【完結】「彼」との秘め事ーSkeletons in the Closetー

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第13話

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*****


――現在――

「んっ、はあっ……」
 舌が絡まりあう。
「男は嫌って言ったわりに、こんなに感じてんの、どう説明する?」
 セオドアは完全に、欲情した雄の表情になっていた。
「セオドア君……、お願い……、こんなこと、もうやめようよ」
 僕を見下ろすセオドアに、哀願する。
 だが、セオドアに良心など、もう残っているはずもなく……。
 情けない僕をみて、ただセオドアは唇をゆがめるだけだった。
「なあ、ベル……。そういう顔って、男をますますその気にさせるんだぜ? ローランドに襲われたくなかったらよく覚えておくんだな」
「あっ……」
 セオドアは僕の首筋に唇を這わせると、バスローブのすそから、手を差し入れてきた。
「ちょっ……、やっ……」
 何もつけていない下半身を、セオドアの手が這いまわる。
 背筋を悪寒が走った。
「嫌だっ」
 僕は必死で、セオドアの手から逃れようとする。
「っと、暴れんなよ」
 セオドアは余裕の表情で笑うと、バスローブの帯を抜き、僕の両手を後ろ手に縛った。

 ――これじゃ、まるで……。
 レイプだ。

 セオドアは僕の腹の上に乗った。

「あいつらってほんと馬鹿だよなー。
こんなうまいもんがすぐそばにあんのに、眺めて匂いかいでるだけで喜んでんだから世話ないぜ」
 そう言って、一気にバスローブを剥ぎ取る。
「……っ!」
 明るい照明に照らされ、僕の肌が羞恥で、朱に染まる。
「俺はさ、好きなものから、一番先に食べる主義なんだわ。だってそうしないと、楽しみに残しておいたとっておきのご馳走が、最後の最後で誰かに盗られちゃうかもしれないだろ?」
 裸の胸を、セオドアの手が無遠慮に這い回る。
「お願い……、もう……やめて……」
 
「だからさ、ベル……」
 セオドアはうっとりとした表情で僕を見る。
「俺が、お前の初めての男になってやるよ。今、ここで」
 セオドアは、僕を乱暴にうつぶせにした。

――男同士で何をされるか。知らないわけじゃない。
でもそんなことが本当に、自分の身に起こるなんて、誰が予想できただろう。
 ましてや相手は、お互いに距離をおいていたはずの、苦手意識を持つ人間……。
「大丈夫、つらいのは最初だけ……。じきに慣れるさ。
何度も、ヤるうちにな?」
 セオドアの言葉は、僕を絶望させるのに充分だった。
「やっ、あああああ――」

 快感なんて、ほど遠い。
 痛みと屈辱しかない一方的な、行為。

 だが僕は、この日……、
 確かにセオドア・グリフィンの手に、堕ちたのだった。





「明日は休んだほうがいいんじゃないか?」

 何度も断続的に行われた激しい行為のあと、さすがに気がとがめたのか、セオドアはわざわざ馬車を出し、僕を住んでいるテラスハウスまで送り届けた。
 玄関の前まで来ると、セオドアは悪びれず、僕にこう言ったのだった。

 僕はセオドアを睨みつける。体がバラバラになるかと思うくらい、あちこちがきしんで痛かった。
「おっと、そんな怖い顔すんなよ。お前だって、最後はそれなりに感じてただろ?」
 そう言うと、頬を寄せてくる。
 僕はセオドアの身体を押し戻した。
「触るな!」
「おいおい、俺にそんな態度とっていいのか? ローランドに今日のこと、全部バラしてほしいのかよ?」
 完全なる脅迫に、僕の身体が硬直する。
「ローランドはどうするかな? 取り澄ました顔のあいつが、怒りで震えるところを見てみたいぜ。大事に大事にしてきた可愛いお前が、他の男に食われてたなんて知ったら……」
「やめろよ……。このことは……」
 セオドアはその形のいい唇を、ゆがめる。
「ああ、わかってる。このことは、お前と俺だけの秘密だ」
 セオドアの瞳が、暗く光る。
「……」
「じゃあ、約束に、キスしてくれよ。いつもローランドにするみたいに、お前から……」
「……っ」
 コイツは、どこまで僕をコケにしたら気が済むのだろう。

 だが、この関係では、確実に僕が弱者。セオドアは高位貴族でこの町の領主の息子。そして僕は、末端貴族の私生児……。
 いつの世も弱い者は、力の強い者に従う定めにある。

 僕は身をかがめるセオドアに、背伸びして近づく。
 セオドアは目も閉じずに、僕をじっとあの瞳で見ている。
「……なあ、言ってくれよ。お前が、ローランドたちにいつも言うみたいに……」
 セオドアの言う意味が、すぐには飲み込めなかった。

 でも、セオドアが僕を見るその瞳に、なにか言葉では言い表せない不思議な色合いが含まれているのを、僕は見つけた。
 そして、心の中で舌を出す。

「……好きだよ。セオドア君」
 心にもないことを、心を込めて言ってやる。

 ――ローランドたちに、いつもしているように。

 ――唇は触れ合った時、ほんのかすかに、セオドアが震えたのを、僕は見逃さなかった。


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