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第二十一章 世界旅行
未熟者
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私はフィナたちへ伝える。
私を助けるために過去へエクアを送り出した六十年後のフィナと出会ったこと。
過ちを重ね、世界を滅亡の危機へ追いやってしまった八年後のトーワ。
七年前の王都に戻り、父と出会い、ここへ送り帰してもらったこと。
この話の中で、さすがに六十年後のフィナとグーフィス。八年後のフィナと私の関係には触れなかった。
話せば気まずくなるだろうし、今の私たちにとって重要な話ではないから。
また、自信を失ったフィナの姿を語るのは少々酷だと思い避けておいた。
あくまでも、要点のみを彼らに伝える。
話しを受け取った三人は思い思いに話を反芻し声を出す。
エクアは……。
「そうですか。会えたんですね、ケント様を助けるために全てを捧げたフィナさんに」
「ああ、直接礼を伝えることができた」
「良かった。でも、八年後には私とケント様は死んじゃうんですよね?」
「いや、どうだろうか? あれは未来であっても、私たちの未来と繋がっているとは限らない。私たちの未来はまだ可能性に満ちている。今後の行動次第で回避できるだろう」
「回避したいですね。世界が滅びるなんて見たくはないですから」
「そうだな」
親父は……。
「もう一人の俺は単独でアグリスと戦おうとして、返り討ちにあったんですね……」
「そうみたいだ。親父さんは無茶をし過ぎだ」
「へへ、俺は思ったより自分を制御できないみたいですな。別の世界では左目に左腕を失っているようですし。どっちの未来でも、あんま良い未来じゃねぇな」
「ならば、私たちの世界では良い未来が切り開けるよう頑張ろうじゃないか」
フィナは……。
「六十年後の私は転送装置を使いこなせてるんだ。八年後の私はトーワを指揮していた。そして、二人は全く別のことを伝える。水球に納まる男を助けろ、殺せと……」
「六十年後のフィナが見た水球に納まる存在は黒髪の女性。彼女は金髪の男を知らない。だが、八年後のフィナは彼を知り、危険だと言っていた。どうする、フィナ?」
「私が答える前に、あんたの答えが知りたい。どうする、殺す? 蘇生する?」
私は長い沈黙を挟み、答えを返す。
「…………正直、八年後の絶望を目にした今、殺すという選択肢がベストだろう。だが、今の私たちは水球に眠る男がどのような人物か知らない。何も調べずに命を奪うというのは勇み足だと感じる」
「私も同意見。それに八年後の未来とは違い、私たちは男を危険な存在として認識できている。つまり、より高い警戒が可能ということ」
「そうだな」
「だから万全に万全を期し、それを以って彼を蘇生して見極めるべきだと思う。もちろん、拘束どころかすぐに命を奪えるように、呪いでも爆弾でも体内に仕込んだ状態でね」
「うん、その方向で行こう。まずは、男を完全に拘束できるよう、もっとこの施設のことを調べよう」
「そうね、遺跡のシステムを理解して、こちらが主導権を握ること。それが最優先」
水球の男については、ある程度の方針がまとまった。
だが、フィナは別の件で不満を露わとする。
「それとだけどさ、こっちのシステムを一時的にダウンさせたのはあんたの親父のアーガメイトだって?」
「ああ、そうだ。君の索敵が邪魔だったようでな」
「かぁ~、ムカつく~」
「あ、未熟だとも言っていたな」
「いらないよ、そんな情報! あ~もう! ムカつくムカつく! そりゃ、理論派はむっかしから古代人の技術に触れてたからねっ。私よりも理解できてるでしょうっての!!」
――それを差し引いても、未熟であることには変わりない――
突如、書斎に男の声が響く。
皆は声の発生源を探して室内をきょろきょろと見回すが、私だけは耳に意識を集め、鼓膜に声を響かせていた。
そう、私はこの声の音色を知っている!
「まさか、父さんっ?」
「その通りだ」
声の響きに合わせて、書斎の執務机の椅子に光のカーテンが下りる。
光は人の形を成し、そこにはとてもよく知る人の姿が現れる。
「久しぶりだな、ケント。いや、お前にとってはつい先ほどの出来事か」
私を助けるために過去へエクアを送り出した六十年後のフィナと出会ったこと。
過ちを重ね、世界を滅亡の危機へ追いやってしまった八年後のトーワ。
七年前の王都に戻り、父と出会い、ここへ送り帰してもらったこと。
この話の中で、さすがに六十年後のフィナとグーフィス。八年後のフィナと私の関係には触れなかった。
話せば気まずくなるだろうし、今の私たちにとって重要な話ではないから。
また、自信を失ったフィナの姿を語るのは少々酷だと思い避けておいた。
あくまでも、要点のみを彼らに伝える。
話しを受け取った三人は思い思いに話を反芻し声を出す。
エクアは……。
「そうですか。会えたんですね、ケント様を助けるために全てを捧げたフィナさんに」
「ああ、直接礼を伝えることができた」
「良かった。でも、八年後には私とケント様は死んじゃうんですよね?」
「いや、どうだろうか? あれは未来であっても、私たちの未来と繋がっているとは限らない。私たちの未来はまだ可能性に満ちている。今後の行動次第で回避できるだろう」
「回避したいですね。世界が滅びるなんて見たくはないですから」
「そうだな」
親父は……。
「もう一人の俺は単独でアグリスと戦おうとして、返り討ちにあったんですね……」
「そうみたいだ。親父さんは無茶をし過ぎだ」
「へへ、俺は思ったより自分を制御できないみたいですな。別の世界では左目に左腕を失っているようですし。どっちの未来でも、あんま良い未来じゃねぇな」
「ならば、私たちの世界では良い未来が切り開けるよう頑張ろうじゃないか」
フィナは……。
「六十年後の私は転送装置を使いこなせてるんだ。八年後の私はトーワを指揮していた。そして、二人は全く別のことを伝える。水球に納まる男を助けろ、殺せと……」
「六十年後のフィナが見た水球に納まる存在は黒髪の女性。彼女は金髪の男を知らない。だが、八年後のフィナは彼を知り、危険だと言っていた。どうする、フィナ?」
「私が答える前に、あんたの答えが知りたい。どうする、殺す? 蘇生する?」
私は長い沈黙を挟み、答えを返す。
「…………正直、八年後の絶望を目にした今、殺すという選択肢がベストだろう。だが、今の私たちは水球に眠る男がどのような人物か知らない。何も調べずに命を奪うというのは勇み足だと感じる」
「私も同意見。それに八年後の未来とは違い、私たちは男を危険な存在として認識できている。つまり、より高い警戒が可能ということ」
「そうだな」
「だから万全に万全を期し、それを以って彼を蘇生して見極めるべきだと思う。もちろん、拘束どころかすぐに命を奪えるように、呪いでも爆弾でも体内に仕込んだ状態でね」
「うん、その方向で行こう。まずは、男を完全に拘束できるよう、もっとこの施設のことを調べよう」
「そうね、遺跡のシステムを理解して、こちらが主導権を握ること。それが最優先」
水球の男については、ある程度の方針がまとまった。
だが、フィナは別の件で不満を露わとする。
「それとだけどさ、こっちのシステムを一時的にダウンさせたのはあんたの親父のアーガメイトだって?」
「ああ、そうだ。君の索敵が邪魔だったようでな」
「かぁ~、ムカつく~」
「あ、未熟だとも言っていたな」
「いらないよ、そんな情報! あ~もう! ムカつくムカつく! そりゃ、理論派はむっかしから古代人の技術に触れてたからねっ。私よりも理解できてるでしょうっての!!」
――それを差し引いても、未熟であることには変わりない――
突如、書斎に男の声が響く。
皆は声の発生源を探して室内をきょろきょろと見回すが、私だけは耳に意識を集め、鼓膜に声を響かせていた。
そう、私はこの声の音色を知っている!
「まさか、父さんっ?」
「その通りだ」
声の響きに合わせて、書斎の執務机の椅子に光のカーテンが下りる。
光は人の形を成し、そこにはとてもよく知る人の姿が現れる。
「久しぶりだな、ケント。いや、お前にとってはつい先ほどの出来事か」
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