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第14話 共鳴
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「ジュール、テオドールよ。テオドール、こちらは私の弟、ジュールよ。お兄様というのも変だから、叔父様とでも呼べばいいわ」
「叔父様……」
まだ二十歳だというのに、急に老けてしまったような気分になった俺は、顔をしかめた。
たしかに、14歳の少年から見れば、俺は立派なおじさんかもしれないが……。
「はい、シャンタル様。ジュール叔父様、はじめまして。テオドール・ロルジュと申します。お目にかかれて光栄です」
「ああ、よろしく、テオドール」
俺はぎこちなく微笑む。やはりテオドールの顔には表情というものがない。
なまじ整っているだけに、それがなんとなく人形のような印象を与える。
「テオドール、これからはジュール叔父様があなたの後見人となり、あなたを見守ってくれますからね。安心してここで暮らしなさい」
だが、壊れた機械のように同じ言葉を繰り返していたテオドールはなぜか押し黙ってしまった。
「どうしたの、テオドール? お返事は?」
シャンタルの言葉に、テオドールは首を振った。
「結構です……」
「は?」
シャンタルが眉間にシワを寄せる。
「私はまだ子どもですが、自分の置かれた状況については、よく分かっています。これ以上、他の方の迷惑になることはできません。
私は……、ベラム子爵のところに参ります」
「あなた、何を言って……」
シャンタルの顔色が変わる。
「ジュール叔父様、私のことを引き取ってもいいと思ってくださり、感謝しています。でもここは私がいるべき場所ではないということくらい、わからない子どもではありません。叔父様はさっきから、とても戸惑っていらっしゃいますよね。多分……、私の見た目が関係しているのだと思います。ご不快な思いをさせて、大変申し訳ありません。俺……、私は‥…、私自身もこの見た目が、大嫌いです」
深々と頭を下げるテオドールに、俺は心が張り裂けそうだった。
ーー俺は、この子になんてことを言わせているんだ!?
「テオドール、わかっているのっ!? ペラム子爵は……っ」
「私のことを必要としている場所があるなら、どんなところでも甘んじて受け入れます」
テオドールの漆黒の瞳は、まるでうろのように空っぽだった。それはその時の俺の心と全く同じ状態で、だからこそ、俺の心を打った。
「テオドール、一つ質問してもいい?」
俺の問いかけに、テオドールは俺の方を真っ直ぐに見た。
「はい、ジュール叔父様」
「君は……、君の本当の父親……、マリユス・ロルジュのことをどう思っているの?」
俺の言葉に、初めてテオドールの瞳に、なにかの感情が浮かんだ。
「生まれたときから、私に父親というものはおりません!」
強い光が、俺を射抜いていた。
「テオドールっ!」
そして次の瞬間、俺はテオドールに近づき、思い切り抱きしめていた。
「テオドール、これからは俺が君を守るよ! ここで暮らそう。
一緒に、幸せになろう!!」
「……っ!!」
腕のなかの少年は、最初は硬直していたが、しばらくすると俺の背にしっかりと手を回してくれた。
「ジュール叔父様……、私は、ここにいていいのでしょうか?」
「ここにいてくれ! 俺のそばにいて! 俺が、俺自身が、君を必要としているんだっ!」
俺はテオドールというまっすぐでひたむきな存在に、強く共鳴していた。
全く違う立場ではあったが、マリユスに捨てられたという同じ経験を持つ俺とテオドール。
俺は初めて、自分の本当の理解者を見つけた気持ちになっていた。
「まあ! いきなりこんなに打ち解けるなんて! 二人はきっと仲良くなれると思っていたけど想像以上だったわ!」
シャンタルの言葉に、急に我に返った俺は、慌ててテオドールから離れようとする。
だが……、
「あの、テオ、ドール、苦しい、よ? もう、離して……」
テオドールの腕が、びっくりするほど強く俺を抱き返していて、離れようとしない。
「あっ、申し訳ありません、叔父様っ」
腕を緩めたテオドールは、俺に赤面し、はにかんだ表情を見せた。
ーー可愛いっ!!
そしてあっという間に、俺はテオドールのことが大好きになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとになってお姉様は、このときのことを俺にこう話してくれた。
ーーあなたは気づいていなかったけど、あの時、あなたがテオドールを抱きしめたことで、テオドールの心の奥のなにかのスイッチを押してしまったのよ。そうよジュール……、テオドールがこうなってしまったことに、あなたにも責任があるのよ。だからもう……、諦めて受け入れなさい。
「叔父様……」
まだ二十歳だというのに、急に老けてしまったような気分になった俺は、顔をしかめた。
たしかに、14歳の少年から見れば、俺は立派なおじさんかもしれないが……。
「はい、シャンタル様。ジュール叔父様、はじめまして。テオドール・ロルジュと申します。お目にかかれて光栄です」
「ああ、よろしく、テオドール」
俺はぎこちなく微笑む。やはりテオドールの顔には表情というものがない。
なまじ整っているだけに、それがなんとなく人形のような印象を与える。
「テオドール、これからはジュール叔父様があなたの後見人となり、あなたを見守ってくれますからね。安心してここで暮らしなさい」
だが、壊れた機械のように同じ言葉を繰り返していたテオドールはなぜか押し黙ってしまった。
「どうしたの、テオドール? お返事は?」
シャンタルの言葉に、テオドールは首を振った。
「結構です……」
「は?」
シャンタルが眉間にシワを寄せる。
「私はまだ子どもですが、自分の置かれた状況については、よく分かっています。これ以上、他の方の迷惑になることはできません。
私は……、ベラム子爵のところに参ります」
「あなた、何を言って……」
シャンタルの顔色が変わる。
「ジュール叔父様、私のことを引き取ってもいいと思ってくださり、感謝しています。でもここは私がいるべき場所ではないということくらい、わからない子どもではありません。叔父様はさっきから、とても戸惑っていらっしゃいますよね。多分……、私の見た目が関係しているのだと思います。ご不快な思いをさせて、大変申し訳ありません。俺……、私は‥…、私自身もこの見た目が、大嫌いです」
深々と頭を下げるテオドールに、俺は心が張り裂けそうだった。
ーー俺は、この子になんてことを言わせているんだ!?
「テオドール、わかっているのっ!? ペラム子爵は……っ」
「私のことを必要としている場所があるなら、どんなところでも甘んじて受け入れます」
テオドールの漆黒の瞳は、まるでうろのように空っぽだった。それはその時の俺の心と全く同じ状態で、だからこそ、俺の心を打った。
「テオドール、一つ質問してもいい?」
俺の問いかけに、テオドールは俺の方を真っ直ぐに見た。
「はい、ジュール叔父様」
「君は……、君の本当の父親……、マリユス・ロルジュのことをどう思っているの?」
俺の言葉に、初めてテオドールの瞳に、なにかの感情が浮かんだ。
「生まれたときから、私に父親というものはおりません!」
強い光が、俺を射抜いていた。
「テオドールっ!」
そして次の瞬間、俺はテオドールに近づき、思い切り抱きしめていた。
「テオドール、これからは俺が君を守るよ! ここで暮らそう。
一緒に、幸せになろう!!」
「……っ!!」
腕のなかの少年は、最初は硬直していたが、しばらくすると俺の背にしっかりと手を回してくれた。
「ジュール叔父様……、私は、ここにいていいのでしょうか?」
「ここにいてくれ! 俺のそばにいて! 俺が、俺自身が、君を必要としているんだっ!」
俺はテオドールというまっすぐでひたむきな存在に、強く共鳴していた。
全く違う立場ではあったが、マリユスに捨てられたという同じ経験を持つ俺とテオドール。
俺は初めて、自分の本当の理解者を見つけた気持ちになっていた。
「まあ! いきなりこんなに打ち解けるなんて! 二人はきっと仲良くなれると思っていたけど想像以上だったわ!」
シャンタルの言葉に、急に我に返った俺は、慌ててテオドールから離れようとする。
だが……、
「あの、テオ、ドール、苦しい、よ? もう、離して……」
テオドールの腕が、びっくりするほど強く俺を抱き返していて、離れようとしない。
「あっ、申し訳ありません、叔父様っ」
腕を緩めたテオドールは、俺に赤面し、はにかんだ表情を見せた。
ーー可愛いっ!!
そしてあっという間に、俺はテオドールのことが大好きになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あとになってお姉様は、このときのことを俺にこう話してくれた。
ーーあなたは気づいていなかったけど、あの時、あなたがテオドールを抱きしめたことで、テオドールの心の奥のなにかのスイッチを押してしまったのよ。そうよジュール……、テオドールがこうなってしまったことに、あなたにも責任があるのよ。だからもう……、諦めて受け入れなさい。
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