【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第7話 最低

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 結婚式はそれなりに華やかに行われた。

 やはり周りからはいろいろとやっかまれたらしいマリユスとシャンタルの結婚だったが、
式での新郎新婦の美しさは、参加者のすべての嫉みを吹き飛ばしてしまうほどだった。

「いいか、ジュール。もうすでに聞いているかもしれんが、マリユスにはダンデス家に入ってもらうつもりだ」

 純白のドレスに身を包み、輝くばかりの笑顔のシャンタルをしかめっ面で睨みながら、俺の父親は言った。

「はい、お父様」

 素行の悪いマリユスを監視しようと考えた俺の父親は、マリユスをダンデス家に一時的に住まわせることに決めたらしい。


「だが、あくまでダンデス家の跡取りは、ジュール、お前だ! 一緒に暮らすとはいえ、お前はマリユスやシャンタルとは距離を置き、しっかりと学業に励むようにっ!」

「はい、お父様……」


 18歳で王立学園を卒業していた俺は、父親に家庭教師をつけられていた。父親からも領地経営についていろいろと教え込まれていたが、そのころの俺はマリユスに夢中なあまり、いろいろなことをおろそかにしていた。



 俺は、シャンタルの隣で笑うマリユスを苦々しい思いで見つめていた。

 お互いに割り切った結婚だとわかっていても、マリユスの隣に当然のように立つ美しい姉に、俺は醜いほど嫉妬していた。

 ――マリユスは俺のものなのに……。


 誰にも秘密な関係だとマリユスは言った。でも、初めての恋にすっかりのぼせ上っていた俺は、マリユスが自分だけのものでないことに、どうしようもない焦燥感を抱いていた……。



 俺の愚かしい考えが表情に出ていたのだろうか?

 俺に気づいたマリユスが、笑顔のまま俺のそばにやってきた。シルバーのフロックコートが憎らしいほど似合っていた。

 父親は来賓に挨拶をしていたところなので、ちょうど二人きりで話すことができる。


「マリユス……、おめでとう」

「ジュール、そんな顏しないで。俺まで悲しくなってしまうよ」

 マリユスが、周りに気づかれないようにそっと俺の手をとる。


「だって……、だって、マリユス……」

「今晩、君の部屋に行くよ」

 耳元でマリユスがささやく。

「……っ!」

「待ってて」

 小指と小指が絡み合う。


「うん……」

「君だけだよ……、ジュール」

 甘い言葉が、耳元に残った。俺は、離れていくマリユスの背中をいつまでも目で追っていた。



 ――マリユスは本当に悪魔そのものだった。

 マリユスはいつでも、俺が欲している言葉をさらりと口にした。

 だが、今の俺ならわかる。



 ――マリユスがささやく愛の言葉は、ただの挨拶となにも変わりない……。



 そして、その結婚式の夜も、俺たちは獣のように激しいセックスをした。

 マリユスはもう人のものになってしまったという事実が、俺をことさら興奮させていた。



 それから、俺とマリユスは人目を忍んで、この秘密の関係を続けるようになった。はじめのうちは、マリユスがもともと住んでいた屋敷でこっそり逢っていたのだが、、だんだん大胆になっていった俺たちは、住んでいるダンデス家の屋敷でも、ことに及ぶことが多くなっていった。

 誰にも言えない関係であることと、人目を忍ぶスリリングな情事は、俺を一種異様な高揚状態にさせていた。

 そして、俺の生活はマリユスがすべての優先事項となってしまったため、俺はあっという間に数少ない友人をすべて失ってしまった。

 そして、婚約者のイネスと会うことも億劫になった俺は、彼女からの連絡をすべて無視し、彼女につらい思いをさせた。父親からイネスのことで注意されたときは「今は勉強に専念したい」と大嘘をついた。もちろん、俺がマリユスと関係しているなど微塵も思っていない父親は、俺の潔癖ぶりを内心誇りに思っていたようだった。

 俺は……、最低だった。


 だが、その時の俺は、マリユス以外のことはすべてどうでもよくなっていた。

 俺はますますマリユスに依存を深めていき、マリユスなしでは生きていけないほどになっていた。俺の人生は、すべてがマリユスを中心に回っていた。


 ――だが、もちろんマリユスはそうではなかった。


 このただれた関係が1年も経つころには、マリユスを思うようにできない歯がゆさから、俺はマリユスに我がままを言うことが多くなっていった。

 マリユスはいつもの人を食ったような笑みで俺をいなしていたが、俺はだんだんマリユスとのいろいろなことに我慢できなくなってきた。

 マリユスとシャンタルが表面上はとても仲のいい夫婦で通っているところも、俺の劣等感を激しく刺激していた。


 そして俺が二十歳になろうというころ、俺は爆発した。



「もう、我慢できない!! 別れる!!」

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