銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第十六章 銀眼に宿るモノ

ぜ~んぶ、忘れてねぇ~

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 セアたちの世界に入り込みことができ、地球人を知る存在――イラ。
 私はイラに強く正体を問うた。
 彼女は妖艶な笑みを漏らし、ゆったりと答えを返す。


「ふふ、私の種族名はスース。あなたたち固形生物からは~、宇宙最強の生命体なんて言われてるわね~。そして、古代人と共にこのスカルペルへ訪れたのよ~」
「なっ!?」

「かつて私たちは~、あなたたち固形生物と覇を競い合っていたの~。でも、ある時、共に道を歩むことを決めた……だけどぉ、あなたたちが古代人と呼ぶ者たちは~、それを良しとしなかったのよ~。だからぁ、私を捕らえちゃったの~。そしてある時、禁忌と呼ばれる力を手にしようとしてぇ、事故が起こりぃ、私は彼らと共にスカルペルへやってきたのよ~」

「事故? まさか、彼らが来たのは偶然とでもいうのか? いや、それ以上に、きみは!」
「全ての謎を知ってるってことじゃないっ!!」

 
 私の言葉を押しのけて声を飛ばしたのはフィナ。
 彼女はイラに詰め寄り捲し立てる。

「古代人って何者なの? 禁忌の力って? 事故って何が起こったの? あんたたちはどこからやってきたの? 遺跡のことはわかるの? 言葉も技術も、あんたは!」
「フィナちゃ~ん……」
「うっ」


 イラの雰囲気が変わる。
 辺りには冷気が溢れ出し、心を冷たく覆う。
 死という概念が温度によって伝わってくる。
 彼女は凍る言葉で、フィナにとても大切な心構えを教える。


――答えを求める者は尋ねてはならない。答えは自らの知恵と勇気で勝ち取るもの。まずは考えなさい。それを怠る者に真実は開けない――


 この言葉に私は息を詰まらせた。
 なぜならば、父がこれに近い言葉を口にしていたからだ。
 イラは私に向かって冷笑を見せる。しかし、その笑みはどこか柔らかい。

「あなたのお父さんは凄い人よ~。知の意味を知っていた。だから、私たちと同じ思考に至った。だけど、心を学ぶことを怠った。本当に惜しい人」


――パチンッ

 
 イラが指を弾く。
 途端に世界から音と熱が消え去り凍りつく。
 動いている者は、私とイラだけ……。

「しゃべり過ぎたよ~ね~。だからぁ、今の話はなかったことにするわね~」
「なかったこと?」
「今の話はぁ、あなたたちには関係のないことだから~。今を生きるあなたたちはぁ、今を見据えて歩みなさい。もう、私が関わることはないからね~」

「あなたは、人知を超えし存在というわけか?」
「いいえ、人の知の範疇。今のあなたたちから見ればぁ、理解しがたい存在だけどねえ~。うふ、これ以上はぁ、『サノア』に怒られちゃうから、終わりよ~」
「サ、サノアだと? イラ、君はっ!」
 私は執務机から離れ、イラに近づこうとした。


――パチンッ


 再び、指が弾かれる。
 すると――。


「逆に考えれば、ナノマシンの影響がほとんどないのにめっちゃ強かった初代勇者ってなんなの?」


――ガタンッ!

 私は派手に執務机に足をぶつけてしまった。
 それに驚いたフィナが話しかけてくる。

「あんた、なにやってんの?」
「え、いや……」

 
 皆は突然机にぶつかった私を奇妙な顔で見ていた。
 私もまた、何をしようとしていたのかわからない。
 だから私は……。

「いや、なんでもない」
 そう、言葉を返し、席に戻った。


 
――トーワ城・執務室

 どういうわけか、ケントたちの話し合いの熱は急激に冷め、しばらくは各自情報を整理するということで話は終えた。

 ケントは執務室に残り、他の者は執務室から出ていく。
 その去り際にカインがケントに尋ねる。
「ケントさんの左目が急速に回復したのは、銀の瞳に宿るナノマシンのおかげなんですね?」
「ああ、そのようだ。もともと、この強化のナノマシンには軽い傷程度なら修復してくれる力があったが、おそらく、セアたちの力でその力が増幅されたのだろう」

「ということは、ケントさんよりも強い効力を持つナノマシンを宿した現勇者の皆様は、より強い回復能力を持っているんですね」
「ああ、そうだが。何か気になることでも」

「……いえ、医者泣かせな機械だな、と思いまして」
「あはは、たしかにそうだな。だが、これが一般に出回るようになるのはまだまだ先の話だ。カインは安心して医者を続けられるぞ」
「ははは、それはよかった……」

 カインもフィナたちの後に続き、笑い声を残して執務室から出ていった……だが、この時彼は、ある可能性に気づいていた。

(あの、遺跡で見たナノマシン。アレは細胞に溶け込み、細胞そのものになっていた。もしかしたら……いや、まだ憶測にすぎない……)
 彼の気づいた可能性はあまりにも恐ろしいものであったため、ケントに話さず、確証を得られるまで胸の内に秘めることにした……。



――トーワ三階・廊下

 カインも立ち去り、執務室にはケント一人。
 しかし、イラとギウは三階の廊下の北側にとどまり、奇妙なやり取りを行っていた。

「ごめんなさ~い。つい、口出ししちゃったぁ」
「ギウ」
「いいえ~、私はもう何とも思ってないわよ~」
「ギウギウ」
「そうね~、どうなるかしらぁ? あなたはどうするの~?」
「ギウ、ギウギウ」
「そうなの~。でも、それはか細い道よ~」
「ギウッ」

 ギウはケントが残る執務室を見つめた。
 彼の瞳に浮かぶのは信頼と慈愛。

「うふふ~、羨ましいわねぇ~。それじゃ、さよなら。気をつけてねぇ~」

 イラは近くの窓を開き、体を液状に変えて外へと出ていった。
 残るギウは開かれた窓から北の大地を望む。
 彼の瞳に映るのは、古代人の遺跡。
 そこに眠る、男の存在……。
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