単なるセフレだったはずの王宮騎士団のイケメンエースが、なぜか身分違いの俺に激しく執着しはじめて、周囲をドン引きさせているって本当ですか!?

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27.王都の劇場

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「へえーっ、じゃあ昨日は、イーサンのお尻は死守できたんだね! それは本当によかったよ!
で、あのムカつくシヴァのやつ、また性懲りもせずイーサンのところに来るつもりなの?」

「しっ、声が大きいぞ、ラム!」

 ビロード張りの劇場の椅子に座った俺とラム。舞台からはかなり近い特等席、いわゆる「関係者席」である。

 というのももちろん、ラムの恋人であるアリャンが、今からは始まる舞台の主役であるからであり……。




 俺とラムは、今夜二人で、アリャンの主演舞台の観劇に、王都に繰り出していた。

 この劇場は、床にはふかふかの赤いじゅうたん、高い天井にシャンデリアが吊るされ、星の光を模した小さな水晶が散りばめられたデザインが夜空を思わせる、王都でも一番格式が高い劇場だ。
 もちろん、ラムの招待券がなければ、俺が一生訪れることもなかった場所だろう。


「だって、僕は本当にシヴァのことムカついてるんだよ!
イーサンに好かれてることをいいことに、やりたい放題、したい放題! イーサンの身体を自由にして……!!」

 なにをそんなに興奮しているのか、隣に座るラムは周りの視線もおかないましにまくし立てる。

「ラム、ちょっと声を小さくしろってば!」


 俺は一張羅である紺色の上着とズボンがしわにならないように、もう一度注意深くふかふかの座席に座りなおした。

 ただでさえラムは特別な織り方をした上質なローブをまとった上級白魔導士であり、しかもそのかわいらしい容姿で周りの注目を浴びているのだ。これ以上目立つのは得策ではない。話の内容が漏れて、シヴァが俺みたいな平民を相手にしているなんて知られたら、シヴァの沽券にかかわってしまう!



「で、どうなの、イーサンっ!? シヴァはまた来るの、来ないのっ!?」

 まるで悪い男と付き合う妹を詰問する兄のように、ラムが俺に迫る。


「それがさ、よくわからないんだよね……」

 俺は顔を曇らせる。

「それってどういうこと!?」


「帰る直前まで、シヴァはなんだかすごく機嫌がよかったんだよね。
ベッドでも……、その、すごく、気持ちよくしてくれたし……」

「へー、ふーん」

 ラムが不満げに低くうなる。


「でもさ、帰り際に、あずかってた花束をシヴァに渡したら、びっくりするくらい機嫌が悪くなっちゃって!
もしかして、俺が気づかなかっただけでしおれちゃってたのかな?
ちゃんとたっぷりの水につけてたから、大丈夫だったはずなのに!!」

「花束? 返した……?
もしかして、シヴァのやつ、イーサンのところに来るのに、花束抱えてきたの?」

 ラムが目を丸くする。


「うん、すごく綺麗で豪華なファニール薔薇だったよ。きっと、王宮でマヤ王女からもらったものだと思うんだ。
だから、俺の扱いが悪かったせいで、状態が悪くなっちゃってたみたいで、シヴァが怒っちゃって……」

「……花束を、返した? イーサンがっ!
ぷぷっ、あはっ、あははははははっ!!」

 突然大声で笑いだすので、俺は思わずラムの口を手でふさいだ。


「しっ! 目立つだろっ!?」

「だ、だって、あはっ、おかしっ! シヴァのやつ、薔薇の、ファニール薔薇の、花束をね!
ははっ、これって最高だよ、イーサン!」

「なんだよ、何がそんなにおかしいんだよ!」

「やっぱりイーサンは最高だよ! 僕が見込んだ男のことだけはある!
あの振られ男、確かにもうイーサンのところには来られないかもね」

  ラムが俺にウィンクする。


「もう、来ない……?」


 ラムの言葉に、俺の心はズーンと重く沈み込んだ。

 そうだよな、ベッドの上じゃご奉仕するどころか、ただ寝っ転がってされるがまま、あまつには預かった大事な花束まで駄目にして……!

 そんなやつ、シヴァがもう二度と相手をしてくれるはず……。


「でもよかったじゃない。あんなウザい男と縁が切れてさ!
僕は心配してたんだ。これ以上深入りしたら、イーサンがもっと傷つくことになるんじゃないかって。
ほら、結果オーライってやつだよ! イーサンのきれいな身体はアイツに舐め回されちゃったけど、大事なバックバージンは守れたわけだし。
だから今度は、僕があの張り型の使い方を教えてあげるからね!
こわくないよ。僕がちゃんとイーサンに気持ちよくなるやり方を伝授してあげるから!!」

 隣に座るラムが、ぎゅっと俺の手を握ってきた。




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