画面の向こう側

虎雄

文字の大きさ
2 / 5

新たな出会い

しおりを挟む
 あれは俺が高校3年生の冬。大学受験を終えて、残り少ない高校生活を過ごしていたときだった。変わり映えのしない教室に見慣れすぎてもはや家族といっても過言ではないほど身近な存在となったクラスメイト達が、相も変わらず騒がしいやつらばかりだった。
 部活を引退した生徒たちの頭は、マリモのように毛が爆発していた。中には髪型をいじりすぎて、生徒指導の教師に再び丸坊主にされている生徒もいた。バカなやつだ。
 そんな風にどこか達観していた俺は、何にたいしても興味が薄くなっていた。めんどうくさいとかかったるいとか、別に疲れるようなこともなにもしていないのに、何故か体が疲れきっていた。
 家に帰ってもやることはない。漫画を読む、テレビを見る。親たちが寝たらアダルト動画をみて、一時の賢者の境地を味わうことくらいしかやることがなかったのだ。
 今になって思えば、ほんとにバカだった。
 とはいえ、高校生くらいの年齢ではそれくらい無駄なことをして過ごすのが、永遠とも思える人生を謳歌するスタート地点ではないかと思っている。
 しかし、俺はあまりにも暇だった。暇すぎたのだ。やることがない、だが興味を持つものもない。どうしようもなく退屈でやることがなく、もはや苦痛を感じるのを通り越したようだ。
 そんなときだった。何の気なしにSNSを開いたとき、友人の呟きに目が止まったのだ。
『~さんの配信がはじまりました。』
 一瞬配信とはなんぞや?と頭にはてなマークが浮かんだ。
 いわゆるネット配信の事だった訳なんだが、もちろん知ってはいた。だが興味がなかった。ネットでラジオのようなことをするものだというのは知ってはいたものの、どこか遠い世界のように感じていた俺は、それを見過ごしたまま生活していた。
 その呟きを見た俺は相当暇だったのであろう。友人の呟きにあるリンクを開き、友人の配信ページを開いた。
 そのときだった。俺は頭が痺れたような感覚になった。
「なんだこれは…?あいつ、こんなハキハキしゃべってるところ聞いたことないぞ?」
 成績でも、友人の数でも、バイトの稼ぎでも負けたことはない人間の配信ページには、沢山のリスナーがいたのだった。
 その時すべてを理解した。リスナーたちは彼の声や言葉、話す内容を危機に来ているのだ。普段の彼を知っている俺からしたら考えられないような事だった。
 なぜ?どうして?がひたすら頭をよぎって仕方なかった。
 別に負けたわけでもない。そもそも勝ち負けではない。それは理解していた。だが、何とも言えない敗北感を覚えてしまった。悔しい。負けたくない。そんな風に思った。
 そして俺は友人の配信が終わったあと、すぐさま配信ツールをダウンロードし、配信を始めた。
『絶対負けない。勝つ。勝ってやる。』
そう胸に刻み込み、配信を始めた。
「あっ、いらっしゃい。ゆっくりしていってね。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

婚約破棄、別れた二人の結末

四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。 その婚約者であったアソンダソン。 婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

処理中です...