様子で言葉を漏らす。
「古代人が魔族を退治にって、そりゃサノアの役目でしょうに。何やってんすかね、我らが創造主様は?」
「親父のような意見が出るからこの説は機密、というか封印されている……その魔族は、サノアと敵対していた悪神の落とし子という話もあるのだが。まぁ、だからこそ、サノアの役目なのだろうが……」
「でしょうよ」
「だけどな、実際のところ魔族について詳しいことはわかってない。私たちよりも強く、コミュニケーションも取れない。そのため、なかなか調べることができないので生体は謎に満ちている。過去の解剖の所見によると、強再生の理由すらわからなかったらしい。その解剖もまた易々とは……」
「教会の連中がうるさいんですね?」
「その言葉にはっきりとは同意しかねるが、まぁそうだ。彼らは不浄なる存在である魔族を調べることを禁忌としているからな」
「教会もサノアも役に立ちやしねぇな」
親父は信仰心が薄く、教会やサノアをよく思っていないのだろう。
唾を飛ばすような口調を見せた。
すると、エクアがサノアを擁護する声を上げる。
「サノア様は悪神との戦いで傷を負ったと言われています。だから、魔族を滅ぼすことができなかったのでは?」
「それはそれで、俺たちを創った神様ってわりには情けなくねぇか?」
「そんな……あっ」
「どうした、エクアの嬢ちゃん?」
「もしかしたら、魔族を退治するためにサノア様が古代人を呼び寄せたのかも」
エクアの柔軟な発想に、私は軽い笑い見せて答える。
「ははは、そういった説もある。ま、記録が不確かな千年前の出来事。神話として割り切り、今はまだ謎ということにしておくしかないのかもな」
と、ここまでの話は、裏とはいえ従来の古代人渡来説・消失説にすぎない。
だが、我々理論派は彼らを知らべ、真実の一端を知った。これは理論派の一部とヴァンナスの支配階級しか知らぬこと。
古代人が訪れた理由は不明だが、魔族の正体と消えた原因はある程度推測できている。
当時、古代人たちは何者かと敵対しており、魔族はその敵が創ったものではないか? という推測と、ほぼ確実視されている説――古代人は敵によってばら撒かれた致死性の物質に侵されて滅んだ……。
敵が何者でどこへ行ったのかは全くの不明だが……少なくとも、かつて古代人に匹敵する存在がいた可能性がある。
ただし、その痕跡は見つかっていない。
あるのは、古代人を死に至らしめた痕跡のみ……。
このことを話せばフィナが気づきかねない。私や、勇者であるアイリやレイの正体を。
彼女は賢い。欠片から全体を知ることのできる人物。
だから、今はまだ、皆に真実を渡すわけにはいかない。
――私がサノアや教会を卑下する説を披露する中、会話に参加していなかったマフィンとマスティフが声を震わせて扉に向かい指を差してきた。
「あのニャ、楽しいご歓談の最中~、申し訳ニャいが……話しの頭で、このばいおなんちゃらマークは危険な病原体を扱うマークと言ったよニャ?」
「ああ、言ったぞ。このマークはそれに使われる。古代人も同じ意味で使っていたとすればだが」
「そうであるならば、相当まずいことでは? 扉が少し、開いておるぞ」
「え!?」
私は体ごと扉へ顔を向けた。
マスティフの言った通り、扉が少し開いている。
すぐさま青いひし形のナルフを浮かべ、扉とその隙間。そして、周囲を調べる。
「……異常なし。ふぅ~、少し焦ったな」
「安全、なんですか?」
「ああ、エクア。大丈夫、安全だ。室内にも汚染はないようだ」
「この部屋も他の部屋と同じで、空っぽなんでしょうか?」
「それは覗いてみないと。中には何かの研究器具があるかもしれん。有用なものがあれば嬉しいが」
といって、扉に近づくが、全く反応しない。
「扉が壊れているようだ。ならば、仕方がない。親父、マスティフ殿」
「こじ開けるってわけですな」
「それしかなかろう」
私たち三人は隙間に指を入れて、タイミングを合わせ扉を横にずった。
「おお~!!」
「むぐぐぐ!!」
「ふんぬ!!」
扉は横に押し込まれた。
私は息を切らし、内部へ目を向ける。
中には何らかの機械や器具とベッドの形をしたガラスケースのようなものがあった。
ケースの中には何も入っていない。
室内に入る前にナルフ浮かべ、調べる。
「うん、何もなしだな。ガラスケースの方も調べるか」
私は部屋へ入る。
後ろからエクアたちが続こうとしたが――突如扉が閉まり、私たちを分断した!
「なっ!?」
扉に近づき、扉を横へずらそうとする。
しかし、びくともしない。
「クソッ! みんな、聞こえるか?」
完全に密閉されているのか、室内で声が反響するだけで外には届いていないように思える。
「病原体を扱う研究室。密閉されていて当然か。おそらく、エクアたちがフィナを呼びに行ったはず。それまで大人しく、っ!?」
『fでょいhてぇんfllfほえrふぇjlごいyふぇjg』
室内に声が響き渡り、部屋全体に赤の点滅が広がる。
どう考えても、いやな予感しかしない。
私は扉を叩きつけ、横へ動かそうとする。
「この、うごけ、うごけ、うごけぇえぇ!」
――幻想のアーガメイトの書斎
フィナはナルフを使い、この部屋全体を解析していた。そこに、机に置いた懐中時計のアラームが鳴り響く。
その音に大きく心臓を跳ね上げ、次に大きく呼吸を行い、時計をポシェットに納めた。
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