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28.マヤ王女とシヴァ
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そろそろ開演が近いのか、客席全体が期待感でざわめいている。
俺たちの座っている特等席の周辺では、美しく着飾った貴族たちが肩を寄せ合い、扇をはためかせ、噂話に花を咲かせていた。
二階席や三階席には、王都の商人や、王宮の使用人たちの姿もある。王宮で何度か見かけたことのある顔もちらほら。
その時、観客たちのざわめきが一層大きくなった。
「あれ? 今日は王族のお出ましがあるらしいよ」
ラムが舞台に向かって中央の最上段に設けられた特別な観覧席を指し示した。
豪奢さと洗練された雰囲気が漂う個室の観覧席は、王族のみが使用する特別な場所。
いつもは紫色の重厚なカーテンで閉ざされているその場所が、観客たちが見守る中、舞台の案内係によってうやうやしく開かれた。
「あっ、マヤ王女じゃないか! しかも、隣にいるのは……シヴァ!?」
隣のラムが素っ頓狂な声をあげる。
そして俺はただ……、あっけにとられていた。
マヤ王女は、淡いシルバーとブルーのグラデーションが美しい光沢のあるドレスを身にまとって、優雅な微笑みを浮かべている。アクセサリーは真珠とプラチナのティアラと、そろいの耳飾り。
その控えめな華やかさが、ますます王女の高貴さを引き立てていた。
そしてそのマヤ王女をエスコートするのは、私服姿のシヴァ。
藍色を基調としたベルベッドの上着。襟元と袖口に控えめな金糸の刺繍が施され、夜空を連想させる神秘的な光沢を放っている。
アイボリーの手袋をはめ、優雅な所作でマヤ王女に手を差し伸べている。
「後ろにいるのって、あの新しい護衛騎士になってっていうヤツ?
ふふっ、王女のエスコート役をシヴァに奪われて、露骨に嫌な顔してるね」
ラムの指摘通り、二人の背後で不満そうに立っているのは、新しくマヤ王女の護衛騎士に任命されたサンカル・ダヤルだった。
黒い騎士服を着たその金髪の色男は、口をへの字にして目の前のシヴァをにらみつけている。
二人そろっての登場に、かねてよりマヤ王女とシヴァの仲について噂していた貴族たちは、一斉に色めき立った。
「まあ、王女は婚約されたばかりですのに、シヴァ様とあんなに親しげに!」
「護衛の任務を解かれたというのに、相変わらず仲がよさそうですわ。やはり、お二人は……」
「隣国の王子のお耳に入らないとよいのですがね」
「まだ結婚式の日取りも決まらないというのは、もしかして……」
「へえ、見せつけてくれるね。シヴァのやつ、やるじゃん!
もしかして、これってイーサンのおかげなんじゃない?」
ラムがいたずらっぽい表情で俺の脇腹をつついた。
俺たちの座っている特等席の周辺では、美しく着飾った貴族たちが肩を寄せ合い、扇をはためかせ、噂話に花を咲かせていた。
二階席や三階席には、王都の商人や、王宮の使用人たちの姿もある。王宮で何度か見かけたことのある顔もちらほら。
その時、観客たちのざわめきが一層大きくなった。
「あれ? 今日は王族のお出ましがあるらしいよ」
ラムが舞台に向かって中央の最上段に設けられた特別な観覧席を指し示した。
豪奢さと洗練された雰囲気が漂う個室の観覧席は、王族のみが使用する特別な場所。
いつもは紫色の重厚なカーテンで閉ざされているその場所が、観客たちが見守る中、舞台の案内係によってうやうやしく開かれた。
「あっ、マヤ王女じゃないか! しかも、隣にいるのは……シヴァ!?」
隣のラムが素っ頓狂な声をあげる。
そして俺はただ……、あっけにとられていた。
マヤ王女は、淡いシルバーとブルーのグラデーションが美しい光沢のあるドレスを身にまとって、優雅な微笑みを浮かべている。アクセサリーは真珠とプラチナのティアラと、そろいの耳飾り。
その控えめな華やかさが、ますます王女の高貴さを引き立てていた。
そしてそのマヤ王女をエスコートするのは、私服姿のシヴァ。
藍色を基調としたベルベッドの上着。襟元と袖口に控えめな金糸の刺繍が施され、夜空を連想させる神秘的な光沢を放っている。
アイボリーの手袋をはめ、優雅な所作でマヤ王女に手を差し伸べている。
「後ろにいるのって、あの新しい護衛騎士になってっていうヤツ?
ふふっ、王女のエスコート役をシヴァに奪われて、露骨に嫌な顔してるね」
ラムの指摘通り、二人の背後で不満そうに立っているのは、新しくマヤ王女の護衛騎士に任命されたサンカル・ダヤルだった。
黒い騎士服を着たその金髪の色男は、口をへの字にして目の前のシヴァをにらみつけている。
二人そろっての登場に、かねてよりマヤ王女とシヴァの仲について噂していた貴族たちは、一斉に色めき立った。
「まあ、王女は婚約されたばかりですのに、シヴァ様とあんなに親しげに!」
「護衛の任務を解かれたというのに、相変わらず仲がよさそうですわ。やはり、お二人は……」
「隣国の王子のお耳に入らないとよいのですがね」
「まだ結婚式の日取りも決まらないというのは、もしかして……」
「へえ、見せつけてくれるね。シヴァのやつ、やるじゃん!
もしかして、これってイーサンのおかげなんじゃない?」
ラムがいたずらっぽい表情で俺の脇腹をつついた。
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