大魔法使い(予定)・猫の子ミコン~現代魔法は苦手だけど、破壊力抜群の古代魔法は得意なんです~

雪野湯

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第四章 山に木霊する叫び声

ピクニック?

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 崖を登り切り、続く山道を登り切り、頂上へ。
 そこは平らな台地。
 ここをまっすぐ進めばゴールです。

「にゃふふ、罠もないみたいですし、ゴールまで直行ですね」
「そうみたいだ。先生方もここを通ることまでは予想してなかったんだろうね」
「レンちゃんの言うとおりでしょう。にゃふ、先生方も甘々ですね。うん?」


 私とレンちゃんの後ろを歩いているラナちゃんとエルマ。
 ラナちゃんが少し息を切らしている様子。

「ふむふむ、ここまで山道を一時間以上歩きっぱなしですもんね。少し休憩を挟みましょう。ここから一時間足らずでゴールですし。多少の休憩くらい問題ないですからね」
「そうだね。それに元々制限時間は五時間。その中には食事休憩も含まれているだろうし」
「それでは、少し早めの食事休憩としましょう」


 私は二人に声を掛けて、ここで食事休憩を取ることになりました。
 食材は道中、ラナちゃんが集めた野草や果実。
 食器類はないので、傍に生い茂っている大きめな葉っぱを使います。もちろん毒の無いものです。
 
 それらを簡単に加工して、お皿やコップの形に整えました。
 加工といっても、おっきな葉っぱの茎を手前に折り曲げて包み込むように握り、小さなつるで結んだ程度ですけど。

 その葉っぱのコップを満たすお水は、私とラナちゃんが魔法で生み出すことに。


 ラナちゃんは軽く指先を動かして、水球を生み、それをコップに納めています。
 私の方はというと――

「え~っと、空気中の水素分子と酸素分子にアクセスして~~~~っと」
 この様子を見ていたエルマが眉をきゅいっと折ってツッコんできます。
「何やってんだ?」
「あ!? つい、いつもみたいに地元の魔法を。えっと、学園で習った魔法はイメージを魔力によって具現化して、大気中に満ちる魔力の根源たるレスルの力と共鳴すると」

 私が脳内で水をイメージすると水は具現化して、水球となって佇んでいます。
 それを私とエルマのコップへ移しました。レンちゃんの分はラナちゃんにお任せです。


「はい、エルマ」
「お、ありがとな……最初の何だったんだ?」
「私の故郷で使われている魔法は古い魔法みたいで、水球を産み出す簡単な魔法でも時間がちょっとかかっちゃうんですよ」

「へ~。でも、トラップを破った魔法は凄かったけどな。熱を人肌に保つなんて」
「にゃははは、自分の魔法を褒めてもらえるのは嬉しいですね。古い魔法ですが、細かな作業や、やたら威力の高い魔法は得意なんですよ。どっちも時間が掛かっちゃいますが」
「魔法にもいろいろあるんだなぁ。ま、俺はあんまり得意じゃないからな。魔力で肉体を強化したり、魔石と共鳴して槍を操作したりするくらいだし」

「その槍、興味深いですね。分解しちゃだめですかね?」
「ダメだよ!」

 エルマは背に背負う槍を守るように少し仰け反りました。
 そして、ちらりと視線をラナちゃんのつるカバンへ向けて、その中身を見ています。


「話変わるけどさ、お昼にしてはちょっと量少なくない?」
 蔓カバンに入っている食料は、僅かな野草と果実。

 ラナちゃんは申し訳なさそうな声を返します。
「あ、うん、ごめん。あんま、しゅうめてなくて」
「いやいや、責めてるわけじゃねぇよ。だけど、勘違いさせたらごめんな」
「なんもなんも」

「でもさ、お昼のことを考えて用意するなんてラナってすげぇよな。俺なんか山越えのことしか頭になかったぜ」
「そ、そんな。わんずもエルマちゃんの槍使いを初めて見たけど、すんどいと思ったん。田舎暮らしのわんずよりも体力あるし」
「えへへ、そうかな」


 二人はお互いに良いところを褒め合っています。
 そんな二人の初々しいやり取りを見守る私とレンちゃん。

「にゃふふ、いい感じですね」
「ああ、課外授業に誘ってよかった」
「そうですね。こうやって、協力し合いながら仲を深めていく方法は実に合理的です」
「ん? ごうりてき?」
「聞いた話によると、軍隊などでは、わざと困難な課題を与えて連帯感を養ったりするらしいですよ」
「うん……まぁ、そういったところはあるかな」

「他にも、不良少年の更生のために指揮役を一人忍び込ませてチームを作り、過酷な環境に置いて、協力し合うことで連帯感を深めて更生させる方法があるそうで………ククク、危機意識は仲間意識を高めますからニャ~」
「うん……ミコン。たとえ、やめようか」
「にゃ?」


 レンちゃんは私の疑問符に答えずに、一歩、二人の前に近づきます。
「もう少しだけ食料を集めよう。幸い、ショートカットのおかげで時間に余裕があるし。それでいいかな、みんな?」

 私たちはこくんと頷き、私が声を上げます。
「え~っと、レンちゃんとエルマは、食べられる野草なんかの見分けつきます?」
「一般的なものは。でも、あまり自信ないな」
「あ~、ごめん、俺も」
「そうですか。ではお二人には、その一般的な野草や果実類を探してもらって。あと、なんか肉を獲ってきてください」

「「肉?」」

「試験のため、大型の獣は排除されていないでしょうが、小動物なんかはいるかもしれません。特にエルマの槍なら誘導機能付きですし。上手くいけば鳥かなんかも獲れそうですしね」
「これ、そういうための槍じゃないんだけどなぁ……ま、いっか。じゃ、レン」
「うん、行こう。そっちの方は?」

「ラナちゃんと私も同じく野草や果実を集めてきます。これに加えて、キノコの目利きもできますから」
「そんなら、わんずもできる」
「と、言った感じで。では、皆さん――五分後に」

「「「五分!?」」」

「いくらショートカットをしていても調理の時間を考慮するとあまり時間はかけられません。では、はい! スタート!!」


 私はラナちゃんの手の握り、引きずるように森へ入っていきます。
 その姿にエルマが何やら悪態をついているようで……。
「五分で肉獲ってこいって、無理があるだろ」
「ミコンは成績の方に意識が行ってるみたいだね」
「そんなに悪かったの?」
「さぁ? 詳しくは知らないけど、補習を受けて、また補習が決まったくらいは知ってる」

「ボロボロじゃん……だから、今回結果を残そうとしてんのか」
「申し訳ない、ミコンの都合に振り回して」
「へへ、全然問題ないよ。ちょっと変わった子だけど、ラナとの距離が一気に縮まったのは、あの変わったノリのおかげだし」
「そう言ってくれると嬉しいよ。それじゃ、私たちも行こう」


 私は後ろでお話していた二人に猫耳をぴくぴく立てます。
「にゃふふ、二人の距離も縮まっているみたいですね。補習のことを伝えられるのはちょっと悲しいですけど……」
「ミコン、どした?」
「何でもないです。では、食材ゲットに向かいましょう! 授業ですけど、大空の下、自然に囲まれた場所で友達とご飯なんて。なんだかピクニックみたいで楽しいですね!! ラナちゃん!」

 この私の楽し気な声に、後方からエルマの無粋なツッコミが飛んできました

「いや、ピクニックじゃねぇよ! やってること、サバイバルだろ!」
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