僕の周りの人達には秘密がある

第2章 光梨 愛澄花の秘密

反逆

｢一緒に勉強しない？｣
彼はそう誘ってきた。私は、突然の誘いに、
｢へっ？｣
と返してしまった。










僕は、彼女に勉強会を開こうと提案した。
｢いや、いきなりごめんね？実は僕、紅陽塾(あさひじゅく)の塾長と友達でさ。君が通ってるって聞いたんだ。君がいつも苦しそうに勉強している理由を聞こうと思って。｣
塾長と友達は嘘である。いきなり塾に乗り込んだなんて言ったら流石に手を差し伸べるどころではなくなる。
｢…私のストーカー？｣
ちょっと人間不信すぎやしないか？あ、確かにストーカーみたいなことしてたような…。
｢いや、そういう訳じゃなくて、キミが勉強を苦しそうに解いてるのを見たら何だか見てられなくて。｣
うーん、何か難しいな。
｢ホントにストーカーじゃないと思うよ！霊也君は、こういう性格だからね！｣
僕が困っていると隼歌が来てくれた、気まずかったから本当にありがたい。
｢もし、心に秘めた何かがあるなら、打ち明けてみたらいいよ。きっと彼は誰にも言わないし、貴女の秘密もきっと解決してくれるわ！｣
隼歌…ありがとう。
………だけどすごくハードル上げてるんじゃ…。
｢じゃあ後は彼に任せるわ。彼は魔法が使えるからね。きっといつの間にか秘密を話してるよ。｣
そう言って隼歌は友達の輪に戻って行った。色々言いたいことがあるが、
｢そういうことだ。僕は君の秘密を知りたい。君の助けになりたいんだ…。だから｣







だから、と彼は一拍を置いて言った。透き通った笑顔で、真っ直ぐに私を見て…
｢僕に話してみなよ。君の秘密を…｣
私は、彼を庇った少女の言葉を実感した。魔法というやつを…。そして私は包み隠さず彼に事情を話した。彼は絶妙なタイミングで相槌を返してくれて、私はスラスラと言葉が出た。私は、自分の事情がやっと他の人に話せることに嬉しさを感じた。視界はぼやけて、涙が出てることがわかった。










彼女の話を全て聞いた。完璧な親から生まれたのは完璧な娘。周りにそう噂されててもおかしくはない。親はきっと周りに見栄を張るように、私達の娘は凄いんだぞと見せびらかすために、彼女に酷い教育を施しているんだろう。影で努力をする彼女も、難しい問題を何の解説もなしに難問テストを解けるはずがない。
｢思ってたより酷いな…。あの問題は、並の生徒じゃ解けないぞ…。｣
僕は思わず言葉を零していた。
｢雨流射君…｣
最初は朧気に、しかし次にはっきりと
｢雨流射君…助けて！｣
彼女は泣き出した、静かにはっきりと泣いた。僕は、彼女を安心させるために、彼女を抱きしめた。
｢あぁ任せろ。絶対に見返そう！これで救われるのは君だけじゃない。｣
いつまでも親に縛られていたら、自分の人生を歩めない。彼女の人生を自慢道具にするために限定するなんて許せない。これは下剋上だ。弱い僕達が、権力者である光梨の親に歯向かう。僕らは反逆する。敗北は恐れない。だが、負ける気は無い。何故なら、僕はもうプランをたてているからだ。様々な可能性も全て考慮した計画。例え0.01%程の確率だったとしても全ての可能性を考慮した完璧な計画だ。計画に抜かりはない。





完璧を求めすぎると、壊れてしまう。そのことを知らしめよう。