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本編
塩抜き不要?韓国風わかめビビン麺
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「おはようございます! 今日も暑くなりそうですねぇ」
「おはよう、今年は猛暑日が続くからなぁ」
関東は先週、まだ梅雨すら明けていないのに猛暑日が続いていた。昨日、ようやく梅雨が明けたようだが、この調子だと来月はどうなってしまうのだろうか。
「ねえ先輩、手軽にできる夏パスタ、何かおすすめありますかね?」
「手軽?」
「ええ、例えば暑い中を帰ってきて、もうやる気ないってときでも、ぱぱっと作れそうなやつ」
「そうだな……」
思えば、ここのところは割と手の込んだものを作っていたような気がする。俺自身が料理をするのが好きになっていたというのもあるのだが、たまには原点回帰で手を抜くのもいいと思った。
「あれでいくか、塩わかめスパゲッティだ」
いつものように、水を張った鍋を火にかけると、俺は冷蔵庫から塩漬けのワカメを取り出した。
「それ、塩漬けワカメですよね? 今から塩抜きするんですか?」
「いや、塩抜きなんかしない」
繋がった一房、目分量で30グラムくらいを取り出し、包丁で適当に刻んでいく。
*
「そろそろ沸いたな。ここにパスタと同時に塩漬けワカメを入れる」
「なるほど。ワカメの塩を抜きながら、パスタに下味を付けるってわけですね」
「そういうことだ」
普段は(主に貧乏性のため)パスタを茹でる時に塩は入れないのだが、ワカメの塩抜きのついでであれば無駄はない。今回は極細のカペッリーニである。
「これは極細の早ゆでだから一緒に入れたけど、そうでないなら多少ずらしたほうがいいかもな」
「ワカメを後から入れるってことですね」
「そう。3分もあれば十分だからな。さて、今のうちにタレを作るか」
一人分の深皿に、酢とコチュジャンを大さじ1杯、砂糖を小さじ1杯半、味の素3振りを入れて、よく混ぜる。厳密にはコチュジャンの瓶に大さじが入らなかったので小さじ3杯だが。
「味の素だけでも食えるんだが、せっかくだから夏らしくさっぱりとな。味の加減は好みで調整してくれ」
「それじゃ、私はお砂糖多めで!」
後輩は味見をしながら調整する。甘みが強めだと冷やし中華っぽくなり、それもまた良い。
*
「よーし、こんなものか」
時間が来たので、パスタを湯切りする。
「あ、水で締めたりしないんですね」
「塩気が抜けるからな。逆に塩が強すぎるなら少し洗ったほうがいいけど……問題なさそうだ」
念のため味見をしてから、そう言った。
「空気に晒して軽く粗熱を取ったらさっきの皿に盛って、と。ここに氷を入れてよく混ぜるんだ」
水で締める代わりに、菜箸で持ち上げて空気に晒してから、タレの入った深皿に入れ、アイススコップ1杯分の氷を入れる。イメージとしては冷麺である。もともと酢ベースのタレを水で割るようだが、それを氷で代用する。
*
「いただきます!……シンプルだけどおいしいですね」
「キムチとかナムル、あるいは千切りのきゅうりとかハムがあると良かったんだけどな」
基本的には韓国のビビン麺なので、色々な具を混ぜたほうがおいしい。
「あとゆで卵とかも? ま、いいじゃないですか。たまにはこんな単純なパスタも」
そう言いながら、彼女は美味しそうに細麺をすすった。
*
「そう言えばこの前、大阪出身の友達とご飯食べに行ったんですけど、関西だと冷やし中華のことも冷麺っていうらしいですね」
「あー、聞いたことあるな」
「私にとって冷麺は韓国料理のことだったので、ちょっと会話が噛み合わなかったんですよ」
西と東では、同じ言葉が異なる意味合いで使われることが少なくない。例えば基本的なところでは「だし」という単語。関東では「鰹節や昆布からとっただし汁そのもの」なのに対し、関西では「だし汁に醤油などで味をつけたもの」、すなわち「つゆ」も含めて「だし」と呼ぶ。
*
「関西方面の食文化、あんまり詳しくないから研究してみようかな」
「名古屋も面白いみたいですね。あんかけパスタとか、あんこや生クリームで甘くしたりとか」
「なるほど……」
5ヶ月くらいにわたって、毎週それぞれ異なるパスタを作ってきた。我ながらよくネタが続くものだと思っていたが、どうやら俺が思っていた以上に奥の深い世界のようだ。
**
「それじゃ先輩、私はこれで。体には気をつけてくださいね!」
「ああ。そっちこそ、ちゃんと食えよ!」
体に気をつけて、か。今のところ食生活については問題ないと思う。むしろ実家にいた頃より健康になっている気がする。あとは長い夏休みにだらけすぎないように、運動でも始めてみようかなと思ってみるのであった。
「おはよう、今年は猛暑日が続くからなぁ」
関東は先週、まだ梅雨すら明けていないのに猛暑日が続いていた。昨日、ようやく梅雨が明けたようだが、この調子だと来月はどうなってしまうのだろうか。
「ねえ先輩、手軽にできる夏パスタ、何かおすすめありますかね?」
「手軽?」
「ええ、例えば暑い中を帰ってきて、もうやる気ないってときでも、ぱぱっと作れそうなやつ」
「そうだな……」
思えば、ここのところは割と手の込んだものを作っていたような気がする。俺自身が料理をするのが好きになっていたというのもあるのだが、たまには原点回帰で手を抜くのもいいと思った。
「あれでいくか、塩わかめスパゲッティだ」
いつものように、水を張った鍋を火にかけると、俺は冷蔵庫から塩漬けのワカメを取り出した。
「それ、塩漬けワカメですよね? 今から塩抜きするんですか?」
「いや、塩抜きなんかしない」
繋がった一房、目分量で30グラムくらいを取り出し、包丁で適当に刻んでいく。
*
「そろそろ沸いたな。ここにパスタと同時に塩漬けワカメを入れる」
「なるほど。ワカメの塩を抜きながら、パスタに下味を付けるってわけですね」
「そういうことだ」
普段は(主に貧乏性のため)パスタを茹でる時に塩は入れないのだが、ワカメの塩抜きのついでであれば無駄はない。今回は極細のカペッリーニである。
「これは極細の早ゆでだから一緒に入れたけど、そうでないなら多少ずらしたほうがいいかもな」
「ワカメを後から入れるってことですね」
「そう。3分もあれば十分だからな。さて、今のうちにタレを作るか」
一人分の深皿に、酢とコチュジャンを大さじ1杯、砂糖を小さじ1杯半、味の素3振りを入れて、よく混ぜる。厳密にはコチュジャンの瓶に大さじが入らなかったので小さじ3杯だが。
「味の素だけでも食えるんだが、せっかくだから夏らしくさっぱりとな。味の加減は好みで調整してくれ」
「それじゃ、私はお砂糖多めで!」
後輩は味見をしながら調整する。甘みが強めだと冷やし中華っぽくなり、それもまた良い。
*
「よーし、こんなものか」
時間が来たので、パスタを湯切りする。
「あ、水で締めたりしないんですね」
「塩気が抜けるからな。逆に塩が強すぎるなら少し洗ったほうがいいけど……問題なさそうだ」
念のため味見をしてから、そう言った。
「空気に晒して軽く粗熱を取ったらさっきの皿に盛って、と。ここに氷を入れてよく混ぜるんだ」
水で締める代わりに、菜箸で持ち上げて空気に晒してから、タレの入った深皿に入れ、アイススコップ1杯分の氷を入れる。イメージとしては冷麺である。もともと酢ベースのタレを水で割るようだが、それを氷で代用する。
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「いただきます!……シンプルだけどおいしいですね」
「キムチとかナムル、あるいは千切りのきゅうりとかハムがあると良かったんだけどな」
基本的には韓国のビビン麺なので、色々な具を混ぜたほうがおいしい。
「あとゆで卵とかも? ま、いいじゃないですか。たまにはこんな単純なパスタも」
そう言いながら、彼女は美味しそうに細麺をすすった。
*
「そう言えばこの前、大阪出身の友達とご飯食べに行ったんですけど、関西だと冷やし中華のことも冷麺っていうらしいですね」
「あー、聞いたことあるな」
「私にとって冷麺は韓国料理のことだったので、ちょっと会話が噛み合わなかったんですよ」
西と東では、同じ言葉が異なる意味合いで使われることが少なくない。例えば基本的なところでは「だし」という単語。関東では「鰹節や昆布からとっただし汁そのもの」なのに対し、関西では「だし汁に醤油などで味をつけたもの」、すなわち「つゆ」も含めて「だし」と呼ぶ。
*
「関西方面の食文化、あんまり詳しくないから研究してみようかな」
「名古屋も面白いみたいですね。あんかけパスタとか、あんこや生クリームで甘くしたりとか」
「なるほど……」
5ヶ月くらいにわたって、毎週それぞれ異なるパスタを作ってきた。我ながらよくネタが続くものだと思っていたが、どうやら俺が思っていた以上に奥の深い世界のようだ。
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「それじゃ先輩、私はこれで。体には気をつけてくださいね!」
「ああ。そっちこそ、ちゃんと食えよ!」
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