18 / 165
第18話 原因不明の病
しおりを挟む
王都から戻ってから、俺の体調は悪くなる一方だった。
はじめは、単なる疲れだろうと思っていた。だが、別宅に引っ越して以来、減少気味だった食欲はますますなくなり、ついには水分以外は受け付けられなくなってしまった。
「叔父様、どうか一口だけでも召し上がってください。近くの森で摘んできた野いちごです」
テオドールが心配そうな顔で、色鮮やかな野いちごがあふれんばかりに乗った盆を差し出してくる。
寝台に半身を起こした俺は、それを受け取ると一つ口に含む。
甘酸っぱい味が、口いっぱいに広がった。
「おいしいよ、ありがとう、テオドール」
「叔父様、俺っ、叔父様がよくなるためならなんだってします! だから……っ」
俺の手を握るテオドールの手は、傷だらけだった。おそらく朝早くから森で、俺のために野いちごを探してくれたのだろう。森の野いちごが群生している近くには、トゲを持った草がたくさん生えていたはずだ。
「ごめんね、テオドール、心配かけてしまって」
「なにかほかに欲しいものはありませんか?」
「うん、だいじょうぶっ、うぅっ……」
突然、胸が締め付けられるように苦しくなり、胃の中のものがせりあがってくる。
「叔父様っ!」
テオドールが慌てて俺の背中をさする。
「うっ、ぐっ、げほっ……」
差し出された白い布巾にさっき食べた野いちごをすべて吐き出すと、俺はうなだれた。
「ごめん、テオドール、せっかく俺のために摘んでくれたのに……」
「俺のことなんて、どうだっていいんですっ、叔父様っ、やっぱりもっと医療の進んだ国外の医者に診てもらったほうが……!」
「いや、モロー先生は立派な先生だよ。先生でも治せないんなら、もう、おそらく……」
ダンデス家の主治医であるモロー先生は、俺の症状について原因不明と診断を下した。このまま自然に快癒するはずとのことだったが……、俺の体調はもうすでに限界まできていた。
目の前のテオドールを見て、俺は絶望的な気持ちになる。
せっかく俺がテオドールをひきとって立派に育てあげようとしていたのに、俺がもしここで死んでしまうようなことがあれば、テオドールはこの先どうやって生きていけばいいんだ!?
ーー俺は、テオドールを絶対に幸せにするって決めたんだ!!
だから……、俺は絶対にここで死ぬわけにはいかない!
「少し、眠るよ。テオドール」
情けないことに、身体がだるく、起きあがったままではいられない。
「叔父様……っ」
今にも泣きだしそうなテオドールの頭を俺は撫でた。
「大丈夫。君の為にも絶対に元気になる! 約束するよ」
「叔父様っ、……大好きですっ!」
テオドールは俺に被い被さるように抱きしめてくる。
俺はそれに応えるように、テオドールの熱い身体に両手を回す。
「俺も、大好きだよ、テオドール」
「叔父様っ、俺っ……」
テオドールの漆黒の瞳が至近距離で俺を見つめてくる。
その熱量の強さに、俺の心臓は早鐘を打つ。
「テオドール……」
「叔父様……、好きです……」
テオドールの吐息が俺の唇にかかる。
「テオドール、あの……」
「叔父様っ……!」
近づきすぎたテオドールのその端正な美貌が、二重にぶれる。
思わず目を閉じたそのとき、
「ジュールっ、ジュールっ、大丈夫なのっ!? 生きてるのっ!?」
ーーお姉様っ!?
俺の部屋の扉が、破壊されるのではないかと思うほど激しくたたかれた。
はじめは、単なる疲れだろうと思っていた。だが、別宅に引っ越して以来、減少気味だった食欲はますますなくなり、ついには水分以外は受け付けられなくなってしまった。
「叔父様、どうか一口だけでも召し上がってください。近くの森で摘んできた野いちごです」
テオドールが心配そうな顔で、色鮮やかな野いちごがあふれんばかりに乗った盆を差し出してくる。
寝台に半身を起こした俺は、それを受け取ると一つ口に含む。
甘酸っぱい味が、口いっぱいに広がった。
「おいしいよ、ありがとう、テオドール」
「叔父様、俺っ、叔父様がよくなるためならなんだってします! だから……っ」
俺の手を握るテオドールの手は、傷だらけだった。おそらく朝早くから森で、俺のために野いちごを探してくれたのだろう。森の野いちごが群生している近くには、トゲを持った草がたくさん生えていたはずだ。
「ごめんね、テオドール、心配かけてしまって」
「なにかほかに欲しいものはありませんか?」
「うん、だいじょうぶっ、うぅっ……」
突然、胸が締め付けられるように苦しくなり、胃の中のものがせりあがってくる。
「叔父様っ!」
テオドールが慌てて俺の背中をさする。
「うっ、ぐっ、げほっ……」
差し出された白い布巾にさっき食べた野いちごをすべて吐き出すと、俺はうなだれた。
「ごめん、テオドール、せっかく俺のために摘んでくれたのに……」
「俺のことなんて、どうだっていいんですっ、叔父様っ、やっぱりもっと医療の進んだ国外の医者に診てもらったほうが……!」
「いや、モロー先生は立派な先生だよ。先生でも治せないんなら、もう、おそらく……」
ダンデス家の主治医であるモロー先生は、俺の症状について原因不明と診断を下した。このまま自然に快癒するはずとのことだったが……、俺の体調はもうすでに限界まできていた。
目の前のテオドールを見て、俺は絶望的な気持ちになる。
せっかく俺がテオドールをひきとって立派に育てあげようとしていたのに、俺がもしここで死んでしまうようなことがあれば、テオドールはこの先どうやって生きていけばいいんだ!?
ーー俺は、テオドールを絶対に幸せにするって決めたんだ!!
だから……、俺は絶対にここで死ぬわけにはいかない!
「少し、眠るよ。テオドール」
情けないことに、身体がだるく、起きあがったままではいられない。
「叔父様……っ」
今にも泣きだしそうなテオドールの頭を俺は撫でた。
「大丈夫。君の為にも絶対に元気になる! 約束するよ」
「叔父様っ、……大好きですっ!」
テオドールは俺に被い被さるように抱きしめてくる。
俺はそれに応えるように、テオドールの熱い身体に両手を回す。
「俺も、大好きだよ、テオドール」
「叔父様っ、俺っ……」
テオドールの漆黒の瞳が至近距離で俺を見つめてくる。
その熱量の強さに、俺の心臓は早鐘を打つ。
「テオドール……」
「叔父様……、好きです……」
テオドールの吐息が俺の唇にかかる。
「テオドール、あの……」
「叔父様っ……!」
近づきすぎたテオドールのその端正な美貌が、二重にぶれる。
思わず目を閉じたそのとき、
「ジュールっ、ジュールっ、大丈夫なのっ!? 生きてるのっ!?」
ーーお姉様っ!?
俺の部屋の扉が、破壊されるのではないかと思うほど激しくたたかれた。
223
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない
てんつぶ
BL
連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。
その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。
弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。
むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。
だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。
人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる