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第142話 聖騎士の結婚式(最終話)
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「叔父様……、叔父様……」
テオドールが俺の首筋に顔をうずめてくる。
「テオ……」
触れ合う肌が、なんだかくすぐったい。
俺たちは裸のままシーツにくるまっていた。
すっぽりとテオドールに抱きしめられた俺は、まだ二人で溶け合った余韻が身体に残っているようだった。
テオドールのいたずらな指が、俺のあちこちに触れてくる。
「ひゃっ、あ、ダメっ……、テオっ……」
「叔父様……、淫紋は、消えましたよ」
テオドールは、俺に甘い声でささやきかけた。
「ほんとにっ!?」
俺は寝台からがばりと起き上がって、下腹部を確かめる。
――ない!
あの忌まわしき淫紋は、俺の身体からきれいさっぱり消えてなくなっていた。
「よかった! ありがとうテオドール」
俺はテオドールに抱きついた。
「お礼を言うのはこちらです。ジュール叔父様、ありがとうございました。俺はついに叔父様の真実の愛を手にすることができたのですね。
とても甘美で、素晴らしい時間でした。叔父様の可愛らしい姿は、一生忘れません」
テオドールは再び俺の背中に妖しく指を這わせる。
「っ……」
「ところで叔父様、淫紋がなくなったからといって、俺はもうお役御免、というわけではないでしょうね?」
「え?」
テオドールは身体を離すと、俺の鼻先に自分の鼻先をくっつけてきた。
「叔父様、もしかして、淫紋がなくなったからもう定期的にセックスしなくていいんだ、なんて、今考えていないでしょうね?」
「……うっ」
――それは、確かに……、ちょっとは、考えていたけど……!
「結婚前に先に取り決めておきましょうか? 結婚後は、一日何回セックスするのか」
「……へ?」
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
「何回って!? それってまさか、毎日するってこと?」
「ええ、毎日」
にっこりとほほ笑むテオドール。
――テオドールは本気だ!!
「そ、そのことについては、あとで、話し合おう! おいおい……、ゆっくりと……」
しどろもどろになる俺を、テオドールはゆっくりと寝台に横たえた。
「そうですね。叔父様にはわかっておいていただかなければいけないことが、とてもたくさんありそうです。
でも、その前に……、淫紋が解けた叔父様ともう一度触れ合いたいのですが、いかがですか?」
「……っ、え、あ、待って、ちょっと今は、まだ、まっ……、むっ、うあ、あ……!」
あっという間に唇を塞がれて、抵抗しようともがいた俺の両手は、テオドールによって拘束されてしまった……。
――俺はこの時初めて、テオドールと結婚するということは、いろいろと覚悟が必要だということを悟ったのだった……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ジュール、とっても素敵、似合ってるわ!」
支度を整えた俺の部屋に入ってきたのは、シャンタルお姉様だった。
「お姉様、ありがとうございます」
俺は少し照れくさかったが、素直に礼を言った。
「それにしても、聖騎士団の制服の色違いとはね。シャルロット殿下の強いこだわりを感じるわ……」
お姉様は俺の光沢のある白い上着に触れる。
そう、俺の結婚式の衣装は、なぜかシャルロット王女によって『黒の聖騎士団服~純白version~』と最初から決められていた……。
「聖教会での結婚式だなんて、王族みたいで本当に素敵! いいわねえ、私もテオドールのつてで、聖教会でお式を挙げさせてもらおうかしら」
お姉様の言葉に、俺の頭の中に疑問符が浮かぶ。
「ところでお姉様、デマル男爵とはいったいどうなっているんです? 婚約してからずいぶん経っているのに、お姉様は独身のままだし……」
俺の言葉に、今度はシャンタルが目を大きく見開いた。
「まあ、あなたったら、本当に何も知らなかったの? そういえば、あの頃、ずっとエディマにいたんですものね……。
デマル男爵とはとっくの昔に婚約は解消したのよ」
「そう、だったんですか……」
もしかして聞いてはいけないことだったのかと、俺の声は自然と小さくなった。
だが……、
「そんな顏しないで! お姉様は今とっても幸せだから。やっぱり、人生お金なんかじゃないわ。愛よ、愛!
愛に生きるお姉様は、今セルジュと婚約しているのよ! だから安心して。あなたたちの結婚式が済んだら、次は私たちの結婚式よ!」
「はあああっ!!??」
俺は驚きのあまり、吸っ頓狂な声をあげた。
――シャンタルお姉様が、なんとあの、セルジュと!?
セルジュはちゃっかり、お姉様への片想いを実らせていたというのか!?
シャンタルお姉様とセルジュ、想像すらしていなかった二人だが、よく考えてみるとお似合いと言えなくもない……。
「ジュール、良かったわね。お姉様には最初からわかっていたわよ。あなたたち二人はきっといつか、こうして結ばれるだろうって。
そう、初めてあなたをテオドールに引き合わせたその日からね!」
シャンタルが俺にウィンクする。
「でも、でも……、お姉様、お姉様は俺のテオドールへの気持を知っていたのに、どうして俺を『ナイム』と引き合わせたんです?
あのせいで俺とテオドールの情緒は、もうめちゃくちゃになってしまったんですよっ!」
俺の恨み節に、シャンタルはふふんと鼻を鳴らした。
「だって、ジュール、仕方がなかったのよ! テオドールったらお姉様のアドバイスをちっとも聞かないんですもの。意地悪の一つもしたくなっちゃうわよ!
テオドールには、ジュールがエディマから戻ってきたらすぐに、ジュールがどんなに抵抗してもさっさと自分のものにしちゃいなさいって、お姉様は口を酸っぱくして言ってたの。それなのに、肝心な時にあのヘタレ男はっ!!」
何かを思い出したのか、シャンタルは悔し気に手にしていたハンカチをぎゅっと握りしめた。
「お、お姉様っ……!?」
「テオドールったら、恋愛経験豊富なお姉様の言うことには全然耳を貸さずに、あのどっからどうみても耳年増な乙女の王女様のアドバイスにばっかりしたがっちゃって!!
『ナイム』だって、王女様の提案だったのよ。時を操る光魔法だか何だか知らないけど、わざわざあの頃のマリユスと同年代に設定したところにも何か含みを感じるわ。……まったく、あのプリンセスの考えることはあまりにも……」
途中で言い過ぎだと気づいたのか、シャンタルははっとその手を口に当てた。
「まあ、そういうわけだけれども、ジュール! すべての出来事は、今、この瞬間に繋がっていたのよ」
シャンタルの満面の笑みに、俺もついつられてほほ笑んだ。
「何一つ欠けていても、今日のこの幸せな日は来なかった、そう思えば、今までのいろいろな過去全部が大切な出来事だったって、そうは思わない?」
――そうだ、今までの日々は、全部このテオドールとの未来に繋がっていたのだとしたら……。
聖教会の鐘が鳴る。
国を挙げての聖騎士の結婚式が、もうすぐ始まるのだ。
祭壇の傍らには、もうすでに黒の聖騎士団の制服に身を包んだテオドールが、俺を待ってくれていることだろう。
「そうですね、お姉様。俺はいま、とても幸せです……!」
――これは俺が、俺を捨てた男の息子を育てて、最後に真実の愛を見つけた物語。
(了)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これでこの物語は完結です。長い間いままでありがとうございました!
「面白かった」「番外編も読みたい」と思っていただけましたら、ぜひお気に入り登録、エールで応援、ぜひぜひお願いします!
感想欄も開けておりますので、励ましの感想などお寄せいただけると大変ありがたいです!
皆様の応援が、次回更新の糧となります!!
読んでいただいた皆様へ愛と感謝を込めて……。
テオドールが俺の首筋に顔をうずめてくる。
「テオ……」
触れ合う肌が、なんだかくすぐったい。
俺たちは裸のままシーツにくるまっていた。
すっぽりとテオドールに抱きしめられた俺は、まだ二人で溶け合った余韻が身体に残っているようだった。
テオドールのいたずらな指が、俺のあちこちに触れてくる。
「ひゃっ、あ、ダメっ……、テオっ……」
「叔父様……、淫紋は、消えましたよ」
テオドールは、俺に甘い声でささやきかけた。
「ほんとにっ!?」
俺は寝台からがばりと起き上がって、下腹部を確かめる。
――ない!
あの忌まわしき淫紋は、俺の身体からきれいさっぱり消えてなくなっていた。
「よかった! ありがとうテオドール」
俺はテオドールに抱きついた。
「お礼を言うのはこちらです。ジュール叔父様、ありがとうございました。俺はついに叔父様の真実の愛を手にすることができたのですね。
とても甘美で、素晴らしい時間でした。叔父様の可愛らしい姿は、一生忘れません」
テオドールは再び俺の背中に妖しく指を這わせる。
「っ……」
「ところで叔父様、淫紋がなくなったからといって、俺はもうお役御免、というわけではないでしょうね?」
「え?」
テオドールは身体を離すと、俺の鼻先に自分の鼻先をくっつけてきた。
「叔父様、もしかして、淫紋がなくなったからもう定期的にセックスしなくていいんだ、なんて、今考えていないでしょうね?」
「……うっ」
――それは、確かに……、ちょっとは、考えていたけど……!
「結婚前に先に取り決めておきましょうか? 結婚後は、一日何回セックスするのか」
「……へ?」
俺はごくりと唾を飲み込んだ。
「何回って!? それってまさか、毎日するってこと?」
「ええ、毎日」
にっこりとほほ笑むテオドール。
――テオドールは本気だ!!
「そ、そのことについては、あとで、話し合おう! おいおい……、ゆっくりと……」
しどろもどろになる俺を、テオドールはゆっくりと寝台に横たえた。
「そうですね。叔父様にはわかっておいていただかなければいけないことが、とてもたくさんありそうです。
でも、その前に……、淫紋が解けた叔父様ともう一度触れ合いたいのですが、いかがですか?」
「……っ、え、あ、待って、ちょっと今は、まだ、まっ……、むっ、うあ、あ……!」
あっという間に唇を塞がれて、抵抗しようともがいた俺の両手は、テオドールによって拘束されてしまった……。
――俺はこの時初めて、テオドールと結婚するということは、いろいろと覚悟が必要だということを悟ったのだった……。
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「ジュール、とっても素敵、似合ってるわ!」
支度を整えた俺の部屋に入ってきたのは、シャンタルお姉様だった。
「お姉様、ありがとうございます」
俺は少し照れくさかったが、素直に礼を言った。
「それにしても、聖騎士団の制服の色違いとはね。シャルロット殿下の強いこだわりを感じるわ……」
お姉様は俺の光沢のある白い上着に触れる。
そう、俺の結婚式の衣装は、なぜかシャルロット王女によって『黒の聖騎士団服~純白version~』と最初から決められていた……。
「聖教会での結婚式だなんて、王族みたいで本当に素敵! いいわねえ、私もテオドールのつてで、聖教会でお式を挙げさせてもらおうかしら」
お姉様の言葉に、俺の頭の中に疑問符が浮かぶ。
「ところでお姉様、デマル男爵とはいったいどうなっているんです? 婚約してからずいぶん経っているのに、お姉様は独身のままだし……」
俺の言葉に、今度はシャンタルが目を大きく見開いた。
「まあ、あなたったら、本当に何も知らなかったの? そういえば、あの頃、ずっとエディマにいたんですものね……。
デマル男爵とはとっくの昔に婚約は解消したのよ」
「そう、だったんですか……」
もしかして聞いてはいけないことだったのかと、俺の声は自然と小さくなった。
だが……、
「そんな顏しないで! お姉様は今とっても幸せだから。やっぱり、人生お金なんかじゃないわ。愛よ、愛!
愛に生きるお姉様は、今セルジュと婚約しているのよ! だから安心して。あなたたちの結婚式が済んだら、次は私たちの結婚式よ!」
「はあああっ!!??」
俺は驚きのあまり、吸っ頓狂な声をあげた。
――シャンタルお姉様が、なんとあの、セルジュと!?
セルジュはちゃっかり、お姉様への片想いを実らせていたというのか!?
シャンタルお姉様とセルジュ、想像すらしていなかった二人だが、よく考えてみるとお似合いと言えなくもない……。
「ジュール、良かったわね。お姉様には最初からわかっていたわよ。あなたたち二人はきっといつか、こうして結ばれるだろうって。
そう、初めてあなたをテオドールに引き合わせたその日からね!」
シャンタルが俺にウィンクする。
「でも、でも……、お姉様、お姉様は俺のテオドールへの気持を知っていたのに、どうして俺を『ナイム』と引き合わせたんです?
あのせいで俺とテオドールの情緒は、もうめちゃくちゃになってしまったんですよっ!」
俺の恨み節に、シャンタルはふふんと鼻を鳴らした。
「だって、ジュール、仕方がなかったのよ! テオドールったらお姉様のアドバイスをちっとも聞かないんですもの。意地悪の一つもしたくなっちゃうわよ!
テオドールには、ジュールがエディマから戻ってきたらすぐに、ジュールがどんなに抵抗してもさっさと自分のものにしちゃいなさいって、お姉様は口を酸っぱくして言ってたの。それなのに、肝心な時にあのヘタレ男はっ!!」
何かを思い出したのか、シャンタルは悔し気に手にしていたハンカチをぎゅっと握りしめた。
「お、お姉様っ……!?」
「テオドールったら、恋愛経験豊富なお姉様の言うことには全然耳を貸さずに、あのどっからどうみても耳年増な乙女の王女様のアドバイスにばっかりしたがっちゃって!!
『ナイム』だって、王女様の提案だったのよ。時を操る光魔法だか何だか知らないけど、わざわざあの頃のマリユスと同年代に設定したところにも何か含みを感じるわ。……まったく、あのプリンセスの考えることはあまりにも……」
途中で言い過ぎだと気づいたのか、シャンタルははっとその手を口に当てた。
「まあ、そういうわけだけれども、ジュール! すべての出来事は、今、この瞬間に繋がっていたのよ」
シャンタルの満面の笑みに、俺もついつられてほほ笑んだ。
「何一つ欠けていても、今日のこの幸せな日は来なかった、そう思えば、今までのいろいろな過去全部が大切な出来事だったって、そうは思わない?」
――そうだ、今までの日々は、全部このテオドールとの未来に繋がっていたのだとしたら……。
聖教会の鐘が鳴る。
国を挙げての聖騎士の結婚式が、もうすぐ始まるのだ。
祭壇の傍らには、もうすでに黒の聖騎士団の制服に身を包んだテオドールが、俺を待ってくれていることだろう。
「そうですね、お姉様。俺はいま、とても幸せです……!」
――これは俺が、俺を捨てた男の息子を育てて、最後に真実の愛を見つけた物語。
(了)
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