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第26話 共に……
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国王・マーリクの石化の呪いが解かれるとのことで、大広間にいた一同は固唾を飲んで見守っている。
「いいか、アムル、ちょっと触れるだけでいいんだからな! すぐに離れるんだ、いいなっ!」
――魔王はなにをそんなにむきになっているのか……。
あの黒い仮面で隠すにはもったいないほどの美貌に、低く響く美声……。 さすが魔法国を統べるものだとカミーラは感心していたのだが……。
漆黒の魔王と、双子の兄だというアムルとのやり取りは、びっくりするくらい人間味に溢れていた。
「もう、何度も言わないで! わかってるよ、アミード」
うんざりした表情のアムル。だが、アミードの隣に立つアムルは、カミーラが見たどのアムルよりも、生き生きと輝いて見えた。
「おい、精霊! 石化が解けたらすぐに始めるんだ。しくじったりしたら……、わかってるんだろうな!」
「わかっております、魔王様……」
可愛そうなくらいに魔王の当たりが強い金の精霊は、その小さな肩を丸める。
本来なら金の精霊は、精霊のなかでも最上位にあたるため、とても尊大な態度で人間に接すると聞いたことがある。だが、この精霊の魔王への献身ぶりはどういうことだろう?
「では、石化の解呪を……」
金の精霊がアムルの頭上を一周すると、アムルの周りに金色の粉が降り注ぐ。
マーリクの前に立っていたアムルは、石になったその肩に手を置くと頬を寄せた。
「ごめんね、マーリク……」
アムルは目を閉じ、その唇にそっとキスをする。
「……っ!!!」
その様子を呪い殺しそうな目で見ていた魔王は、悔し気に歯ぎしりした。
石化はみるみるうちに解け、マーリクの姿には色が戻っていく。
「アムルっ! アムル、大丈夫かっ!」
薄緑の瞳を大きく開いた赤髪の王が、目の前のアムルに腕を伸ばす。
「アムルに触れるなっ!」
アムルを抱きしめようとするマーリクから、アミードが強引にアムルを奪った。
「お前はっ……、もしかして……、アミード、なのか? その瞳は……っ」
アムルをその腕に抱きしめ、睨みつけてくるアミードに、マーリクは息を呑んだ。
「久しぶりだね、マーリク。でも、もうさよなら、だ」
「お前一体、何を? なんで、ここに……っ、アムルからその手を離せっ!」
マーリクの攻撃を、アミードはひらりと交わす。
「悪いねマーリク、俺たちのことは、全部忘れてもらうよ。やれ、精霊!」
「はいっ、魔王様っ!」
甲高い精霊の声とともに、あたり一面に金色の帳が下りてくる。
――綺麗だ……。
カミーラが見惚れたその時、すべての時が止まった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どうなってるんだ……?」
アムルはあたりを見回した。
目の前のマーリクは、アムルに対して手をのばしたまま固まっている。
マーリクだけではない、この大広間に集められたすべての人物が、時を止められ、動きは制止させられていた。
「アムル、国中の時を止められるのは少しの間だけだ。準備はいい?」
赤い瞳のアミードに、アムルは頷いた。
「わかった。やろう……」
アムルが両手を差し出すと、その手をアミードが握る。
「さあ、アムル。目を閉じて……。そして全部思い出すんだ。この国で出会ったすべての人……、その人たちから俺たちの記憶を全部消すんだ」
「出会った人たち、すべて……」
アミードに触れた手のひらから、アムルの魔力が流れてくる。
「魔力を循環させて。これにはアムルの魔力が絶対に必要なんだ。俺一人の力じゃ無理なんだ。アムル……、アムルの魔力を、俺にも流して……」
アムルは胎内の魔力をすべて集中させる。
普段では考えられないほどの大きな魔力が、アムルの頭の先から爪の先まで流れているのが感じられる。
――やっぱり、そうだ。あの時、湖で大渦を発生させたときもそうだった……、僕の魔力はアミードと交わることで高まるんだ……。
二人の身体から、金色と水色の光が発せられ、それが交わり、国中へと広がっていく。
すべてが終わったその時、アミードとアムルは二人きつく抱き合った。
「これからは、ずっと一緒に生きていこう……」
「いいか、アムル、ちょっと触れるだけでいいんだからな! すぐに離れるんだ、いいなっ!」
――魔王はなにをそんなにむきになっているのか……。
あの黒い仮面で隠すにはもったいないほどの美貌に、低く響く美声……。 さすが魔法国を統べるものだとカミーラは感心していたのだが……。
漆黒の魔王と、双子の兄だというアムルとのやり取りは、びっくりするくらい人間味に溢れていた。
「もう、何度も言わないで! わかってるよ、アミード」
うんざりした表情のアムル。だが、アミードの隣に立つアムルは、カミーラが見たどのアムルよりも、生き生きと輝いて見えた。
「おい、精霊! 石化が解けたらすぐに始めるんだ。しくじったりしたら……、わかってるんだろうな!」
「わかっております、魔王様……」
可愛そうなくらいに魔王の当たりが強い金の精霊は、その小さな肩を丸める。
本来なら金の精霊は、精霊のなかでも最上位にあたるため、とても尊大な態度で人間に接すると聞いたことがある。だが、この精霊の魔王への献身ぶりはどういうことだろう?
「では、石化の解呪を……」
金の精霊がアムルの頭上を一周すると、アムルの周りに金色の粉が降り注ぐ。
マーリクの前に立っていたアムルは、石になったその肩に手を置くと頬を寄せた。
「ごめんね、マーリク……」
アムルは目を閉じ、その唇にそっとキスをする。
「……っ!!!」
その様子を呪い殺しそうな目で見ていた魔王は、悔し気に歯ぎしりした。
石化はみるみるうちに解け、マーリクの姿には色が戻っていく。
「アムルっ! アムル、大丈夫かっ!」
薄緑の瞳を大きく開いた赤髪の王が、目の前のアムルに腕を伸ばす。
「アムルに触れるなっ!」
アムルを抱きしめようとするマーリクから、アミードが強引にアムルを奪った。
「お前はっ……、もしかして……、アミード、なのか? その瞳は……っ」
アムルをその腕に抱きしめ、睨みつけてくるアミードに、マーリクは息を呑んだ。
「久しぶりだね、マーリク。でも、もうさよなら、だ」
「お前一体、何を? なんで、ここに……っ、アムルからその手を離せっ!」
マーリクの攻撃を、アミードはひらりと交わす。
「悪いねマーリク、俺たちのことは、全部忘れてもらうよ。やれ、精霊!」
「はいっ、魔王様っ!」
甲高い精霊の声とともに、あたり一面に金色の帳が下りてくる。
――綺麗だ……。
カミーラが見惚れたその時、すべての時が止まった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どうなってるんだ……?」
アムルはあたりを見回した。
目の前のマーリクは、アムルに対して手をのばしたまま固まっている。
マーリクだけではない、この大広間に集められたすべての人物が、時を止められ、動きは制止させられていた。
「アムル、国中の時を止められるのは少しの間だけだ。準備はいい?」
赤い瞳のアミードに、アムルは頷いた。
「わかった。やろう……」
アムルが両手を差し出すと、その手をアミードが握る。
「さあ、アムル。目を閉じて……。そして全部思い出すんだ。この国で出会ったすべての人……、その人たちから俺たちの記憶を全部消すんだ」
「出会った人たち、すべて……」
アミードに触れた手のひらから、アムルの魔力が流れてくる。
「魔力を循環させて。これにはアムルの魔力が絶対に必要なんだ。俺一人の力じゃ無理なんだ。アムル……、アムルの魔力を、俺にも流して……」
アムルは胎内の魔力をすべて集中させる。
普段では考えられないほどの大きな魔力が、アムルの頭の先から爪の先まで流れているのが感じられる。
――やっぱり、そうだ。あの時、湖で大渦を発生させたときもそうだった……、僕の魔力はアミードと交わることで高まるんだ……。
二人の身体から、金色と水色の光が発せられ、それが交わり、国中へと広がっていく。
すべてが終わったその時、アミードとアムルは二人きつく抱き合った。
「これからは、ずっと一緒に生きていこう……」
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