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赤の盗賊団

第17話 赤の盗賊団 『盗賊団のアジト』

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 『情報屋ヤプー』を探して歩き出したところで、声をかけてきた者がいた。

 「カシムJrの坊っちゃんじゃないですかぅわーーーっちゅっちゅ!?」

 「あ、まさか・・・。仕立て屋・テラーさん?」

 あれ・・・? なんか変なヤツだ。間違いないわ、これ。



 「あいっ!! わたしわっ!! 仕立て屋のテラー・テーラーですぅうう! どうなさったんで!? で!? こんぬわところにぃいい!?」

 「いや、『赤の盗賊団』を討伐に来たんだよ。父さんのカタキだ。『血の復讐』を行うんだ。」

 「まっさっくわぁ!! カシムさん・・・殺られちゃった! ん・ですかわぁ??」

 この仕立て屋は、月氏の者らしい。ネズミ種族はすぐわかるな。どうやら、ジュニアくんたちとも顔見知りのようだった。



 「ああ・・・『赤の盗賊団』に襲われたんだ・・・。」

 そうジュニアくんがつらそうに声を出した。まだ思い出すのもつらいんだろう。

 「それわわぁ・・・気の毒でっすねねね。サンドワームってやつはやべぇ魔物ですからねぇ。カシムJr坊っちゃんもお気を確かに・・・ね!!」

 いやぁ、この仕立て屋テラーってやつ、変人キャラ・・・いや、変ネズミだわー。いちいち喋り方が・・・キモい!

 「おい! テラー! おめぇさん・・・『赤の盗賊団』についてなにか知ってることないでやすか?」

 ジロキチがそう尋ねた。



 「あたしゃ・・・なぁんも知らねねずみ・・・。なにかわかったら、お知らせしますぅんよ!!」

 「ああ、頼んだでございやすよ? 『楼蘭』の出身のおめぇさんだ。『血の復讐』わかるでございやしょ? 協力しろでやすよ!」

 「もっち・・・ろん!! でっすよよよ!!」

 なんだかクネクネして気持ち悪い動きするヤツだ。





 「あ、『情報屋ヤプー』ってこの近くだよね? どこにあるんだい?」

 オレが仕立て屋テラーにそう尋ねた。

 「あっちぃいい!! でっす! よよ!」

 全身でそっちの方向を指し示すポーズをとって教えてくれた。根はいいやつみたいだな。

 変なヤツだけど・・・。

 「ありがとね。テラー。」

 ジュニアくんがそう告げ、オレたちは仕立て屋テラーの示したほうへ足を進めた。



 『情報屋ヤプー』の場所はすぐわかった。

 さすがに情報を取り扱う業者だからこそ、自身の店舗の位置情報をわかりやすくみんなに知らせる術に長けているらしい。

 あちらこちらに看板があり、道順もわかりやすく矢印表記されている。旧世界の高速道路の道路標識や、ジャ●コやイオ●などのスーパーの場所のお知らせなんかと同じだ。



 『ヤプー』・・・そこで見たのは、なんだか毛むくじゃらの猿のような生物で、じゃらじゃらアクセサリーをいっぱい身につけている生物だった。

 「げひひ。マイド! いらっはい。何かお求めでっか?」

 ヤプーの主人が声をかけてきた。








 後から聞くところによると、『フウイヌム国・馬国』では、ヤプー種族は邪悪で汚らしい毛深い生物と見られているようだ。
ヤプー種族は、人類を否定的に歪曲した野蛮な猿のような種族であり、ヤプーの中には退化した人間性が見られた。

 ヤプーは、酩酊性のある植物の根によるアルコール中毒に似た習慣を持っており、絶え間なく争い、人間にとっての宝石類のように無益な輝く石を切に求める習性がある種族とのことだ。



 「店主さんですか? オレはジン。こっちはカシムジュニアだ。『赤の盗賊団』の情報がほしい。」

 「ほう。『赤の盗賊団』かいな。わては『ヤプー』のサルワタリですわ。ほな、商談といきましょか。なんぼ出します?」

 サルワタリ? 発音も旧世界の日本人にある名前と一緒だ・・・。日本人に何か関係があるのだろうか・・・。

 (透過線解析を行いますか?)

 (そんなことできるの?)

 (はい。では・・・。骨格は人間種と同じです。猿人から進化した種族と推定されます。旧・日本人との関係性は0.001%未満と推定されます。)

 (関係性は・・・薄いということか。)

 (イエス!マスター!)




 オレはひとます日本人との関係性は置いておいて、料金を尋ねてみた。

 「料金表・・・のようなものはないのか? あるいは相場のようなものは?」

 「それは個別で変わりまんなぁ。『赤の盗賊団』の何が知りたいんでっか? メンバーの情報か、アジトの情報か、それとも次に襲われる場所でっか?」



 「そんなにも詳しくわかるの!? お父さんのカタキだ。わかってる情報、全部教えてほしい!」

 ここでジュニアくんが割り込んできた。やはり、お父さんのカタキを一刻も早く討ちたい・・・その気持ちの現われだろう。

 「ほぅ。月氏の坊っちゃん。金は持ってるんやろな?」

 「ああ! 今まで貯めてきたお金が白金貨3枚ある!」

 「ほっほっほ。ええやんか。なーらぁ! わいの持ってる情報、ぜぇーんぶ、おしえたるさかい。」



 「いいのか? ジュニアくん。そんな大金をはたいても!?」

 たしか白金貨1枚で、金貨10枚分、、、金貨1枚で10万円程度だから・・・。日本円換算で300万円か!

 「はい。父のカタキを討つのが使命なんです!」

 「いーい心がけやなぁ。坊っちゃん。じゃあ、これを譲ってあげますわ。」

 そう言ってサルワタリ店長が取り出してきたのは、赤い帽子だった。



 「これは・・・?」

 「レッドキャップの赤い帽子や。『赤の盗賊団』は、レッドキャップという妖精種族なんや。ヤツラはみーんな、赤い帽子をかぶってるんや。」

 「え・・・? ちょっと待てよ。妖精種族ってことは・・・。『エルフ国』の者なのか!? 『赤の盗賊団』の正体は!!」

 「そや。『赤の盗賊団』のお頭はレッドキャップの首長、サタン・クロースや。一味はレッドキャップ種族なんや。」



 「ということは、『赤の盗賊団』のアジトは・・・森の中か!?」

 「ピンポ~ン!! 正解や。ジンのだんな。『ホッドミーミルの森』の中に『ミトラ砦』と呼ばれる砦があるんや。そこがヤツラのアジトや。」

 「サルワタリ店長・・・あなたはなぜそこまでの情報を知ってるんだ? 世間ではそこまで知られていないようなことじゃないか?」

 「むっふっふ・・・まぁ、情報の出どころは企業秘密やな。だーけどやな、確実な情報やで。
どうやら、冒険者ギルドが本格的に動き出すらしいからな。ここらで情報を漏らしたとしても・・・わいらに危険はもうないやろさかいな。むふふのふふふ。」

 「んー。この店長・・・悪い顔してるよー。なにか企んでるとか・・・ないよねぇー?」

 ヒルコがサルワタリ店長の顔にツッコミを入れる。



 「かなわんなー。お嬢ちゃん。ま、その『赤い帽子』は『赤の盗賊団』と出会った際、役に立つやろ。大事に持っときや。」

 「ほかには・・・『赤の盗賊団』についての情報は?」

 「そやな。構成員にレッド・マントってのとレッド・ノーズってヤツがいるけど・・・こいつらは、ほんま強いし狂人や。やべぇやっちゃさかい、気をつけるこったな。
こいつらどちらも身長が半ドラゴンフィートくらいの巨体や、すぐわかるやろ。」

 半ドラゴンフィートって、2.5メートルくらいか。まあ背はかなり高いな。

 「親玉のサタン・クロースについてはなにかあるかい?」




 「サタン・クロースは魔力がはんぱないっちゅう話や。あと、嘘かほんまか知らんけど・・・ガキがおるらしいで。」

 「子持ちなのか・・・!? うーむ。」

 「そや。子供だけは殺さんっちゅう話や。ま、たまたまちゃうかって話しやけどな。」

 「そうか。他にはない?」

 「あかん! もうおしまいや。かんにんしてぇな。かなり重要情報やったやろ? 他では得られへんで。たとえ『ガーゴイル』でも無理やっちゅうねん。」

 「そっか・・・。まぁ、高いお金払ったんだ。当たり前だけどな。」




 すると、そこに一羽の鳩が飛んできた!

 「クルックー!クック―!」

 ひと鳴きしたかと思うと、声が響きだした。

 冒険者ギルド長、アマイモンさんの声だ。

 「えー。えー。ジンさん! カシムくん! シバの女王の謁見許可が降りた。冒険者ギルドにすぐに来てもらいたい!」

 そう言うやいなや、鳩がポンっと消え去った・・・。




 これが、『鳩』の伝令魔法だ。なるほど。一方的に遠距離の相手に伝えることができる魔法ってことか。

 『鳩ぽっぽ』はそうなるともっと多くのことを伝えられるか、あるいは双方向で意思疎通ができるとかかな・・・。

 「ジュニアくん! 行こうか!」

 「はい!ジン様!」

 オレたちはギルドに向かうのだった・・・。




~続く~


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