邁進のヘレディタリー

第一章 ラスト＝エゴ・アルター

第五話 自己紹開始

 ☆エギラ

　「いらっしゃい」
　「よく来たね」
　優しい言葉が、現れた金髪の少女にかけられた。彼女は笑顔だった。それは、苦しみや不安を押し殺したような……酷く苦しそうな……
　「大丈夫だよ、吐き出しても」
　ミクスが言った。彼女の体験からそう言ったのか、僕にはわからなかった。だが、少女の顔が少しだけ、緩んだ気がした。
　少女は首を縦に振った。そして、彼女がここに来てからの第一声が、耳を包んだ。
　「ありがとうございます」
　それから、彼女は自分の事について話し始めた。
　それはまるで地獄のようだった。
　その少女の名は「エルサ」苗字は無い。苗字は捨てられた。彼女は《翼》の奴隷であったらしく、何者かによって救い出され、今に至る。その何者かは革命派の人物ではないとのことだ。奴隷であった頃、彼女の扱いは酷かった。殴られる、蹴られるは当たり前、ご飯は１日２食。苦しかった。悲しかった。それを彼女は全て吐き出した。目には涙を浮かべ、最後に宣言をした。
　「苦しかった。逃げたかった。それだけ、嫌だった。今もそんな思いをしている劣性が沢山いる。それを私は救いたいし、助けたい。私がされたように。希望を、夢を、救い出したい。それが志願した理由。逃げ続けても意味はない。だから、行動する。私は、貴方たちに協力したい。仲間に入りたい」
　「うん。よろしくね」
　自然と僕の喉から声が出た。
　「ありがとう。よろしくお願いします」
　彼女の顔には『本物』があって、僕は思わず微笑んだ。

　リーダーがパンと手を鳴らした。
　「新メンバーも来ましたし、まずは自己紹介でもしますか！」
　おお！と掛け声が上がった。
　「わたしからでもいいですか？」
　声を上げたのは「パイラ・イェール」。二つ名は「戦闘お姉さん」。肩まである黒髪、綺麗な顔立ちとスタイルが特徴の魔法遺伝者で、大好きな魔法は金縛りを引き起こす《固化》。という、面白く、強いお姉さんだ。
「パイラ・イェールよ。好きな食べ物はグミ。噛んでいて飽きないから好きなの。あとコーヒーも好きね。よろしくお願いするわ」
　一通り自己紹介をして、座った。
　
　「次はわたしかな？」
　と、ミクスが立ち上がった。