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---夏目と番になる---

【20】

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今日はウキウキるんるんで夏目と一緒に雪也くんの所に行っている。雪也くんは先に言ってるらしく佐野と夏目はバチバチにヤンキーっぽくキメてる。

俺も夏目の二枚あった特攻服の一枚をお直しして着ていた。なんかこういうのいいよね。厨二病が刺激されて楽しい。佐野は近くの駐車場に車を止めると「あれがアジトだ。危ないから後ろにいろよ」と廃倉庫を指さす。最近ボランティア団体と化し巷では有名なボランティアをする厨二病軍団という位置づけで自治会のスケットらしい。


夏目は廃倉庫の裏の入口を見ると「昔はここのドアの金具が弱くてよくカチコミされてたな」と言いながら足をかける。すると佐野も何かニヤつきながら同じく足をかけた。2人はせーのと楽しそうに息を合わせてそこを思いっきり蹴った。

そこはやはり金具が脆いらしくバキッ!と音を立ててドアごと倒れ落ちる。ボランティア団体になっている今は害はなく2、3代前に薬を捌いていた時に夏目が半壊させたらしい。このアジトももうボロボロだった。


「あぁ゛ん?オタク何してくれとんのか、あぁ゛?」


後ろのドアを蹴っ飛ばされ雪也くんは唖然としている、そしてその横にいる佐野の弟は「修理費よこせよ」とブツブツいっている。隊員が2人を囲むようにして前に来て佐野にガン飛ばす。佐野は「生意気」というと持っていた大きなハリセンでガン飛ばしてきた隊員を殴った。


「雪也、ここ相変わらずボロいね」


「夏目さんと兄貴が数年おきに壊しに来るからですよ」


それもそうかと夏目が佐野と笑い合うと隊員は頭を九十度に下げ、挨拶をする。頭を上げてよしと言われるまで上げては行けないらしく夏目は意地悪にもそのまま真ん中のソファーに足を組んで座った。


「俺たちはもうそんなんじゃないから頭上げな。」


ポカーンと壊された入口の近くで座り込む俺を雪也くんは引っ張り、ぶっ壊されたドアを適当に釘で打ち付けた。
雪也くんが説明しているはずだが、夏目と佐野のオールバックにかきあげた髪の毛とサングラスで気が付かずただみんな失礼を働いていないかヒヤヒヤしている。
夏目は優しいから叩かれたり殴られたりはしないのに、俺からしたらハリセン持ってる佐野の方が何倍も怖いよ。


「初代、何飲まれますか?チューハイとテキーラありますぜ」


「車で来てるからお酒は遠慮かな」


やはり夏目は夏目だ。どこまで行っても夏目は夏目。優しい口調とは裏腹に結構怖い。俺は夏目がリーダーだった頃の集合写真を見つめていた。年代が変わる事に画質もよくなり人数も多くなっている。そして4代目の写真になると一気にワルっぽくなって5代目の写真で人数は半分以下に減りみんな顔つきが明るくピースをしている人が多かった。


「先代の総長は優しそうだね」


「優しかったよ。俺、Ωだから気にかけてくれててレイプなんてこと1回もなかった。」


「んじゃ俺と秀和は千里の部屋掃除してくるから明楽をよろしくね」


そうして夏目と佐野は2回に上がって行った。どうしたらいいのか分からなくなり雪也くんに言われるがままさっきまで夏目が座っていた。運ばれてくる麦茶を飲み、いつの間にか隊員たちとキャッキャウフフしている。


「姐さんは初代の恋人ですか?」


「そうそう、夏目今日はあんなんだけどいつも優しいよ。殴られたりしないからもっと肩の力抜こ。」


「夏目さんは明楽の前でだけ優しいやん。騙されるなよ」


雪也くんはそういう。昼前になると隊員達は『小学校から草むしり頼まれてるんです』と言いながら背中に『なんでもあれ、ウィードバスターズ』と印刷されている白の作業着を着て出ていった。この場にいるのは俺と雪也くんと柊くん、歳も近いため自然と話が盛り上がる。


「姐さんは初代との間に子供いるんですか?」


「い、居ないよ!!!夏目も忙しいし、第一欲しいのかさえ分からないもん。そういう話は雪也くんに振って!」


「いや、雪也に振ったら兄貴のキモイ話しか出てこないので」


雪也くんがプンスカ怒りながら次は『秀和が酷い!!』と愚痴をこぼし始めた。雪也くん、高校中退してるけど通信制に通わされてて数週間前無断で知らない場所ほっつき歩いて暴力沙汰起こしたらしい。そしたら佐野が次やったら暫く出れないように孕ませるって脅してきたと。

俺は夏目との子供なら欲しいけど付き合って2ヶ月ぐらいしか経ってないのにそれはヤバすぎる。


「明楽はいいじゃん、夏目さん優しくしてくれるし激しくなさそう」


話には聞いていたけど佐野のは激しいらしい。けど夏目も大概だ、本気で止めくれと言ったら辞めてくれるけど俺は嫌よ嫌よも好きのうちになってしまっている。


「うーん、激しいけど辞めてって言ったらやめてくれるからそこまでは無いなー」


「兄貴の性事情聞かされる俺の身にもなれバカ雪也」


柊くんは雪也くんの頭に鉄拳を落とすと何やらトランプの台とウノを持ってきた。札を出す事に100円出し、隣の人にプラスの札を切られ手元の札が出せなくなったら隣の人が得して真ん中の100円をプラスした分だけ貰えるという。最終的な手元お金に加えて一位で上がると真ん中の100円から半分貰えて2位はそのそのった100円の6割を貰える。


「姐さんもやります?」


「やるよなぁ!!これ楽しいぞ!」 


俺は雪也くんのはしゃぎっぷりに押し負けてやることになった…。
柊くんは慣れているのかどんな札が来ても表情一つ変えずに札を切って行く。反対に雪也くんは柊くんにプラスされる度奇声を上げて財布からお金を出していた。

俺のお財布にも夏目から「現金も必要でしょ?」と毎月一万渡され、結局一円も使う機会がなく、3万円ある。夏目は毎回5000円一枚と1000円4枚、500円玉一枚、と使いやすいように分けて俺の財布に入れる。

こんなことに使うのは申し訳ないけど俺も頑張ってやっていた。

戦況は中盤になるにつれ柊くんが有利になり手札が一番多い雪也くんも何を出してくるか分からなく俺の頭は必死に動いていた。


「こーら、明楽何してんの。」


夏目は上から俺の札を取り上げると「まぁ、悪くない」と言う。雪也くんも佐野に「よっわwww」と言うと札を取り上げる。


「明楽はこんな悪い遊び覚えちゃいけませんー!俺が変わってあげる」
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