僕の周りの人達には秘密がある

第2章 光梨 愛澄花の秘密

生きるには

僕の横にいる少女、光梨 愛澄花(ひかり あすか)は、ずっと勉強している。休み時間も昼食の時間も…。傍から見たら、ただのガリ勉。テストに向けて勉強をしているだけ、という可能性もある。あるいは、勉強が好きだから…。だが、前者は確実に違うと思う。何故ならこの学校のテストは期末テストのみだからである。今は4月中旬、期末テストは7月の終わり。この学校の偏差値的に今から勉強する必要は全くないのである。次に後者、これもない。何故分かるの？そう思われるだろう。僕は言った、〝傍から見たら〟ガリ勉である、と。ガリ勉に良いイメージを持つ人は少ない。何故なら勉強ばっかりしていて根暗というイメージが染み付いているからである。つまり、僕みたいにちゃんと彼女を見る人はいない。彼女の表情はいつも、今にも泣き出しそうな顔をしている。それに、いつも辛そうに机に向かっている。嫌なことなのに、無理やり勉強しようとしているからだろう。彼女のノートの自習問題チラッとを見たことがある。凡ミスばかりだった。つまり、後者の勉強が好きは無いのである。


  




僕は、そんな辛そうに勉強する彼女を見てられなかった。そう、つい話しかけてしまったのだ。
｢…ねぇ。光梨さん。何でそんなに勉強するの？｣
彼女は、手を止めて言葉を発した。
｢…あなたに関係ない。話しかけないで…集中したいの。｣
その声は震えていた。怒っている訳では無いと思う。僕は人より、相手の表情、声音、行動から、相手の心情を読み解くことができる。今の彼女の心情は多分、誰かに事情を知って欲しい…的な感じだろう。まぁ100％合ってる訳は無いけど…。
｢…あぁわかった。…もう話しかけないよ。｣
この少女も何か秘密を抱えている。それも隼歌と少し違う。こう、なんと言うか身内の問題？隼歌のいじめの問題とは少し違う、家族絡みの問題だと思う。どっちにしろ、いい秘密では無いだろう。彼女を救う、何てヒーローみたいなことは言わない。ただ、少し助言、手を差し伸べるだけだ。さぁて、隼歌の時と同様、忙しくなりそうだ。













あぁ、私は何でそんなことを言うんだ…。彼はこんなガリ勉の私に話しかけてくれた。2年生で初めて話しかけてくれた彼に、私は話したかった。抱えているものを。彼は何となく私のことを理解してくれる気がした。でも、私は彼に素っ気なく接したせいで、
｢もう話しかけないよ｣
となってしまった。泣きそうだ。私は孤独だ、生きる意味、生きるために勉強をしている。生きるには私は勉強をしなければならない。頭が悪かったら…私は…。