日曜の昼は後輩女子にパスタを作る

矢木羽研

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本編

柿でトマトソース?サルサポモドーロ風!

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「おはようございます! 暖かかったり寒かったりしますけど、元気ですか?」
「おはよう。だいぶ体も寒さに慣れてきたかな」
「今日もおみやげ持ってきましたよ、ほら!」

そう言って差し出された紙袋の中には、鮮やかに色づいた柿の実がたくさん詰まっていた。

「親戚からもらったんですよ。今年は柿が豊作みたいですね」
「柿かあ、そういえばしばらく食べてないなぁ」

柿という果物は、買ってきたり店で食べたりするよりは自家栽培しているもの、もっと言えば近所や親戚からいただくものという印象が強い。実家にいたころは毎年食べて秋を感じていたものだ。

「もう熟してるので、食後のデザートにできますよ」
「それもいいけど……いっそ、これでパスタソースを作ってみようか」
「え、柿のパスタですか?!」

これははっきり言って思いつきだが、意外と悪くないんじゃないかという気がしてきた。

「そう、柿をトマトソース風にしてみるんだ」
「なるほど、そう来ましたか。柿に生ハムを乗せて食べるというのを聞いたことがあるんでそっち系かと思いましたが」
「それもよさそうだな。ともかく、中国ではトマトのことを西紅柿シーホンシー、西の紅色の柿と呼ぶみたいなんだ」

トマトが柿の名で呼ばれるのなら、トマトの代用で柿を使えるはず。ものは試しだ。

「あれ、私の知っている言葉だと、草かんむりに番号の番と、茄子の茄なんですけど。蕃茄炒蛋ファンチェチャオダンっていう卵と炒めた料理がありますよね」
「それは台湾や南方の言葉で、北方では西紅柿と呼ぶみたいだな」
「なるほど。中国といっても広いですからねぇ」

中国料理について調べてみると、同じ食材でも料理によって呼ばれ方が変わることも珍しくない。それだけ広く、方言も多いのだろう。

「ともかく、トマトのことを柿と呼ぶくらいなら、トマトの代用に柿を使うのもありじゃないかと考えたわけだ」
「うーん。どうなるか想像できませんけど、なんだか面白いので乗ってみますか!」

*

「というわけで、さっそく調理開始だ。お湯を頼んだぞ」
「はーい!」

まずは玉ねぎをみじん切りにする。2人前なので中サイズ1個でちょうどいいだろう。皿に広げて、ラップをかけずに電子レンジ600ワットで3分加熱する。その間に、柿のほうを準備する。

「2個使うんですね」
「ああ、1人あたり1個ってとこだろう」

皮を剥き、4つに割って種を取り出すと、さらに細かく刻んでいく。

*

「結構、細かくするんですね」
「さすがにトマトよりは硬いからな。本当はミキサーにでもかけたほうがいいんだろうけど……そろそろ玉ねぎのほうができるから、フライパンで炒めてくれるか?」
「わかりました!」

ぬるぬるした柿をみじん切りにするのは意外と手間がかかる。一人で作る場合、玉ねぎ炒めとの同時進行は難しそうだ。

「先輩、にんにくとか唐辛子は入れます?」
「忘れてた、もちろん入れたほうがいい」

柿のみじん切りを中断して、にんにくと唐辛子をみじん切りにする。2人分でにんにく2かけ、小ぶりの乾燥唐辛子を2本でいいだろう。オリーブオイルを引いたフライパンに投入する。

「玉ねぎ、あめ色になるまで炒めるやつですよね?」
「そうだな。塩は小さじ半強、だいたい4グラムくらい入れようか」

あめ色の玉ねぎを手っ取り早く作るには水分を飛ばすのが重要である。ラップをかけずにレンジで加熱したのはそのためだし、塩を振ったのも浸透圧で水分を出すためである。

*

「そろそろ、いいんじゃないですか?」
「だな。柿を入れようか。なるべく潰すように炒めていくんだ」

色づいた玉ねぎの中に、みじん切りの柿を入れる。

「トマトにあって柿にない味、わかるかな?」
「えーっと……酸味と、うま味でしょうか?」
「正解! だから酢と味の素を少し加えるんだ」

酢は大さじ1杯、味の素は5振りくらいを加え、よく混ぜながら煮詰めていく。

「そういえば、他に具は入れないんですね」
「入れてもいいんだけど、初めてだからまずは基本形でな」
「ここのところ、手の込んだパスタ作ってくれましたからね。たまにはこういうのもいいかも!」

今回の料理は、柿以外はすべて常備品で作った。かなり簡単な部類のレシピだ。

「パスタもそろそろだな」
「時間ぴったりですね」
「盛り付けたら、飾りに乾燥オレガノを少々かけて……柿のポモドーロ風、完成!」

オレンジ色も鮮やかな、秋の一皿が出来上がった。

*

「それじゃ、いただきます! なんだか不思議な感じですね。柿って言われなければわからないかも」
「もともと、柿は風味がないからな。玉ねぎやにんにくの香味が合わさると影に隠れるんだ」
「確かに、柿味のお菓子とかジュースって聞かないですからね。そうだ先輩、粉チーズあります?」
「もちろん。シンプルだから合うだろうな」

冷蔵庫から取り出した粉チーズをさっそくかけてみる。期待を裏切らない相性だ。

「それにしても、意外性がいいですよね。友達に何の説明もせずに出したら面白いかも」
「一応、柿アレルギーってのもあるみたいだからサプライズには気をつけてな」
「まあ、一緒に柿を食べたことがある人なら大丈夫ですね」

パスタに限らず、色々な料理に使えそうである。そもそも砂糖が普及する前は甘味料として干し柿を使っていたという話を聞いたこともある。

*

「ごちそうさまでした!」
「お粗末様。思いつきの料理だったけど、満足したなら何よりだ」
「デザートに柿、食べます?」
「ああ、頼んだ」

俺が食器を片付けている間に、後輩が柿の実を剥いてくれる。

「秋も深まってきましたねぇ」
「地方によってはもう雪が降ってるみたいだからな」

今年は暖冬になるという予報を見たが、それでも寒い日が無いわけではないだろう。

「寒くなったら、あったかくなる料理作ってくださいね」
「ま、善処するよ」
「あー、なんですかその曖昧な返事」

柿を頬張りつつ、今日もまた穏やかな日曜日を過ごすのであった。
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