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第十六章 銀眼に宿るモノ
謎の種族
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なぜ、滅びのナノマシンが大気中に存在するのか?
以前、古代人の遺跡でエクアたちに古代人消失の話をしたが、その時には話さなかった説が存在する。
彼らが消失した理由について理論派の上層部や一部の支配階級たちの間では、古代人が魔族との戦いの最中に姿を消したのは滅びのナノマシンに感染し滅んだため。という説が最有力の説となっている。
その滅びのナノマシンを産み出したのは、古代人と敵対していた謎の種族。
謎の種族は古代人に匹敵する知識を操り、その力で魔族を産み出し、やがては古代人を滅ぼすための致死性のナノマシンをスカルペルに散布した可能性が高い。
それが成功し、古代人はスカルペルから姿を消したのではないだろうか?
そう考えられている。
この説の場合、敵対していた者が何者なのかとなるが……それはわかっていない。
理由はどうあれ、千年前に双方の勢力は消えた。
その後、地球から召喚された地球人は残念なことに、大気中に漂っていた強化と滅びのナノマシンに感染してしまう。
初代の勇者はその発動を見ることなく天寿を全うしたが、それらは代を重ねるごとに蓄積していく。
感染当初は強化のナノマシンの効力が僅かに勝っていたが、やがて滅びのナノマシンがじわりじわりと浸食を始め、ついには発動し、彼らは突然の絶滅を迎えてしまった。
それでは最後の微小機械、滅びを回避するナノマシンついてだが。
これを造ったのは、私だ……。
と、言葉を出すと、フィナはすぐに気づいたようで言葉を返してきた。
「現勇者を助けるためね。彼らも双方のナノマシンに感染しているんだ」
「ふふ、さすがだな」
「それはあなたも?」
「いや、私は事情が違って、滅びのナノマシンには感染していない」
「どうして?」
私は疑問に答えず軽く微笑む。フィナは返しに、仏頂面を見せた。
そこから彼女は質問を変える。
「あんたが滅びを回避するナノマシンを造った。そう言ったけど、どうやって?」
「ヴァンナスには転送装置以外にも、古代人の遺跡から発掘した機械類がある。その中にナノマシンを合成できる機械があったんだ。それを使い、合成して生み出した。と、言葉にするのは簡単だが、滅びのナノマシンを阻害して、優先的に私のナノマシンにレスターを吸着されるのはかなり苦労した」
「それが、城の地下にあった数式なわけね」
「いや、違った」
「え?」
「実をいうと、先日、遺跡に訪れた際にこっそりと地下の数式の役割を探ってみた」
「いつのまに、あっ! 私にカインを案内させたときねっ!!」
「まぁ、その通りだが……それで地下の数式。言わば、ナノマシンに与える役割を探ったのだが、結果、細胞を変異させて戻し、途中で崩壊するという意味不明なものだった」
「変異させて戻して崩壊する?」
「そう、まったく意味不明なモノ。一体、誰が何のために考えたのか……?」
「つまり、地下に数式を書いた奴はナノマシンの存在を知っているということよね。設計図も書いてたみたいだし。ほんと、何者なの?」
「さぁな。それは私も知りたい……それともう一つ、遺跡にいた水球の中で眠る男に宿っていた粒だが」
「ナノマシンね」
「そのはずなのだが……あれはドハ研究所で合成されるものとは全く違うものだ」
「どういうこと?」
「我々の知るナノマシンは明らかな機械として機能しており、肉体を強く補助する。これは私と勇者たちに宿っているものも同じだ。だが、遺跡にあったものは細胞と一体化していた。思うに、より進んだナノマシンではないかと」
「それが意味するところは?」
「わからない。クライエン大陸にある遺跡とビュール大陸にある遺跡は元々一つだったはずのもの。つまり、同レベルの技術のはず。もしかしたら、誰かが研究を重ねて、さらに上に位置するナノマシンを産み出したのかもな」
「全ては、憶測ってことね」
「その通りだ……最後に、勇者の末裔たちが住む情報世界に行けたのは、木片により、銀眼のナノマシンが脳に逆流したからだ。彼ら曰く、このナノマシンには情報を蓄積して、守る特性があるらしい。その情報がどこに蓄積されているかまでは謎だ……と、私が話せるのはここまでだ」
言葉を閉じて、仲間たちの反応を見る。
ほとんどの者があまりにも突拍子もない話に、困惑した様子を見せている。
もっとも知を知るフィナだけは、私にさらなる疑問をぶつける。
「謎の種族は謎というだけあってわかってないんでしょうけど、なんでそんな種族がいると理論派は思ってんの?」
「古代人が滅びのナノマシンをばら撒く理由がないという点と、クライエン大陸の遺跡に我々よりも遥かに進んだ兵器による交戦の跡が残っていた。そこから敵がいたのでは? となっている」
「う~ん、筋は通るけど、根拠はないんだ?」
「まぁ、そうだな」
「謎の種族ねぇ。古代人と併せて、何が目的でどこへ行ったんだろ?」
フィナは自らの問いに眉を顰めたが、途中で首を横に振るう。
手がかりが少ないため、謎を追うのをやめたようだ。
そこから、勇者の存在に意識を移し、ぶつぶつと独り言を唱え始めた。
「今の勇者が過去の勇者よりも強いのはナノマシンが原因なんだ。双方のナノマシンが宿っていた時は互いに阻害し合って、力を発揮できなかった。でも今は、強化されるナノマシンだけが働いているから……あれ、待ってっ? 逆に考えれば、ナノマシンの影響がほとんどないのにめっちゃ強かった初代勇者ってなんなの?」
彼女の呟きを、イラが拾い上げる。
「地球人はね~、面白い特性を持っているのよ~。彼らは魔法のない世界に住んでいるのにぃ、魔法に触れると絶大な力が備わるの~」
「え、どういうこと? って、なんでイラはそんなこと知っているの?」
「さ~ね~、なぜかしらぁ? まぁ、地球人に関してはぁ、才能ということで納得するしかないかしらねぇ~」
「何か、理由があるのね?」
「ふふふ~」
イラは揺蕩う笑みを浮かべる。
地球人に関して、これ以上話す気はないようだ。
ならば、別の質問をぶつけよう。
「イラ、君は何者だ?」
以前、古代人の遺跡でエクアたちに古代人消失の話をしたが、その時には話さなかった説が存在する。
彼らが消失した理由について理論派の上層部や一部の支配階級たちの間では、古代人が魔族との戦いの最中に姿を消したのは滅びのナノマシンに感染し滅んだため。という説が最有力の説となっている。
その滅びのナノマシンを産み出したのは、古代人と敵対していた謎の種族。
謎の種族は古代人に匹敵する知識を操り、その力で魔族を産み出し、やがては古代人を滅ぼすための致死性のナノマシンをスカルペルに散布した可能性が高い。
それが成功し、古代人はスカルペルから姿を消したのではないだろうか?
そう考えられている。
この説の場合、敵対していた者が何者なのかとなるが……それはわかっていない。
理由はどうあれ、千年前に双方の勢力は消えた。
その後、地球から召喚された地球人は残念なことに、大気中に漂っていた強化と滅びのナノマシンに感染してしまう。
初代の勇者はその発動を見ることなく天寿を全うしたが、それらは代を重ねるごとに蓄積していく。
感染当初は強化のナノマシンの効力が僅かに勝っていたが、やがて滅びのナノマシンがじわりじわりと浸食を始め、ついには発動し、彼らは突然の絶滅を迎えてしまった。
それでは最後の微小機械、滅びを回避するナノマシンついてだが。
これを造ったのは、私だ……。
と、言葉を出すと、フィナはすぐに気づいたようで言葉を返してきた。
「現勇者を助けるためね。彼らも双方のナノマシンに感染しているんだ」
「ふふ、さすがだな」
「それはあなたも?」
「いや、私は事情が違って、滅びのナノマシンには感染していない」
「どうして?」
私は疑問に答えず軽く微笑む。フィナは返しに、仏頂面を見せた。
そこから彼女は質問を変える。
「あんたが滅びを回避するナノマシンを造った。そう言ったけど、どうやって?」
「ヴァンナスには転送装置以外にも、古代人の遺跡から発掘した機械類がある。その中にナノマシンを合成できる機械があったんだ。それを使い、合成して生み出した。と、言葉にするのは簡単だが、滅びのナノマシンを阻害して、優先的に私のナノマシンにレスターを吸着されるのはかなり苦労した」
「それが、城の地下にあった数式なわけね」
「いや、違った」
「え?」
「実をいうと、先日、遺跡に訪れた際にこっそりと地下の数式の役割を探ってみた」
「いつのまに、あっ! 私にカインを案内させたときねっ!!」
「まぁ、その通りだが……それで地下の数式。言わば、ナノマシンに与える役割を探ったのだが、結果、細胞を変異させて戻し、途中で崩壊するという意味不明なものだった」
「変異させて戻して崩壊する?」
「そう、まったく意味不明なモノ。一体、誰が何のために考えたのか……?」
「つまり、地下に数式を書いた奴はナノマシンの存在を知っているということよね。設計図も書いてたみたいだし。ほんと、何者なの?」
「さぁな。それは私も知りたい……それともう一つ、遺跡にいた水球の中で眠る男に宿っていた粒だが」
「ナノマシンね」
「そのはずなのだが……あれはドハ研究所で合成されるものとは全く違うものだ」
「どういうこと?」
「我々の知るナノマシンは明らかな機械として機能しており、肉体を強く補助する。これは私と勇者たちに宿っているものも同じだ。だが、遺跡にあったものは細胞と一体化していた。思うに、より進んだナノマシンではないかと」
「それが意味するところは?」
「わからない。クライエン大陸にある遺跡とビュール大陸にある遺跡は元々一つだったはずのもの。つまり、同レベルの技術のはず。もしかしたら、誰かが研究を重ねて、さらに上に位置するナノマシンを産み出したのかもな」
「全ては、憶測ってことね」
「その通りだ……最後に、勇者の末裔たちが住む情報世界に行けたのは、木片により、銀眼のナノマシンが脳に逆流したからだ。彼ら曰く、このナノマシンには情報を蓄積して、守る特性があるらしい。その情報がどこに蓄積されているかまでは謎だ……と、私が話せるのはここまでだ」
言葉を閉じて、仲間たちの反応を見る。
ほとんどの者があまりにも突拍子もない話に、困惑した様子を見せている。
もっとも知を知るフィナだけは、私にさらなる疑問をぶつける。
「謎の種族は謎というだけあってわかってないんでしょうけど、なんでそんな種族がいると理論派は思ってんの?」
「古代人が滅びのナノマシンをばら撒く理由がないという点と、クライエン大陸の遺跡に我々よりも遥かに進んだ兵器による交戦の跡が残っていた。そこから敵がいたのでは? となっている」
「う~ん、筋は通るけど、根拠はないんだ?」
「まぁ、そうだな」
「謎の種族ねぇ。古代人と併せて、何が目的でどこへ行ったんだろ?」
フィナは自らの問いに眉を顰めたが、途中で首を横に振るう。
手がかりが少ないため、謎を追うのをやめたようだ。
そこから、勇者の存在に意識を移し、ぶつぶつと独り言を唱え始めた。
「今の勇者が過去の勇者よりも強いのはナノマシンが原因なんだ。双方のナノマシンが宿っていた時は互いに阻害し合って、力を発揮できなかった。でも今は、強化されるナノマシンだけが働いているから……あれ、待ってっ? 逆に考えれば、ナノマシンの影響がほとんどないのにめっちゃ強かった初代勇者ってなんなの?」
彼女の呟きを、イラが拾い上げる。
「地球人はね~、面白い特性を持っているのよ~。彼らは魔法のない世界に住んでいるのにぃ、魔法に触れると絶大な力が備わるの~」
「え、どういうこと? って、なんでイラはそんなこと知っているの?」
「さ~ね~、なぜかしらぁ? まぁ、地球人に関してはぁ、才能ということで納得するしかないかしらねぇ~」
「何か、理由があるのね?」
「ふふふ~」
イラは揺蕩う笑みを浮かべる。
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