H・E・ S~せっかく桃太郎の世界に来たので逆に桃太郎を退治したいと思います~

D×H

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第一章桃チャンの世界…俺がまるっとハッピーエンドにしてやるぜ!

第4話拝啓、お父さん、お母さん

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俺は、自分が名乗っていないことに気付いたが、今更、《どうも、俺神白瞬で~す》とは言い辛いだろう?
こんなシリアスな話の時に、なぜ、どうでも良い名前の事を考えてしまうのか?

まあ、それが俺だよね。
これ以上考えてたってしょうがないし、彼女を助けたいって、もう俺は決めたんだから、後は動くだけの話だ。
これ以上うだうだ考えているのは、何も生産性がない。
何かあったなら、その時に考えれば良い。

「……なあ、幸」

「何ですか?……」

深刻そうな幸の顔は、これから何を言われるんだろうと言う、覚悟の顔だった。

「俺……幸に、名乗って無いよね」

「は?…」

鳩が豆鉄砲をくらう顔とは、こう言う顔を言うのだろうか?…と言った表情だった。
面白れえ……。

「俺の名前は、神白瞬。……瞬って呼んでくれ」

「瞬……様」

「様はいらない」

「………無理です」

じと目で見てくる幸。
彼女は年相応のこんな表情も出来るのだ、と改めて、自分の考えの正しさを俺は、噛み締めた。
どうせ生きるなら、皆最後は死ぬのだから、笑って暮らせる方が絶対に良いのだ。

「今はそれでも良いけど、これから慣れていってよ」

「!!………はい!」

「じゃあ、もう寝ようか?明日のことは明日考えて動こう」

「はい……お休みなさいませ」

俺は柔らかさ何て皆無な木の床の上に横になりながら幸の傷跡の事を考えていた。
幸は今までどうやって生き延びて来たのだろう?
幸の話では、命を狙われてきた筈だ。
彼女一人の力で撃退していたとはどうしても思えない。

まあ、考えてたってしょうがないよね。

「なあ、幸。もう寝た?」

同じ様に木の床の上に横になっている幸に話しかけた。
薄暗く起きているかどうかは解らない。

「起きてます」

「幸はさ…。どうやって今まで彼奴らみたいな奴から逃れてこれたの?命をさ……狙われて来たんだろう?」

「………解りません…」

「解らない?……どうして」

解らないって、冗談でも言っているのだろうか?
普段そんな事を言いそうもない、幸が繰り出した小技なら、面白い冗談だ。……が、今は笑えない。
無論、幸も冗談で言ったつもりはないだろうが。

「襲われる……所までは記憶が有るのですが、いつの間にか気を失い、気付けば、回りには誰もいない。……初めのうちは夢かとも思いましたが、気を失う前にやられた傷跡が身体に有るのです。……ただ、何故か治り始めている、それの繰り返し…夢か現実かさえ解らない。でも、襲われたりした傷じゃないものは、ちゃんと残ってる。……私は、おかしいのかもしれませんね」

丁度小窓から、月の光が差し込み幸の顔を照らした。
綺麗だけど、やるせない表情。
そこに、嘘は見えない。

「幸には、何らかの鬼の力が働いているのか?……」

幸は複雑そうな顔をしたのだが 、この時言った俺の一言はあながち間違えではなかった事をこの後、知る事になるのだが……。
流石、俺!!
勘だけで今まで生きてこれた強運は伊達じゃないぜ!!


はあ~やれやれ。
疑問は残ったけれど、知りたいことは解ったからさっさと寝てしまおう。
起きているとお腹が空くしね、良くないよね。

◇◇◇

今は何時だろう?
時計はスマホが有るのだが、如何せんこの世界の時間と同じとは限らない。
丑三つ時位だろうか?

そんな事を考えていると外から物音した。
幸も目覚めた事から、どうやら俺の気のせいでは無いらしい。

「瞬様……」

不安そうにする幸。
無理も無いだろう、深夜の来客何て怪しいこの上ない、迷惑以外の何者でもない。

「幸はここにいて。……絶対に出て来ちゃ駄目だよ?」

「ですが……瞬様!」

「駄目なものは駄目。……良い子だから言う事を聞いて?……女の子の方がこう言う時は危険何だからさ」

俺は幸を安心させようと不敵に笑った。
(実際にはドヤ顔だが、そんなの鏡でも見なくちゃ、自分じゃ解んないもんね)
今の俺、超カッコ良くない!?

俺は、決め台詞宜しく外に飛び出した。
(ゆっくり、回りを確認しながら出れば良かったのだが、それじゃしっくりキマらない)

外に出て、外に出た事を直ぐにうっかり後悔してしまった。
囲まれて……はいないけれど、昼間より人数が増えている。
まあ、昼間の奴の顔何て覚えていないけれど、十中八九間違いない。
仲間を引き連れて探して来たんだろう。
幸をあの場から連れ出してから、誰にも出会っていないのだ。
ここが長年使われた形跡が無いことを見ても、小屋に家主が戻ってきたとは考えにくかった。

「おいおい、女の子と俺一人に随分大人気ないんじゃない?」

やっとの思いの、軽口も反応が薄い。

「俺……何時もは無視されるの嫌いだけど、今はもうずっと無視し続けて、そのうち居なくなってくれても良いよ?」

その言葉を言い終わらないうちに、一番俺との距離が近かった左手にいた男が桑を振り上げた。

「桑は、畑で使いなさいってお父さんとお母さんに習わなかったのかよ!!」

俺は済んでで身体を横にずらして避けるとその勢いのまま、サッカーボールを蹴るように男の脇腹を蹴りあげた。
俺の蹴りは、見事にヒットし男は後方に倒れ込んだ。
先生に泣かれて、お母様に怒鳴られて怒られて、殴られても、伊達に喧嘩に明け暮れてない。
継続は力なり、だ。

俺に反撃をくらうとは思っていなかったんだろう。
奴らは慌てているのが見てとれた。
その事からも軍隊の様に訓練されている連中では無いらしい。
本当に、その辺にいる農民何だと嫌でも思い知らされる。
その事が、とても俺をやるせない気持ちにさせた。
恐いから、幸を数人がかりで痛め付け、殺して良いのか?
それがお前らの正義かよ?
これじゃあ、どちらが悪党かわかりゃしない。

「ヘイヘイ❗おっさん達。……ちょっとは格好いいところを見せて見ろよな!?こんなんじゃ、俺にすら敵わないぜ!?」

安い挑発だが、出来れば俺に惹き付けて、幸から遠ざけたかった。
俺一人では、きっとこの人数には敵わない。
でも日中見たいに逃げる事は出来ない。
そこまで俺は人間が腐っていない。

俺の言葉に苛立ったのか、男達が一斉に襲い掛かってくる。

前二人。……右に一人。左に二人。
さっき蹴りあげた奴はまだのびているから良いとして、全部で五人。
こっちは素手で、彼方さんは農業器具。
飛び道具こそないが、リーチは長い。

「これは……ヤバイかな?」

奴等には聞こえないように呟いた。
喧嘩にハッタリは大切だ。……

畜生!…右…を先にやるのが正解か!
咄嗟に判断すると俺は右の奴の懐に入り込み、拳を顎めがけて突き上げた。

「よし!!」

ホッとしたのも束の間、左手にいた男の持っていた斧が俺に襲いかかる。

殺られる!!!!
そう思った瞬間、左手にいた二人が俺とは反対方向に吹っ飛んだ。

「何で…………!?」

俺は、訳も解らずそいつらを吹っ飛ばした方向に目を向けた。

「おいおい………本気かよ……」

俺は、自分の目で見た風景が信じられなかった。
俺は、運命の神様に嫌われる程何かをしたのか?
ピンチに駆け付けたのは、ヒーローではなく…………………鬼だった。

《思えば短い人生だった……拝啓、お父さん、お母さん。
貴殿方の可愛く凛々しいちょっぴりお茶目でやんちゃな一人息子は今……絶体絶命と言う奴を絶賛体験中です。
もしも生きてここを乗り越えられたら、体験談をお話しますね……0.003秒》

この瞬間……俺は走馬灯ならぬ、遺書らしき物を心の中で読み上げたね。

「そこの格好いいおじさん。……頭の角はコスプレ……じゃないよな」

目の前に突然現れた鬼は男達を次々に倒し終わると、その目を俺にロックオンして、

そして、笑ったんだ。
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