【完結】オメガの半身 〜王太子と公爵家の双子〜

.mizutama.

文字の大きさ
27 / 29

第27話 未来へ(最終話)

しおりを挟む
「じゃあ、アムル、俺たちの子供を迎えに行こう!」

 アミードがアムルの手を取る。



 マイイとルゥルゥのいる部屋を訪れると、二人はびっくりしたようにアミードを見た。

「お母様、この人、誰……?」

 不安げな表情でアムルを見上げるマイイ。


「わあ、妖精しゃん、きれい!」

 小さいルゥルゥは、アミードの使役する精霊に目を奪われている。


「ちょっと、私は精霊よ! あんな下等なものと一緒にしないで頂戴!」


 ぶんぶんと頬を膨らませる金の精霊に、ルゥルゥは手を伸ばす。


「せいれい、しゃん? きれい、とってもきれいね……こっちに来て!」


「……まあ、美的感覚が正常であることだけは認めてあげるわ。フンっ、仕方がないわね。
せっかくだからよく見ておきなさいっ!」


 姿を褒められた精霊はまんざらでもないのか、ルゥルゥの周りとくるくると飛び回る。



「マイイ、あのね、この人は……」

「マイイ、初めまして、だね。俺はマイイの家族だよ。これから一緒にアムルと暮らすんだ。マイイも一緒に俺と来てくれる?」

 アミードはマイイににっこりと笑いかける。



「……お母様、どこかに行くの?」

 マイイはアムルの袖をつかむ。


「マイイ……」


「君のその赤い髪と青い瞳、とっても素敵だね。次の代の魔法国の女王様にぴったりだよ!」

 アミードはマイイに優しいまなざしを向ける。



「女王様……、魔法国の?」

 マイイの顔色が変わる。


「そうだよ。マイイは魔王国の次の女王様に、なりたくない?」

「だって、女は王にはなれないのよ! みんなそう言ってるもん」

 マイイが強い口調で言い返す。


「この国では、そうかもしれないね。でも俺の治める魔法国は、男も女も関係ない。魔力が一番強いものを、俺が次の王に指名するんだ。マイイはとっても賢くて、しかも魔力も強そうだね。どうだろう、俺と一緒に魔法を勉強して、女王にならないかな?」


「……なりたい。魔法の勉強も、したい」

 マイイの言葉に、アムルは驚いた。


「マイイ、いいの?」

「お母様、私、女王になりたい! ここでは女は偉くなれないもの! 私、この人と一緒に行く!」


「マイイ……」

 娘の強い意志を持った瞳に、アムルは驚いていた。


「お姉しゃま、女王しゃまになるの? いいなあ、ルゥルゥもなりたい!」

 ルゥルゥが、アミードの漆黒のマントを引っ張った。


「いいね! ルゥルゥもとっても魔力が強そうだ! マイイと一緒に女王様になればいいよ!」

 アミードがルゥルゥの頭を撫でた。


「何を言ってるの? 女王様は一つの国に一人だけよ!」

 マイイが反論する。


「大丈夫。俺の国には女王様が二人いたって、まったく問題ないよ! それに、女王様が一人だけなんていったい誰がいつ決めたの? 俺の国では、なんでも自分の好きに決めていいんだ」

「そう……、なの……?」


「わーい、ルゥルゥも女王さしゃまになるー!」

 幼いルゥルゥは、意味も分からず女王になれると喜んでいる。



「アミード、そんなこと、簡単に約束して、いいの?」

 アムルがアミードを見上げると、アミードは顔をほころばせた。


「マイイもルゥルゥも、魔力は十分。この国にいても、どこかの国の王族に嫁ぐ未来しかないんだったら、魔法国の女王になるっていうのは、二人にとってもいい選択だと思うよ。それに……」

 アミードは、ルゥルゥの手のひらの上で誇らしげにポーズをとっている金の精霊を見た。


「あの傲慢な精霊をすっかり手なずけているじゃないか。さすが、次代の女王の器だ」

「……」


「おい、精霊! お前の次のご主人様たちだ。せいぜい今のうちに媚を売っておけ!」

 アミードが言い放つと、精霊はあわててアミードの側に戻った。


「魔王様っ、違うんですっ。ちょっと、あの娘たちに私のこの姿を見せてあげていただけであって……!」


「そんなことより、行くぞ。……もう、すべては終わった」

 アミードは漆黒のマントを広げると、その中にアムルとマイイ、ルゥルゥを包み込んだ。



「では、魔王様、戻りましょう。魔法国へ――」

 金の精霊が、金の粉を降らせると、そこにはぽっかりと丸い空間があいた。


 アミードが、しっかりとアムルを抱き寄せる。


「帰ろう、俺たちの場所へ――」



 アムルは大きく息を吸い込む。

 すぐ近くに誰よりも愛しいアミードの息遣いを感じる。アムルはアミードの手を握った。



 ――マーリク、さよなら……。




 側室アムルと子供たちは、その日以降この国から永遠に姿を消した……。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ~epilogue~


 国王・マーリクが目を覚ますと、傍らにはもうすっかり用意を整えた正妃カミーラがいた。

「相変わらず、早いお目覚めだこと」

 カミーラの嫌味には慣れっこのマーリクは、寝台の上で大きく伸びをした。


「ああ、なんだか今日はすごく長い夢を見ていた気がする……」

「よく眠れたということだ。良いことじゃな。さあ、もう朝食の準備をさせても良いか? 今朝はターヒルの剣の稽古があるのじゃ」

「ずいぶん熱心なことだな。わかった準備しよう」

 夜着のまま寝台から下りると、マーリクはテーブルの上に置かれた白い手巾に目を止めた。


「これは……?」

「ああ、女官長が持ってきたのじゃ。陛下の服の中に入っていたものらしいが、大切なものなのか?」

「私の服の中に? ……なんだろう、思い出せない……」

 手巾を広げてみると、王家の紋章が刺繍されていた。


「服の中に忍ばせるとは、よほど大切なものなのではないのか?
これは手刺繍じゃろう……、もしや若い頃にどこぞの令嬢から贈られたものでは?」

 カミーラが揶揄する。


「そんな令嬢に覚えはないが……、なんだろう、でも、なにか知っているような気もする……」

「どれ、この刺繍、途中から手が変わっているぞ。おおかた、刺繍の苦手な令嬢が途中までやって放り出して、残りの部分を器用なメイドにやらせたのじゃろうな」


 マーリクはカミーラの手から、その手巾を取り返した。


「……よくわかるな。それにしても……、この刺繍、なんだか……」

「やはり大切なものなのか? 捨ててもいいのかと女官長は聞いていたが……、やはり若い頃の……」

「カミーラが嫉妬とは珍しいな」

 マーリクの言葉に、カミーラは唇をゆがませた。


「嫉妬などするような関係ではないのは、お互い承知の上であろう……?」


 マーリクはしげしげとその刺繍を眺める。


「ああ、思い出せない。なにか、ここまで出かかっているのに!」

 しかめっ面になっているマーリクに、カミーラは思いのほか優しいまなざしを向けた。


「しかし陛下、この世には忘れていたほうが幸せだということもあると聞いたぞ……」






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 魔女・ワアドの後を継いだ新しい魔法国の魔王は、そののち、すべての国交を断絶した。

 魔王は、20年後に姉妹の女王二人にその座を譲るまで、魔法国をすべての国から秘匿したため、歴史上においてその内情について記された文献は今もほとんど残っていない……。



 (了)













ーーーーーお知らせーーーーーー

これにて本編は完結しました。これから、ちょっとだけ番外編を予定しています。
面白かった、番外編もぜひ、と思っていただけましたらお気に入り登録・エールで応援よろしくお願いいたします!!!
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐
BL
 悪逆の限りを尽くした公爵令息を断罪しろ! そんな貴族たちの声が高まった頃、僕の元に、冷酷と恐れられる王子がやって来た。  その男は、かつて貴族たちに疎まれ、王城から遠ざけられた王子だ。昔はよく城の雑用を言いつけられては、魔法使いの僕の元を度々訪れていた。  ひどく無愛想な王子で、僕が挨拶した時も最初は睨むだけだったのに、今は優しく微笑んで、まるで別人だ。  出会ったばかりの頃は、僕の従者まで怯えるような残酷ぶりで、鞭を振り回したこともあったじゃないか。それでも度々僕のところを訪れるたびに、少しずつ、打ち解けたような気がしていた。彼が民を思い、この国を守ろうとしていることは分かっていたし、応援したいと思ったこともある。  しかし、あいつはすでに王位を継がないことが決まっていて、次第に僕の元に来るのはあいつの従者になった。  あいつが僕のもとを訪れなくなってから、貴族たちの噂で聞いた。殿下は、王城で兄たちと協力し、立派に治世に携わっていると。  嬉しかったが、王都の貴族は僕を遠ざけたクズばかり。無事にやっているのかと、少し心配だった。  そんなある日、知らせが来た。僕の屋敷はすでに取り壊されることが決まっていて、僕がしていた結界の魔法の管理は、他の貴族が受け継ぐのだと。  は? 一方的にも程がある。  その直後、あの王子は僕の前に現れた。何と思えば、僕を王城に連れて行くと言う。王族の会議で決まったらしい。  舐めるな。そんな話、勝手に進めるな。  貴族たちの間では、みくびられたら終わりだ。  腕を組んでその男を睨みつける僕は、近づいてくる王子のことが憎らしい反面、見違えるほど楽しそうで、従者からも敬われていて、こんな時だと言うのに、嬉しかった。  だが、それとこれとは話が別だ! 僕を甘く見るなよ。僕にはこれから、やりたいことがたくさんある。  僕は、屋敷で働いてくれていたみんなを知り合いの魔法使いに預け、王族と、それに纏わり付いて甘い汁を吸う貴族たちと戦うことを決意した。  手始めに……  王族など、僕が追い返してやろう!  そう思って対峙したはずなのに、僕を連れ出した王子は、なんだか様子がおかしい。「この馬車は気に入ってもらえなかったか?」だの、「酒は何が好きだ?」だの……それは今、関係ないだろう……それに、少し距離が近すぎるぞ。そうか、喧嘩がしたいのか。おい、待て。なぜ手を握るんだ? あまり近づくな!! 僕は距離を詰められるのがどうしようもなく嫌いなんだぞ!

白い結婚を夢見る伯爵令息の、眠れない初夜

西沢きさと
BL
天使と謳われるほど美しく可憐な伯爵令息モーリスは、見た目の印象を裏切らないよう中身のがさつさを隠して生きていた。 だが、その美貌のせいで身の安全が脅かされることも多く、いつしか自分に執着や欲を持たない相手との政略結婚を望むようになっていく。 そんなとき、騎士の仕事一筋と名高い王弟殿下から求婚され──。 ◆ 白い結婚を手に入れたと喜んでいた伯爵令息が、初夜、結婚相手にぺろりと食べられてしまう話です。 氷の騎士と呼ばれている王弟×可憐な容姿に反した性格の伯爵令息。 サブCPの軽い匂わせがあります。 ゆるゆるなーろっぱ設定ですので、細かいところにはあまりつっこまず、気軽に読んでもらえると助かります。 ◆ 2025.9.13 別のところでおまけとして書いていた掌編を追加しました。モーリスの兄視点の短い話です。

【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。

竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。 自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。 番外編はおまけです。 特に番外編2はある意味蛇足です。

【完結】顔だけと言われた騎士は大成を誓う

凪瀬夜霧
BL
「顔だけだ」と笑われても、俺は本気で騎士になりたかった。 傷だらけの努力の末にたどり着いた第三騎士団。 そこで出会った団長・ルークは、初めて“顔以外の俺”を見てくれた人だった。 不器用に愛を拒む騎士と、そんな彼を優しく包む団長。 甘くてまっすぐな、異世界騎士BLファンタジー。

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

処理中です...