日曜の昼は後輩女子にパスタを作る

矢木羽研

文字の大きさ
28 / 95
本編

冷凍から揚げで油淋鶏焼きそば!

しおりを挟む
「おはようございます! 今日も暑いですねぇ」
「おはよう。しかし、この暑さはいつまで続くんだろうな」

8月も終わりだというのに猛暑が収まる気配がない。今年の夏はどうかしている。いつもの後輩はドアを開くと、冷房の効いた室内へと滑り込んでいった。

「……ぷはぁ! 麦茶は相変わらずおいしいですね」
「さて、今日はどういうのにしようか」
「そうですね。暑いからさっぱり系、でもスタミナがつくがっつり系。そんなのできますか?」
「さっぱりでがっつりか。ふーむ」

俺は冷蔵庫を物色する。

「冷凍のが残ってたな。あれが作れそうだ」
「ん、これって冷凍のから揚げですか?」
「そう、これを使って油淋鶏ゆーりんちー風にする」

ご飯のおかずに最適な料理だが、これをパスタにアレンジするというわけだ。

「油淋鶏って、鶏の唐揚げに、ネギと甘酢のタレがかかったやつですよね」
「本場では素揚げらしいけど、まあ日本だとそうだな。とりあえず、お湯わかしてもらっていいか?」
「はーい。普通のスパゲッティでいいですね」
「ああ、頼む。俺の分は120グラムくらい!」

こうして、いつものように調理が始まる。

*

「まずはネギを刻む。長ネギの白いところを1本分丸ごと使う」
「青ネギでもいいですかね」
「まあそのへんは好みだな。俺の場合は常備してあるのは白ネギだけだから」

このあたりは地域差が出る部分だろうと思う。関東育ちの俺にとって、ネギといえば白ネギなのだ。

「……あ、斜め切り。みじん切りじゃないんですね?」
「薬味というよりは具にするから、存在感が欲しいな」

「次はタレだな。醤油、酢、砂糖を大さじ1杯、2人分なら2杯。酢はせっかくだから黒酢を使うか」
「山西省のやつですね」

油淋鶏は広東料理のようなので、山西省の黒酢を使うのが適切かどうかはわからない。日本で手に入りやすいものでいえば、よりマイルドな鎮江香酢ちんこうこうずのほうが向いているとは思うのだが、料理の種類ごとに黒酢を揃えるのは一人暮らしでは無理がある。

「おろしニンニクとショウガも小さじ2杯くらい入れる。から揚げの味にもよるけどな」
「ニンニク、もっと入れても良いんじゃないですか?」
「まあ食べながら足してもいいし、今はこのくらいにしておこう」

*

「タレができたら次は具だ。から揚げは……8個くらい使うか」
冷凍から揚げの袋を開けて、まな板の上に出す。

「パスタと絡めるから、食べやすいようにカットしていくんだ」
「凍ったままだと結構硬そうですね」
「切りづらければレンジにかけたり、今の時期なら自然解凍してもいいかもな」

フライパンに少しだけ油を引いて、刻んだネギとから揚げ、みじん切りの唐辛子を入れる。

「油はずいぶん少ないんですね。大さじ半分くらいですか」
「から揚げの衣に含まれるからな。あと、できればごま油がいいと思う」

今は常備していないので普通のサラダ油である。

*

「パスタ、そろそろですね」
「よし、茹で汁を少し……お玉半分くらいこっちに入れてもらえるか」
「はーい」

フライパンに茹で汁と、湯切りしたスパゲッティを加える。そこにタレを流し込む。

「タレ、あとがけかと思ったら先に入れちゃうんですね」
「これも好みだけどな。この黒酢はクセが強いから火を入れたほうがいいと思うんだ」

山西老陳酢は比較的刺激が強いので、火を入れる料理に向いている。鎮江香酢なら料理に直接かけてもいいと思う。

「なんだかソース焼きそばみたいな感じになってきましたね」
「実際、日本のウスターソースはもともと酢醤油がベースだったみたいだからな。昔のソース焼きそばもこんな感じだったかも知れない」
「へえ、そうなんですか?」
「まあ、俺も部分的に知ってるだけなんだけどな」

ソース焼きそばの歴史については、つい最近発売された書籍で非常によく研究されていると聞いた。俺もそのうち買って読んでおこうと思っているのだが。

「よし、こんなもんか」
タレが全体に馴染んだところで皿に盛る。

「おいしそうですね。それじゃさっそく、いただきます!」

*

「まさに、さっぱりだけどがっつりって感じですね。酢とニンニクがおいしいです」
「そういう意味では夏にぴったりかもな」
「見た目から紅ショウガでも添えたくなっちゃいましたが、もともと酸味が強いから別になくてもいいですね」

喋りながらも、彼女は麦茶と交互にパスタを口に入れ、あっという間に完食してしまった。

*

「ごちそうさまでした! 午後も乗り切れそうです!」
「お粗末様。夏休みも後半戦、やりたいことは全部やらなきゃな」

人手が多いお盆の時期よりも、観光に行くならむしろ9月がうってつけだ。こんなに暑くなるとは思わなかったが。

「もう8月も終わりかぁ。最後の週末、うちのほうだと花火大会をやってたんですよね」
「俺のところも、近所の公園で盆踊りやってたな」
「毎年この時期になると夏の終わりって感じですけど、今年は全然終わりそうにないですねぇ」

実際、9月になっても猛暑日が続くようだ。今年の夏は暑すぎて、長すぎる。夏が終わりそうなのはカレンダーだけだ。

「……ねえ、一つとなりの駅で夏祭りやるんですけど、行きません?」
「そうだな。たまには行ってみるか」

夏祭りといえば、ここ3年くらいは自粛しているところばかりだったので久しぶりだ。

**

「それじゃ、私はいったん帰りますね。着替えないといけないし。6時に駅で待ち合わせでいいですか?」
「ああ、大丈夫だ」
「それじゃ先輩、また後ほど!」

わざわざ着替えるということは浴衣姿でも見せてくれるのだろうか。日が落ちても相変わらず暑そうだが、二人で夜店巡りというのも悪くないと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...