【完結】究極のざまぁのために、俺を捨てた男の息子を育てています!

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第16話 王都のふたり

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「本当になんてお似合いなんでしょう!」

「素敵ですわぁ。惚れ惚れしてしまいます!」



 ーーそうだろう、そうだろう!


 ここは王都で一番の高級衣料品店。


 若い女性の売り子たちに囲まれてチヤホヤされているテオドールに鼻高々の俺は、椅子に座ってふんぞり返っていた。



「叔父様……、どうですか? 俺、似合っていますでしょうか?」


 テオドールの黒曜石のような瞳が、不安げに揺れる。

 そんな表情にも、俺のハートはあっさりと撃ち抜かれてしまう。



「もちろんだよ、テオドールっ! すごく似合っていて素敵だよ! じゃあ、君、これまで試着した服、全部いただこうか!」


 俺は立ち上がり、大仰に腕を広げた。


「まあ、ありがとうございます。ジュール卿!」


「今の服はそのまま着て帰るから、他のものを全部包んでくれ」


「かしこまりましたぁ!」



「叔父様、そんな、結構ですっ! 学園に着ていく服は2、3着もあれば十分です!」


「何を言ってるんだよ、テオドール。まだ全然足りないくらいだよ!」


 これから通う王立学園に着ていくための、美しいラインの立襟シャツに、キリッとした印象の濃紺の上着を羽織ったテオドールは、誰がどう見てもこの国一番の美少年だった。



 テオドールが、アルボン家から持ってきた私物はびっくりするほど少なかった。もちろん洋服も必要最低限で、テオドールの魅力を最大限に引き出しているとは言い難く、そのことに俺はますますアルボン家に不信感を募らせた。


 本来なら、家に仕立て屋を呼んで、生地からテオドールにピッタリと合う洋服を見立ててやりたかったが、入学まで日がないため、今日はとりあえずレディ・メイドの服で涙を飲んだのだ。



「書籍は一通り揃えたし、次は……、ああもうこんな時間か。昼食にでもしようか。テオドール、食べたいものはある?」

「俺、叔父様と一緒に食事ができるなら、どこだってすごく幸せですっ!」

「テオドールっ!!」


 ーーなんて不憫な子っ!!


 きっと今まで、王都のレストランで食事させてもらったことなどなかったのだ。この喜びようからして、そうに違いない!


 俺は意気揚々と今、王都で一番お洒落で、一番値段が高いというレストランの門を潜った。


 ちなみに、今日の軍資金は全てお姉様もち。お姉様は新しい婚約者のお陰で、かなり羽振りが良いご様子だ。やはり最後は、金、なのか? そうなのか!?



「美味しい? テオドール?」


 さすがにテーブルマナーは完璧のテオドール。食べる姿は優雅で様になっている。先ほどからテオドールの美しさに目を奪われた人からの視線も痛いほど感じる。


「はい、とってもおいしいです。でも、俺は叔父様とご一緒できるなら、こんな高級な店でなくてもすごく満足です」


 若干14歳なのに、相手の懐事情まで考慮してくれる心優しいテオドールに俺はじんと来ていた。


 きっと今まで、贅沢なことは良くないことだと、身をもって教えられてきたのだろう。


 ーーだからこそ、俺はテオドールには湯水のごとく、惜しみなく金を使ってやる!(※注 お姉様のお金)


「叔父様、俺が学園を卒業して、騎士団に入団したら、今度は俺が叔父様のお洋服を全部揃えます」

 テオドールが真っ直ぐに俺を見て言う。

「そんなこと、気にしなくっていいって言っただろう」

「いえっ、俺がそうしたいんです! 今度は、俺が叔父様の服を選んでプレゼントしてあげたいんです!」


 どうしても受け取りっぱなしというのは嫌なのだろう。そういう心意気も、漢気が溢れていてとてもいい!!


 テオドールは俺に将来は騎士団に入りたいのだと教えてくれた。剣術が得意だというテオドール。その見目麗しさを活かせば、王宮の近衛師団だって夢じゃない。実力と見た目を兼ね備えているのだから、近衛師団の入団に必要なのは、あとはコネのみ! 

 ーーこれは俺がなんとかするしかないだろう。



「じゃあ、楽しみにしているよ。ありがとう。テオドール」

「はいっ!」

 目を輝かせて将来に胸を膨らませるテオドール。そんなテオドールを見ていて、俺まで清々しい気分になった。



 昼食を終えた俺たちは、さらに身の回りの細々としたものを買い揃えると、馬車に溢れんばかりの荷物を積み込んだ。


「テオドール、どうしたの?」

 なかなか馬車に乗り込まないテオドールの視線の先にあったのは……。


 ーー氷菓子か!


 今、王都で大流行中だという色とりどりの氷菓子。魔力でクリームを極限まで冷やして作るというそれは、ねっとりと甘い食感が特徴だとか。

 テオドールは一つの氷菓子を分け合って、食べさせあいっこをしながら食べるカップルを食い入るように見つめていた。


「あれが食べたいの?」

「いえ、そういうわけでは……」


 ーーいや、きっとすごく食べたいんだ。じゃなきゃ、あんなにガン見したりしない!




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