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目指せ!Sランク!

第103話 目指せ!Sランク! 『情報屋ヤプー再び』

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※キトルからチチェン・イッツァのルート図



 情報屋……それは情報を売り買いし、生業とする者たちだ。

 この街にも情報屋が2つある。『イラム』の街と同じ、『情報屋ヤプー』と『情報屋ガーゴイル』だ。

 うーん。こんなことなら、『ヤプー』のサルワタリに言って、早く『ヤプー』のトップの三猿さんにつなぎをつけてもらっていればよかったな……。



 後手に回ってしまったかな……。

 まあ、いい。とりあえず、この街の『ヤプー』に行って、サルワタリの名前を出せば、少しは有利に話が進むだろう……。

 あいかわらず、看板や標識がわかりやすく出ていて、『ヤプー』の店の場所はすぐわかった。



 「マスター。ここですわ。情報屋『ヤプー』です。あ、あの者が『ヤプー』の店の者でしょうね。サルワタリによく似てます。」

 そう言って、アイが指差した方を見ると、なんだか毛むくじゃらの猿のような生物で、じゃらじゃらアクセサリーをいっぱい身につけている生物がいた……。

 うん……。サルワタリと同じヤプーの種族のようだ。間違いない。



 「むひょひょ。マイド! いらっしゃい。何かお求めでっか?」

 やはりヤプーの主人が向こうから声をかけてきた。


 「店主さんですか? オレはジン。こっちはアイ、そしてイシカにホノリ、アーリくんにオリンだ。『イラム』のサルワタリとは協力関係にある。良しなに頼む。」

 「ほう。サルワタリかいな。あいつが協力するなんて珍しいでんなぁ……。ま……、わしは『ヤプー』のサルトビですわ。何をお求めでっか?」



 あいかわらずヤプーは商談が直球でズバッと来るな。

 しかし、裏もちゃあんと読んでたりするから油断も隙もないんだけどな……。

 しかもまた名前がサルトビ? 発音も旧世界の日本人にある名前と一緒だなんだよなぁ。日本人に関係があるわけじゃあないんだっけ?



 (マスター。そのとおりでございます! この者も遺伝的に日本人とは関係がないと判断いたします!)

 (うーん……。血は引いてなくても何か文化とか伝統とか引き継いでたりする?)

 (それに関してはデータ不足です。不確定要素が多すぎて推測も行えません。)


 ……ふむ。さすがのアイ先生でもやはり情報が足りないと、そうだよな……。



 すると、そこに何者かが『ヤプー』の店に入ってきて、オレたちに割り込んで声をかけてきた!


 「げへへ……。ジンのだんな! おひさしぶりでんなぁ!」

 「な!? おまえは!?」



 それは『ヤプー』のイラム店店長であるサルワタリだった!

 『イラム』にいるはずのサルワタリが、『キトル』にいたのだ。

 どうして……?



 「ジンのだんなもつれない御方やな? 『イラム』に帰ってきてはったんやろ? なんでわてのところに顔を出しまへんのや!!」

 「あ、いや……。なんか忙しかったから……。すっかり忘れてたんだよ……。すまなかったな。」

 「ほんまやで! わて待っとったんやでぇ? わてら協力するお約束でしたやん! かなん御方やわぁ……。」

 「ごめんごめん。『イラム』ではお願いするようなことなかったから……。」

 「それでも何かお役に立てたかもしれまへんやん!」



 たしかにね。ちょっと薄情だったかもね。


 「それにしても、サルワタリ。あなたがどうしてここにいるのです? マスターはあなたに会ってないし、マスターがなぜ『キトル』に来ていると?」

 ミニ・アイの姿のアイがサルワタリに向かって質問をする。

 たしかに……。それはオレも疑問に思っていたところだった。



 「うぇええ!? その姿はアイ様でっか? どないしたんや!? えらい見ない間にそんなに縮んでしまいはったんか……?」

 「この姿はワタクシの分身体なのです。それよりもさきほどの質問に早く答えなさい!」

 アイが周囲の超ナノテクマシンをざわりと動かした。



 「アイ様はあいかわらずのおヒトでんなぁ……。まあいいですわ。もちろん『イラム』のジン様たちのご活躍はわての耳に入ってましたで。それで、わての情報網によるとな、どうやらジン様たちのランクアップには『キトル』の王様が後ろ盾になろうとしているとわかったんや……。そしたらジン様たちは『キトル』の王様に会いに来はるってのは誰でもわかりまっせ?」

 サルワタリはよどみなく答えた。



 「なるほどね。それはそうだったね。」

 「まあ、よろしいですわ。それで……。何の用で来たのかしら?」


 「そやで。サルワタリはん……。ここは『キトル』やで。あんさんの出る幕やおまへんで!」

 サルトビも声をあげる。どうやら商売のテリトリーというものがあるようだ。

 サルワタリはオレたちを見てニヤリと下卑た笑いを浮かべた。



 「それはなぁ……。『三猿』のみなはんっ!! 入ってきておくんなはれ!!」

 ここでサルワタリは店の外に声をかけた。

 そして、店の中へなんやかんや言いながら入ってきた三人? 三匹のじゃらじゃらアクセサリーをいっぱい身につけている猿のような生物が入ってきたのだ。



 一匹は両目にサングラスのようなものをつけていて、もう一匹は口の部分に大きなバッテンマークの書かれたマスクのような布をつけていて、最後の一匹は何やらヘッドホンのようなものを身に着けている。

 あ……! 『三猿』だ……。日光東照宮の神厩舎に掘られていることで有名な「見ざる聞かざる言わざる」だ、これ!

 じゃあ、サングラスの猿が見猿で、マスクの猿が言わ猿で、ヘッドホンの猿が聞か猿か……。



 「そなたがジン様か……?」

 ヘッドホンの猿が声をかけてきた。


 「そうだよ。あなたがキカザルさんですね?」

 オレは質問を返した。



 「いや……。わしは目が見えなくての……。ミザルと申す者じゃ。」

 ヘッドホンの猿が答えた。

 ええ……!? ヘッドホンしてるのに「聞かざる」じゃあないっていうのか……。



 「それじゃあ、あなたがイワザルさんですね? ああ、話せないなら答えなくっていいですよ? 身振りで教えてくれればいいので。」

 オレはマスクをしている猿にそう声をかけた。


 「……。わしに話しかけたのかい? すまんのぉ。わしは耳が遠くてのぉ。ああ、わしはキカザルと申す者じゃ。」

 バッテンマークの書かれた大きめのマスクをした猿が答えた。

 ええ……。そのマスク、じゃあなによ?



 「そのマスク……、なんなの?」

 「ああ。キカザルはのどが『でりけぇと』でな。こうしていつもマスクを着けておるのじゃ。」

 ミザルの補足が入った。



 「で、こっちのほうにおる者がイワザルじゃ。彼は目が見えすぎてなぁ。いつも目を保護しておるのじゃ。」

 そう言って、ぜんぜん違う方を指差して、イワザルを紹介するミザルだった。

 イワザルは身振りで会釈をした。



 「じゃあじゃあ!! そのヘッドホン的なヤツ、いったいなんなのさ!?」

 オレは若干、キレ気味にミザルに聞く。

 そうだよ。まぎらわしいんだよ。



 「ああ。これですか? わしは目が見えないもんでの。そのかわりに音をよく拾えるように拡張機能のついた魔道具ですじゃ。」

 ああ……。そういうことですか……。

 ヘッドホンの猿が聞かざるではなくてミザルさんで、サングラスの猿が見ざるではなくてイワザルさんで、マスクの猿が言わざるではなくてキカザルさんなのね。

 まあ、いいわ。とにかく『三猿』さんね。



 「それで? どうしてその『三猿』さんがここに?」

 うん。『三猿』さんの誰が誰でとかはどうでもいい。このさい。

 『三猿』さんといえば、サルワタリから『ヤプー』のトップだと聞いていた。

 だから、オレはしごくまっとうな質問をしたのであった。



 「そりゃ、ジンのだんな。あんさんの手間を省いてあげまひょって話なんやわ。」


 サルワタリがまたにんまりと笑って答えたのであったー。


~続く~


※地図『キトルからチチェン・イッツァのルート図』をアップしました。
外部サイトですが「みてみん」で「キトルからチチェン・イッツァのルート図」で検索してね!
https://32086.mitemin.net/i484846/
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