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「……トム、もう朝だぞ。起きろ!」
……うるさいな。もう少し寝かせてくれ。
神殿で修行を初めてそろそろ半年になろうとしている。朝は早く、修行は厳しく、食事は少ない。しかも未だに法術の基本にすら到達していない俺を後目に、このエルという生真面目《きまじめ》で、しかも無駄に美形で女にモテる同い年の同門は、既に治療術の手ほどきを受けているという。
「ほら、もういい加減に起きろ!」
……頼むからもう少し、ぎりぎりまで寝かせてくれ。……もうぎりぎりなのか。仕方ないな……。
***
「トム!」
目を覚ますと、いつものギルド宿の天井だった。目の前には旧友のエルがいる。相変わらず憎たらしいほどの美形だが、先ほどまで見ていた顔にはなかった皺が、重ねた年月と苦労を物語っている。そうか、久しぶりに修行時代の夢を見ていたんだな。
「ひどい 火傷だったな。10日も眠り続けていたという話じゃないか。俺の《完治》がなければ助からなかったかもしれないぞ」
俺は少しずつ今の状況を把握した。顔中、いや体中に薬草臭い包帯が巻かれている。都市を襲撃した飛竜。奴の心臓目掛けて剣を突き立てた後の記憶がない。そうだ、奴の灼熱の鮮血を浴びて、そのまま気を失ってしまっていたのか。
そして足元の椅子には小さな相棒――俺をかばって重傷を負わせてしまったライラが腰掛けたまま眠りこけていた。
「……トム……目を覚ましたの?……」
俺を呼ぶ声で目を覚ますと、すぐの胸に飛び込んできた。
「良かった……本当に……」
「済まなかった、あの時そばにいてやれなかった」
「私ならあれくらい平気なのに……ぐすっ……」
旧友の手前、ややみっともないと思ったが、今はしばらく彼女をこの胸で泣かせてやろう。
*
「……それで、どうしてここにいるんだ?」
「結論を言うとな、『禁断の地』に入る方法がどうしても見つからなかった」
俺たちは「異変」の根源があると思われた東の果てを目指して旅をしていた。直前の拠点となったエルフの村で、俺は仲間に背を向けて一人立ち去ったのだ。
「それで、一旦ゴルド卿の本拠地に戻って作戦を練り直そうという話になってな。すると山を降りたところの村で、中央都市の飛竜襲撃と撃退の話を仕入れたんだ」
「ほう、そんなところまでもう話が届いていたのか」
「なんでも飛竜にとどめを刺した英雄が瀕死の重傷という話だ。これは放っておけないと思って俺たちは別行動をとることにした。ゴルド卿とアランは領地へと報告に向かい、フォルンは里に留まり、ここにはイザとエレナの三人で来た。しかし本当に驚いたよ、まさか竜殺しの英雄がお前とはな」
「それで、二人はどうしたんだ?」
「昨日、俺がお前に《完治》をかけたのを見届けると魔術学院に行ったよ。調べ物があるという話でな。今日の日暮れまでには戻ってくるそうだ」
「そうか、俺は《完治》を受けても丸一日目を覚まさなかったというわけだな」
そして、この友はライラとともに、ずっと俺のそばにいてくれたのである。改めて自分の体を確認すると、包帯の下は火傷の跡すら残っていない。これが一流の癒し手の力なのだ。
「いくら《完治》といえども生命力そのものが失われていたら何も出来ないからな。お前は強く、そして運が良かった。……よく、目を覚ましてくれたな」
「本当にありがとう。心配をかけて済まなかった」
「礼には及ばないさ、俺の役目だからな。それで、体の具合はどうだ」
「問題なさそうだ。ここで寝たまま話すのもなんだから、下に降りようか」
食堂のことを思い出したら急に腹が減ってきた。無理もない、10日も何も食べていなかったのだ。おそらく《不飢》の法術によって生かされていたのだろう、腹の中は空っぽである。俺は身支度を整え、三人で階下の食堂へと足を運んだ。
*
「トム!もう歩けるのか!」
食堂に姿を見せるとマスターが真っ先に俺を見つけてくれた。ギルドの面子も次々に集まってきた。そして「よく生きてたな!」「英雄の帰還だ!」などと囃し立ててくる。
「いや、本当の英雄は俺の盾になってくれたライラや、死にかけていた俺を治してくれたエル、それに飛竜に果敢に挑んだみんなのことだ。俺は運良くとどめを刺せただけだからな」
これは半分は謙遜だが、半分は純粋な本音である。戦士として飛竜にとどめを刺した達成感は間違いなくあるのだが、同時にそれが俺一人の功績ではないということも十分承知している。
「本当によくやってくれたな。犠牲者は誰も出なかったのもお前の治療おかげだ」
「そうか!本当に良かった……」
少なくとも最前線で戦う者の中から死者が出ることは懸念していた。俺の治療術の力もあるにせよ、それだけ冒険者が強くなっていたということでもあるのだろう。
「腹減ってるだろう。とっておきの卵粥でも作ってやろうか」
「ああ、頼む。……そうだ、オリバーとメリナ、それにポールはいるか?」
照れくさくなったので話題を変える。特に親しかったこの三人には真っ先に無事を伝えたかったからだ。ジャックには俺が伝えずとも、風の便りを自らつかむだろう。
「オリバーとメリナは故郷に帰ったぞ。そろそろ種まきの季節だからな。ポールも今日は下宿先の仕事を手伝うと聞いているが、明日の朝には顔を出すはずだ」
オリバー達はもともと農民であり、冒険者をやっていたのは出稼ぎに過ぎなかった。親戚宅に間借りしているポールともども、本業が何よりも大事なのだろう。
「当面は余裕で家族を養えるくらいのカネは稼いだだろって伝えたんだがな。俺が畑を耕さなければその分だけ作物が減って誰かが飢える、そんなのは許せないと。ポールも魔術師とは別に手に職をつけたいという話だしな。まったく、あの歳で大した奴らだよ」
俺が出会った頃のオリバー、生意気で大人や社会に反発していたころの彼はもういない。今となっては立派な大人であり、そう遠くないうちに父親になるのだろう。
「トムなら必ず元気になるって信じていたぞ。ゴルド卿のところへ行くならオリバー達の村は通り道だったな。顔くらいは見せてやれよ」
「ああ、もちろんだ」
*
ギルドの連中は飛竜迎撃戦の話題で熱く盛り上がる。エルとしてはライラのことを含め、中央都市に着いてからの俺の近況を聞きたかっただろう。だが、後でいくらでも話す時間があると判断してか、今は聞き役に徹していた。
そうだ、ライラだ。彼女は俺をかばうために人前で狼の姿になったが、誰もそれを話題にしていない。かといって彼女がここにいることは許されているので、神殿の計らいで人狼としての彼女が公に認められたのかも知れなかった。しかし、相変わらずフードを被って耳は隠しているのだが。いずれにせよ、エルと共に神殿には顔を出す必要がある。
「飛竜は解体の真っ最中だ。明日にでも職人街へ行ってみな。なにせお前は討伐の立役者だから、好きな部位を選ぶ権利があるぜ。もちろん討伐報酬も出ているからな」
マスターからの報酬は期待していたよりもさらに一桁多かった。あれだけ多くの人員が参加したので取り分は少ないと思ったのだが、都市やその周辺のあらゆる有力者から報奨金が積まれていたようだ。
*
「トム、目は覚めたのか?!」
「……トム?!」
扉が開き、懐かしい声に振り返る。イザとエレナだ。
「ああ。本当に心配をかけたな」
日もすっかり落ちて、酒場も賑わってきた。見知った顔が次々と俺の快気を祝ってくれ、エル達に俺の活躍ぶりを嬉しそうに話している。
「俺があのトカゲ野郎の尻尾でふっとばされた時のことだ。地面に叩きつけられた瞬間に癒やしの術が飛んできたぜ!お陰でピンピンよ!」
「癒やしの術を……飛ばす?」
飛竜襲撃の折、俺が治療術をかけた戦士の一人がエルに得意げに話す。
「トム、そんなことが可能なのか?」
「ああ。例えばこのカウンター席から入口の扉くらいまでの距離なら、動いている的にも当てる自信はある」
「ほう……」
エルは感心したような顔でうなづいている。
「もとは反転回復による遠隔攻撃のために身に着けた技だ。弓矢が使い物にならなかったから、その代わりというわけだな」
「反転回復だと……?そんな術を実戦で使用しているのか?」
「ああ、外道の術だとは承知の上だがな。本当は弓術を修めたかったんだが使い物にならなかったから、その代わりというわけだ」
「ま、そのおかげで矢でも魔術でも破れなかった奴の壁をぶち破れたってわけよ」
いつの間にか隣に座っていたジャックが言う。
「……なるほどね。法力の代わりに生命力を媒介にした疑似的な《障壁》を、同じ法術かつ反生命力の呪文で相殺した、と。確かに理屈は通っているけれど、よく思いついたものねぇ」
エレナが、魔術師らしく論理的な分析をする。まさに俺が思っていた通りの理屈だ。
「他に手段がなかったから、たまたま使ったまでの話だ」
「だが、あんたと同じことをできる奴が他にいるかい?」
「俺でも接触することさえできれば可能だろう。だが離れたところ、まして空中の相手に当てるとなると……」
イザの問いかけにエルが答える。かつての仲間たちと、いかにも冒険者らしいやり取りをするのは懐かしい気分だ。
「ライラ、眠いのか?」
いつもは元気に会話に交じる彼女が今夜は静かだ。椅子に腰掛けて、うつらうつらと船を漕いでいた。
「……ごめん。先に休んでるね」
「昨夜はずっと起きて俺のそばにいてくれたんだったな。部屋まで送るよ」
「うん。それじゃみんな、おやすみなさい……」
*
ライラを客室に送り届けたが、俺はまだまだ寝られそうにないので再び食堂に戻ってきた。
夜もふけて客も少なくなり、すっかり静かになってきたところでエレナがぽつりと言う。
「ねえトム、神狼族って知ってるわよね?」
……うるさいな。もう少し寝かせてくれ。
神殿で修行を初めてそろそろ半年になろうとしている。朝は早く、修行は厳しく、食事は少ない。しかも未だに法術の基本にすら到達していない俺を後目に、このエルという生真面目《きまじめ》で、しかも無駄に美形で女にモテる同い年の同門は、既に治療術の手ほどきを受けているという。
「ほら、もういい加減に起きろ!」
……頼むからもう少し、ぎりぎりまで寝かせてくれ。……もうぎりぎりなのか。仕方ないな……。
***
「トム!」
目を覚ますと、いつものギルド宿の天井だった。目の前には旧友のエルがいる。相変わらず憎たらしいほどの美形だが、先ほどまで見ていた顔にはなかった皺が、重ねた年月と苦労を物語っている。そうか、久しぶりに修行時代の夢を見ていたんだな。
「ひどい 火傷だったな。10日も眠り続けていたという話じゃないか。俺の《完治》がなければ助からなかったかもしれないぞ」
俺は少しずつ今の状況を把握した。顔中、いや体中に薬草臭い包帯が巻かれている。都市を襲撃した飛竜。奴の心臓目掛けて剣を突き立てた後の記憶がない。そうだ、奴の灼熱の鮮血を浴びて、そのまま気を失ってしまっていたのか。
そして足元の椅子には小さな相棒――俺をかばって重傷を負わせてしまったライラが腰掛けたまま眠りこけていた。
「……トム……目を覚ましたの?……」
俺を呼ぶ声で目を覚ますと、すぐの胸に飛び込んできた。
「良かった……本当に……」
「済まなかった、あの時そばにいてやれなかった」
「私ならあれくらい平気なのに……ぐすっ……」
旧友の手前、ややみっともないと思ったが、今はしばらく彼女をこの胸で泣かせてやろう。
*
「……それで、どうしてここにいるんだ?」
「結論を言うとな、『禁断の地』に入る方法がどうしても見つからなかった」
俺たちは「異変」の根源があると思われた東の果てを目指して旅をしていた。直前の拠点となったエルフの村で、俺は仲間に背を向けて一人立ち去ったのだ。
「それで、一旦ゴルド卿の本拠地に戻って作戦を練り直そうという話になってな。すると山を降りたところの村で、中央都市の飛竜襲撃と撃退の話を仕入れたんだ」
「ほう、そんなところまでもう話が届いていたのか」
「なんでも飛竜にとどめを刺した英雄が瀕死の重傷という話だ。これは放っておけないと思って俺たちは別行動をとることにした。ゴルド卿とアランは領地へと報告に向かい、フォルンは里に留まり、ここにはイザとエレナの三人で来た。しかし本当に驚いたよ、まさか竜殺しの英雄がお前とはな」
「それで、二人はどうしたんだ?」
「昨日、俺がお前に《完治》をかけたのを見届けると魔術学院に行ったよ。調べ物があるという話でな。今日の日暮れまでには戻ってくるそうだ」
「そうか、俺は《完治》を受けても丸一日目を覚まさなかったというわけだな」
そして、この友はライラとともに、ずっと俺のそばにいてくれたのである。改めて自分の体を確認すると、包帯の下は火傷の跡すら残っていない。これが一流の癒し手の力なのだ。
「いくら《完治》といえども生命力そのものが失われていたら何も出来ないからな。お前は強く、そして運が良かった。……よく、目を覚ましてくれたな」
「本当にありがとう。心配をかけて済まなかった」
「礼には及ばないさ、俺の役目だからな。それで、体の具合はどうだ」
「問題なさそうだ。ここで寝たまま話すのもなんだから、下に降りようか」
食堂のことを思い出したら急に腹が減ってきた。無理もない、10日も何も食べていなかったのだ。おそらく《不飢》の法術によって生かされていたのだろう、腹の中は空っぽである。俺は身支度を整え、三人で階下の食堂へと足を運んだ。
*
「トム!もう歩けるのか!」
食堂に姿を見せるとマスターが真っ先に俺を見つけてくれた。ギルドの面子も次々に集まってきた。そして「よく生きてたな!」「英雄の帰還だ!」などと囃し立ててくる。
「いや、本当の英雄は俺の盾になってくれたライラや、死にかけていた俺を治してくれたエル、それに飛竜に果敢に挑んだみんなのことだ。俺は運良くとどめを刺せただけだからな」
これは半分は謙遜だが、半分は純粋な本音である。戦士として飛竜にとどめを刺した達成感は間違いなくあるのだが、同時にそれが俺一人の功績ではないということも十分承知している。
「本当によくやってくれたな。犠牲者は誰も出なかったのもお前の治療おかげだ」
「そうか!本当に良かった……」
少なくとも最前線で戦う者の中から死者が出ることは懸念していた。俺の治療術の力もあるにせよ、それだけ冒険者が強くなっていたということでもあるのだろう。
「腹減ってるだろう。とっておきの卵粥でも作ってやろうか」
「ああ、頼む。……そうだ、オリバーとメリナ、それにポールはいるか?」
照れくさくなったので話題を変える。特に親しかったこの三人には真っ先に無事を伝えたかったからだ。ジャックには俺が伝えずとも、風の便りを自らつかむだろう。
「オリバーとメリナは故郷に帰ったぞ。そろそろ種まきの季節だからな。ポールも今日は下宿先の仕事を手伝うと聞いているが、明日の朝には顔を出すはずだ」
オリバー達はもともと農民であり、冒険者をやっていたのは出稼ぎに過ぎなかった。親戚宅に間借りしているポールともども、本業が何よりも大事なのだろう。
「当面は余裕で家族を養えるくらいのカネは稼いだだろって伝えたんだがな。俺が畑を耕さなければその分だけ作物が減って誰かが飢える、そんなのは許せないと。ポールも魔術師とは別に手に職をつけたいという話だしな。まったく、あの歳で大した奴らだよ」
俺が出会った頃のオリバー、生意気で大人や社会に反発していたころの彼はもういない。今となっては立派な大人であり、そう遠くないうちに父親になるのだろう。
「トムなら必ず元気になるって信じていたぞ。ゴルド卿のところへ行くならオリバー達の村は通り道だったな。顔くらいは見せてやれよ」
「ああ、もちろんだ」
*
ギルドの連中は飛竜迎撃戦の話題で熱く盛り上がる。エルとしてはライラのことを含め、中央都市に着いてからの俺の近況を聞きたかっただろう。だが、後でいくらでも話す時間があると判断してか、今は聞き役に徹していた。
そうだ、ライラだ。彼女は俺をかばうために人前で狼の姿になったが、誰もそれを話題にしていない。かといって彼女がここにいることは許されているので、神殿の計らいで人狼としての彼女が公に認められたのかも知れなかった。しかし、相変わらずフードを被って耳は隠しているのだが。いずれにせよ、エルと共に神殿には顔を出す必要がある。
「飛竜は解体の真っ最中だ。明日にでも職人街へ行ってみな。なにせお前は討伐の立役者だから、好きな部位を選ぶ権利があるぜ。もちろん討伐報酬も出ているからな」
マスターからの報酬は期待していたよりもさらに一桁多かった。あれだけ多くの人員が参加したので取り分は少ないと思ったのだが、都市やその周辺のあらゆる有力者から報奨金が積まれていたようだ。
*
「トム、目は覚めたのか?!」
「……トム?!」
扉が開き、懐かしい声に振り返る。イザとエレナだ。
「ああ。本当に心配をかけたな」
日もすっかり落ちて、酒場も賑わってきた。見知った顔が次々と俺の快気を祝ってくれ、エル達に俺の活躍ぶりを嬉しそうに話している。
「俺があのトカゲ野郎の尻尾でふっとばされた時のことだ。地面に叩きつけられた瞬間に癒やしの術が飛んできたぜ!お陰でピンピンよ!」
「癒やしの術を……飛ばす?」
飛竜襲撃の折、俺が治療術をかけた戦士の一人がエルに得意げに話す。
「トム、そんなことが可能なのか?」
「ああ。例えばこのカウンター席から入口の扉くらいまでの距離なら、動いている的にも当てる自信はある」
「ほう……」
エルは感心したような顔でうなづいている。
「もとは反転回復による遠隔攻撃のために身に着けた技だ。弓矢が使い物にならなかったから、その代わりというわけだな」
「反転回復だと……?そんな術を実戦で使用しているのか?」
「ああ、外道の術だとは承知の上だがな。本当は弓術を修めたかったんだが使い物にならなかったから、その代わりというわけだ」
「ま、そのおかげで矢でも魔術でも破れなかった奴の壁をぶち破れたってわけよ」
いつの間にか隣に座っていたジャックが言う。
「……なるほどね。法力の代わりに生命力を媒介にした疑似的な《障壁》を、同じ法術かつ反生命力の呪文で相殺した、と。確かに理屈は通っているけれど、よく思いついたものねぇ」
エレナが、魔術師らしく論理的な分析をする。まさに俺が思っていた通りの理屈だ。
「他に手段がなかったから、たまたま使ったまでの話だ」
「だが、あんたと同じことをできる奴が他にいるかい?」
「俺でも接触することさえできれば可能だろう。だが離れたところ、まして空中の相手に当てるとなると……」
イザの問いかけにエルが答える。かつての仲間たちと、いかにも冒険者らしいやり取りをするのは懐かしい気分だ。
「ライラ、眠いのか?」
いつもは元気に会話に交じる彼女が今夜は静かだ。椅子に腰掛けて、うつらうつらと船を漕いでいた。
「……ごめん。先に休んでるね」
「昨夜はずっと起きて俺のそばにいてくれたんだったな。部屋まで送るよ」
「うん。それじゃみんな、おやすみなさい……」
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ライラを客室に送り届けたが、俺はまだまだ寝られそうにないので再び食堂に戻ってきた。
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