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第一章 アルミュール男爵家

第四話 肉体が怪物になりました

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 最後っていうと……【天禀合成体】のことかな?

「一番下の項目にありますー、肉体の項目ですねー。これがあなたを怪物にしているんですー!」

「疑問なんだけど、一つにまとめる意味ある? 使いにくくないかな?」

「九十九人分ですよー? バラバラにする方が使いづらいと思いますよー?」

 そうかな? 使わないものは死蔵で良くないか?

「神々が与えたものを使わないなんて……狂信者に見つかったら反抗的だと言われますよー。それに今回はー、天禀だけでなくー、魔力・生命力・適性属性も九十九人分吸収していますしー、二体の冥界羅漢や大小の宝珠にー、余剰分のリソースがありますー。小分けにする方が面倒なんですー」

「……他の人は結晶というものはなかったの?」

「ありましたけどー、それは個人の努力ですのでー、追加されることはありませんー。代わりにリソースに変化しましたー」

「えっとー……内訳を教えてもらっても? それに何か人数が合わないような……?」

「まぁーいいでしょー。人数についてはのちほど説明しますー」

 説明によると――。

 【九十九神】=  十二個
 【神使くん】=  十九個
 【適性属性】=   一個
 【努力結晶】= 二十五個
 【合成体】 = 四十二個

 合計九十九個の天禀に、九十九人分の属性や羅漢の能力に、余剰分のリソースで強化した能力が追加されているようだ。

「というか……肉体が……」

「そうでしょー! すごいでしょー! 天禀でできた体と言っても過言ではないですー!」

「……その言葉……そっくりそのままお返しするよ?」

「はいー? 計算ができないのですかー?」

「はいー? 【叡智】を持っているんじゃないんですかー?」

「真似しないでくださいー!」

「まぁまぁ、怒らないで。理由を聞けば納得すると思うからさ!」

「……いいでしょー。聞きましょー!」

「俺は人間の肉体に大量の天禀を入れられているけど、神使くんは存在自体が天禀じゃん。ということは、死ぬこともないんじゃない?」

「――そんな馬鹿な……」

「俺が死ねば解放されると思うよ」

「じゃあ……一生解放されることがない……ということですか……? 神々が言っていた無期限って……こういうこと……ですかー……?」

 大袈裟だなー。人間なんだから寿命があるって。

「百年くらいでしょ? あっという間だよ?」

「……せん」

「ん? なんて? 聞こえないんだけど?」

「……死にませんと言いましたーーー!」

 うぉっ! どうした!?

「寿命がもう少し長いのか。さすが異世界!」

「あなただけーっ! あなたを殺せるのは神々だけーっ! そういう怪物になったのーっ!」

 興奮しているところ悪いけど、そろそろ具体的なことを聞きたい。

「どういうところが怪物なのかな?」

「ふぅー……ふぅー……。そうですねー……。話を進めましょー……」

「お願いします」

「全部言うと切りがないのでー、気をつけてもらいたいところだけ説明しますー。まずはー、肉体に付与された能力はパッシブとアクティブの二つに分けられますー。パッシブは意識しなくても常時発動していますがー、アクティブは意識しての任意発動になりますー。問題はパッシブの方ですー」

 呼吸のようなものかな?
 呼吸は無意識でやってるもんなー。

「肉体に付与されている天禀も【九十九神】のように統合されていますー」

 【頭脳】= 虚空蔵:六個+羅漢三個
        常時:理解 瞬間記憶

 【身体】= 不死身:五個
        常時:物理無効 魔法無効
           異常無効 超回復
           豪運
       金剛手:四個
        常時:金剛力  身体制御
           魔力制御 魔力回復
       神足通:四個
       観念動:二個+羅漢一個

 【視覚】= 天道眼:四個(右目)
        常時:洞察眼
       外道眼:四個(左目)
       魔導眼:六個+羅漢二個

 【知覚】= 白毫眼:五個(眉間)
        常時:第六感

 【嗅覚】= 超嗅覚 ⇒ 常時
 【聴覚】= 順風耳 ⇒ 常時

 【強化】= 聴覚:絶対音感 ⇒ 常時
       味覚:絶対味覚 ⇒ 常時
       触覚:能工巧匠 ⇒ 常時

「――というような構成になっているわけですがー、特に注意が必要なのが【身体】と【視覚】の扱いですー。他は便利な能力くらいで済みますがー、問題の部位の天禀は洒落にならないのですー」

「はーい! 目が四つあるんだけどー?」

「これはー、封印措置ですー。視覚の三つの魔眼のうちー、【天道眼】は右目に固定されておりー、【外道眼】は左目に固定されていますー」

「じゃあ違うものがあるのか。オッドアイってやつ?」

「能力によって虹彩の色が変化するのでー、固定色ではないオッドアイですー。ただー、右目が白目でー、左目が黒目という部分に変更はありませんよ
ー」

「黒目……」

「もう一つの【魔導眼】というものが封印対象なんですー。本来は魔力不要の天禀だったのですがー、【九十九神】や【神使くん】とも統合できなかったのでー、条件発動型の魔眼にしたわけですー」

 無視かよ……。黒目という事実に衝撃を受けてるのに……。

「条件は両目同時開眼の上、任意で起動ー。対象視認で能力発動になるわけですよー。こちらはー、冥界羅漢の能力も追加されているというのも理由の一つですねー」

「色は……?」

「うーん……白目の部分も含めて金色の炎が揺らめいている状態にー、能力ごとに決められた炎色が追加されますー。他の魔眼と違ってー、同時使用が可能ですのでー、複数の色がきらめくこともあるかとー」

「何で金色?」

「天禀が金系統属性の魔法が独立したものですからねー。たとえばー【転移】や【収納】ですねー。収納したい物を見ると収納されるといった感じで発動しますー」

「魔法で使えるならハズレじゃ……?」

「本来は天禀なんですー。魔法系天禀を除けば魔力を消費しないんですよー。つまりー、魔法を封じられた空間でも使用できるという利点があるんですー。それにー、属性があるから希望の魔法を全て使えるとは限りませんしねー」

「でもー……制限付きなんでしょ? ランクダウン?」

「そうなんですよねー。というのもー、魔眼は魔力を必要としない代わりに回数限界があるんですー。強力な能力であればあるほど回数は少ないですねー。しかも最悪失明しますしー、治療しても天禀や能力は戻らないのですー」

「はぁーー!? 失明ーー!?」

「天禀を減らそうとー、神々の眷属が考えた苦肉の策ですー。私の先輩に当たりますねー」

 いやいやいや。何その横暴。
 勝手に格下げに使用制限しておいて、終いには失明って……。

「まぁーよかったじゃないですかー。無駄なことをしてくれてー」

「良くないしっ! 失明って何!? 使わないと反抗的って言われるんでしょ!? 魔人族は魔眼持ってるんでしょ!?」

「全員が持っているわけではないですよー。優秀な人が持っているんですー。あとー、あなたは失明しませんよー。あの方たちですら気づいていないと思いますがー、【不死身】の効果で損傷を負うことはありませんよー」

「――はっ?」

「だからー、使用時の反動が無効になりー、損傷という異常が無効になりますのでー、魔眼の使用回数が無限になったのですー!」

「それって……注意しなくてよかったの……?」

「私はあなたの弟のようなものですー。兄の体が完成した後にー、『それダメだよー?』って言っても無意味ですー。あなたは眷属の横暴に感謝するといいですよー。神々はー、私を分裂させて能力を分け与えようとしていましたからー。結果、【神使くん】は私だけになりましたけどねー!」

「眷属様の横暴に感謝をーー!」

「そうですー! その調子ですー!」

「眷属様、ありがとうございまーす!」

「今頃怒られていることでしょー! さて四つ目の眼ですがー、視覚ではなく知覚ですー。第三の目というものですのでー、正確に言えば目ではないですねー。こちらは【第六感】以外はアクティブなのでー、あんまり気にしなくてもいいんですー。まぁ使うことになると思うのでー、頭の片隅に置いておいてくださいー」

「うーん……じゃあ左目は開けてもいいんじゃないかな?」

「違いますよー! 開けるなら右目ですー! 左目は攻撃系の魔眼を固めているしー、特定の魔眼が固定されていないので危険なんですよー! 反対にパッシブの【洞察眼】はー、鑑定や看破などの情報魔眼ですからー、基本的に他人に対する害はないですー!」

「じゃあ開けても大丈夫ってこと?」

 そろそろ目を開けたいんだけど?

「まぁ待ってくださいよー。慣れないと情報が一気に流入してきて辛いですよー。それよりもー、身体のことですー。【不死身】のことはいいですねー? 神々が使う神力以外は効果がなくてー、疲労や病気からもすぐに回復しー、神々が賭けに敗北るほどの幸運を持っているという能力ですー」

「……」

「問題は【金剛手】ですー。特に【金剛力】ですねー。超人並みの怪力を誇りー、体は金剛石並みの防御力を有するのでー、戦闘職垂涎の天禀ですー」

「子どもの筋力なんてたかが知れてるでしょ」

「と、思うじゃないですかー? 魂は冥界に行きましたがー、人間を吸収したのですー。結晶を例にすれば分かると思いますがー、元の人間の能力が反映されるのですー」

「……持ち主は?」

「マッチョな軍人さんですー!」

「じゃあ……軍人さん並みの怪力が出せるってこと?」

 三歳児が軍人さん並みに力持ちでも十分引くけどね。

「違いますー。話聞いてましたー? 軍人さんが超人的な怪力を持つんですー。ドラゴンと取っ組み合いができると思いますよー? 現時点でー」

「……ずっと? 普段から……ずっと?」

「パッシブですからねー。一つだけ希望があるとしたらー、【身体制御】があるのでー、手加減を覚えることですかねー」

「だから動いちゃいけないのか……」

「はいー。さすがに呼吸で物が吹っ飛ぶとは言いませんがー、全身凶器の状態ですのでー、可能な限りゆっくり動いてくださいー」

 チートがあるのに生活しづらいとか……本末転倒じゃないか……!

「それではー、世界征服の準備でもしますかー!」

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