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第17話 氷菓子と淫紋
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「氷菓子を2つ」
屋台の売り子に注文した俺の袖を、テオドールはそっと引いた。
「叔父様、俺……、すごく食べたいのですが、さっきのお食事でお腹がいっぱいで……、一人では全部食べ切れそうにありません」
おずおずと切り出したテオドールの頭に、俺はぽんと手を置いた。
「大丈夫だよ。食べきれなかったら残せばいいんだから……」
俺の言葉にテオドールはぶんぶんと首を振った。
「叔父様に買ってもらったものを残すなんて、そんなもったいないこと、俺にはできません! あのっ、叔父様……、もしお嫌でなければ、俺とはんぶんこしませんか?」
ーーああ、そういうこと。
俺はテオドールが、仲良く氷菓子を分け合っているカップルに釘付けになっていた意味が分かった気がした。
ーー半分くらいなら食べられそうだから、ああやって分け合えばいいと思っていたのだな!
「いいよ、テオドール。はんぶんこしよう」
「はいっ!」
嬉しそうに顔を赤くするテオドールに、俺までウキウキしてしまう。
売り子にスプーンを2つつけてもらった俺達は、店の近くの木陰のベンチに腰をおろした。
「あ、あ、あのっ、叔父様っ!」
テオドールがスプーンをぷるぷると震わせながら、俺に向かってすくった氷菓子を差し出してくる。
「え? あの、テオドール」
「口を、開けてください、叔父様っ」
「えっ、あ? ああ……、んぐっ」
テオドールが俺の口に氷菓子を押し込んできた。
ーーテオドール、もしかしてはんぶんこするときは、食べさせ合いっこしなければいけないとか、思ったり、してる!?
しかし、真剣な表情のテオドールの手前、なんだかそんな可愛い勘違いを正すのも申し訳がない気がして、俺は自分のスプーンですくった氷菓子を、テオドールに差し出してやった。
「はい、テオドール、あーん」
「!!!!!!!!」
テオドールに氷菓子を食べさせてやると、テオドールは目を白黒とさせた。
「大丈夫? テオドール? やっぱり自分で食べたほうが……」
「叔父様っ、すごく、美味しいですっ!」
瞳をうるませて喜ぶテオドールのあまりの可愛さに、俺はうっとつまる。
「そ、それは、よかったね。じゃあ、もう一口……」
「はいっ!」
口を開けるテオドールに何度も氷菓子を運んでやると、まるで自分がヒナに餌を運ぶ親鳥みたいな気分になってくる。
ーーなんか、すごく……、癒やされる……!
「じゃあ、次は叔父様です……っ!」
テオドールが俺にスプーンを向けてくる。
「いやいいよ、俺は自分で……」
「俺に食べさせてもらうのは、お嫌ですかっ!?」
キュルンとした瞳で見上げられると、俺は何も言えなくなってしまう。
「いや、そんなことあるはずないよ! いただくよ、テオドール」
「じゃあ、叔父様、あーん、してください!」
「あー、んぐっ!」
テオドールに氷菓子を食べさせてもらう俺。これって絵的にどうなのかな? OKなのかな?
いろいろと不安になる俺に、テオドールはくすっと笑った。
「叔父様、口についてますよ……」
テオドールの手が、俺の唇に伸び、触れようとしたその時……、
「っ!!」
俺は思わず、テオドールの手をはねのけてしまっていた。
「叔父さま……?」
「ごめん、なんでもないんだ、テオドール。ちょっとびっくりして……」
『ほら、ついてるよ。こういうところが、可愛いんだ』
あのときのマリユスが、テオドールに重なって見えた。
「叔父様、大丈夫ですか、顔色が……」
「なんでも、ないっ……」
そう言った俺だが、その背中には冷や汗が伝っていた。
ーー淫紋が、熱い。
マリユスが去ってから、すっかりその存在を忘れていた淫紋が、なぜかいまここで、激しく主張を始めている。
ーー苦しい……。
淫紋のある下腹部がぎゅっと締め付けられているような感覚がある。マリユスに抱かれていたときは、快感しかなかった淫紋なのに、その重苦しさに、俺は荒い息を繰り返した。
「叔父様……」
「大丈夫、かなり、落ち着いてきた、から……」
そして数分も経つと、感覚は元に戻り、苦しさも消えた。
「びっくりさせてごめんね、テオドール。もう平気だよ。
でも、もう家に戻ろうか……」
「はい、叔父様。申し訳ありません。つい浮かれて、調子に乗りすぎました」
「君はなにも悪くないよ」
「……」
この時まだ俺は気づいていなかった。
マリユスに刻まれた淫紋が、今後の俺の運命を大きく変えることになることを……。
屋台の売り子に注文した俺の袖を、テオドールはそっと引いた。
「叔父様、俺……、すごく食べたいのですが、さっきのお食事でお腹がいっぱいで……、一人では全部食べ切れそうにありません」
おずおずと切り出したテオドールの頭に、俺はぽんと手を置いた。
「大丈夫だよ。食べきれなかったら残せばいいんだから……」
俺の言葉にテオドールはぶんぶんと首を振った。
「叔父様に買ってもらったものを残すなんて、そんなもったいないこと、俺にはできません! あのっ、叔父様……、もしお嫌でなければ、俺とはんぶんこしませんか?」
ーーああ、そういうこと。
俺はテオドールが、仲良く氷菓子を分け合っているカップルに釘付けになっていた意味が分かった気がした。
ーー半分くらいなら食べられそうだから、ああやって分け合えばいいと思っていたのだな!
「いいよ、テオドール。はんぶんこしよう」
「はいっ!」
嬉しそうに顔を赤くするテオドールに、俺までウキウキしてしまう。
売り子にスプーンを2つつけてもらった俺達は、店の近くの木陰のベンチに腰をおろした。
「あ、あ、あのっ、叔父様っ!」
テオドールがスプーンをぷるぷると震わせながら、俺に向かってすくった氷菓子を差し出してくる。
「え? あの、テオドール」
「口を、開けてください、叔父様っ」
「えっ、あ? ああ……、んぐっ」
テオドールが俺の口に氷菓子を押し込んできた。
ーーテオドール、もしかしてはんぶんこするときは、食べさせ合いっこしなければいけないとか、思ったり、してる!?
しかし、真剣な表情のテオドールの手前、なんだかそんな可愛い勘違いを正すのも申し訳がない気がして、俺は自分のスプーンですくった氷菓子を、テオドールに差し出してやった。
「はい、テオドール、あーん」
「!!!!!!!!」
テオドールに氷菓子を食べさせてやると、テオドールは目を白黒とさせた。
「大丈夫? テオドール? やっぱり自分で食べたほうが……」
「叔父様っ、すごく、美味しいですっ!」
瞳をうるませて喜ぶテオドールのあまりの可愛さに、俺はうっとつまる。
「そ、それは、よかったね。じゃあ、もう一口……」
「はいっ!」
口を開けるテオドールに何度も氷菓子を運んでやると、まるで自分がヒナに餌を運ぶ親鳥みたいな気分になってくる。
ーーなんか、すごく……、癒やされる……!
「じゃあ、次は叔父様です……っ!」
テオドールが俺にスプーンを向けてくる。
「いやいいよ、俺は自分で……」
「俺に食べさせてもらうのは、お嫌ですかっ!?」
キュルンとした瞳で見上げられると、俺は何も言えなくなってしまう。
「いや、そんなことあるはずないよ! いただくよ、テオドール」
「じゃあ、叔父様、あーん、してください!」
「あー、んぐっ!」
テオドールに氷菓子を食べさせてもらう俺。これって絵的にどうなのかな? OKなのかな?
いろいろと不安になる俺に、テオドールはくすっと笑った。
「叔父様、口についてますよ……」
テオドールの手が、俺の唇に伸び、触れようとしたその時……、
「っ!!」
俺は思わず、テオドールの手をはねのけてしまっていた。
「叔父さま……?」
「ごめん、なんでもないんだ、テオドール。ちょっとびっくりして……」
『ほら、ついてるよ。こういうところが、可愛いんだ』
あのときのマリユスが、テオドールに重なって見えた。
「叔父様、大丈夫ですか、顔色が……」
「なんでも、ないっ……」
そう言った俺だが、その背中には冷や汗が伝っていた。
ーー淫紋が、熱い。
マリユスが去ってから、すっかりその存在を忘れていた淫紋が、なぜかいまここで、激しく主張を始めている。
ーー苦しい……。
淫紋のある下腹部がぎゅっと締め付けられているような感覚がある。マリユスに抱かれていたときは、快感しかなかった淫紋なのに、その重苦しさに、俺は荒い息を繰り返した。
「叔父様……」
「大丈夫、かなり、落ち着いてきた、から……」
そして数分も経つと、感覚は元に戻り、苦しさも消えた。
「びっくりさせてごめんね、テオドール。もう平気だよ。
でも、もう家に戻ろうか……」
「はい、叔父様。申し訳ありません。つい浮かれて、調子に乗りすぎました」
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「……」
この時まだ俺は気づいていなかった。
マリユスに刻まれた淫紋が、今後の俺の運命を大きく変えることになることを……。
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