単なるセフレだったはずの王宮騎士団のイケメンエースが、なぜか身分違いの俺に激しく執着しはじめて、周囲をドン引きさせているって本当ですか!?

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57.ダンスフロアにて

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「シヴァ……」

 王宮の舞踏会で、憧れのシヴァと踊る俺。

 まるで現実と思えなくて、どこかフワフワした気持ちになる。


 あの時、王宮で偶然シヴァを見つけて、俺の嘘で騙すみたいにして始まったこの関係。

 限りある関係だとわかっていても、こんなシヴァの煌めくような美しさと、俺に対する心からのやさしさに、俺はどこかでシヴァとの未来を期待してしまう……。

 でも、俺の嘘をシヴァが知ってしまったら? 
 マヤ王女が、シヴァを取り戻すようなことになったら……?


 偽りで成り立ったこの関係は、まるで砂上の楼閣だ。

 ちょっとしたことで、あっという間にもろく崩れ去ってしまうに違いない……。



 美しい音楽と共に、俺を優しくリードして踊るシヴァだったが、突然後ろから強い衝撃を受けた。

「……っ!」

「あっ、ごめん、ごめーん! 人がいっぱいだからさ、ついぶつかっちゃったー!」


 ぺろりと舌をだすラム。

 目がすごく怖い!!


「おいっ、ラム! やめろ。集中しろ!」

 アリャンが、シヴァに絡むラムを大胆なステップで引き戻す。


「ちょっと、イーサン! 後で僕とも踊ってよ」

 そうはさせまいと、踊りながらぐるんとアリャンを向こう側に追いやると、ラムは俺に声をかけてくる。


「悪いが、イーサンのパートナーは俺なのでね」

 ラムに近づいた俺を、今度はシヴァがぐるっと立ち位置かえて遠ざける。


「いい気になるなよ、シヴァ! イーサン、目を覚まして!
君は騙されているんだ!!」

「ラム! いい加減にしろよ! 今日のお前はちょっとおかしいぞ!」

「うるさいっ、アリャンになんて僕の気持ちがわかってたまるか!」
 
 自分を引き寄せるアリャンに、悪態をつくラム。


「ラム、あのさ、俺……っ」

 思わずラムに声をかける俺だったが、


「邪魔して悪いな、イーサン。騎士様も申し訳ない。俺から謝っておくよ。ほら、ラム、行くぞ!」

 アリャンは俺にウィンクすると、ラムを強く引っ張り、大股のステップでホールの向こう側へ追いやっていった。


「あの男……、気に入らないな」

 ぐっと俺を引き寄せ、身体を密着させると、シヴァはつぶやいた。


「ラムのこと?」

「どちらもだ!!」

「……」


「イーサンっ、イーサンっ!!」

 そして俺を呼ぶ大きな声に目をやると、妻二人に囲まれたロハンが俺に大きく手を振っていた。

 どうやら夫人たちは、どちらが先にロハンと踊るかで揉めに揉めているようだ。壁際でダンスを見ている人たちのそばで、ロハンはもみくちゃにされている。


「ロハン様……」

「イーサンっ、後で必ず私が迎えにいくからねっ! これから君と二人で……」

「なにが、迎えに行く、よっ! さっきからイーサンイーサンうるさいですわっ!!」

「まだお分かりにならないのですかっ? これは相当きついお灸が必要ですわね! 旦那様、覚悟はできていますことっ!?」

「ちょっと、ちょっと待ちなさい、違うんだ、これはっ! 聞いてくれ、イーサンは、私の……、
こらっ、やめなさい二人ともっ……、ギャアア!」


 そんなロハンたちのすぐ近くでは、今日も全くやる気の感じられない護衛騎士・サンカルが美しいご婦人たちに囲まれて上機嫌の様子だった。

 護衛騎士の制服に身を包んでこそいれど、王女とアミュレットを警護することなど、初めから頭にないようだ。



「……全く、どいつも、こいつも。
イーサン、見るんじゃない。あいつらを相手にしては駄目だ」

 シヴァは舌打ちすると、踊りながら俺をフロアの反対側へ連れて行った。



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