R18「僕の手から逃げる事は許さない!」狂愛夫に、塔の上に囚われているが意外と純愛心を持っている【短編集/読み切り】

K.A.

文字の大きさ
10 / 47
「僕の妻になれば、ファーストレディーじゃないか」――いえ、私は、好きな仕事がしたいんです

[溺愛らぶらぶ]彼の妻にされ、きっと私も、世界の敵になっていた。でも、違う未来にたどり着いた

しおりを挟む


「……うん。
 いいよ。
 入ってきて、エリオット……あ……あっ!
 ああう! あんっ!」

「……アリスねえさん……はじめ……て、会った時から……ぼくらは……こうして……身体一つとなる……さだめだったんだ……戦争で、かあさんの優しい手は失ってしまったけど……君が、ぼくの前に……舞い降りてきてくれて……だから……これからも、ぼくと手をとりあって……いきて……」

「エリオット……力が抜けたように身体を、私の上に預けてきて……出したって事……?」

「――また、君の内に僕を刻ませてもらった。
 今度こそ……僕の子の母親になってしまうかもしれないが、後悔はしないかい?
 アリス姉さん。
 構わないと思うのならば、言葉での返事代わりに、僕の身体を強く抱きしめてほしい。
 そして、誓ってくれ。
 君の知らない、僕の素顔を見てしまったとしても、嫌いにならないと。
 子供の頃に、両親を失い、施設に預けられる事になった僕に言ってくれた――絶対に嫌いになったりしないという言葉が、偽りではなかったとしょうしてほしい」

「……あ。
 抜いてもらったところから、あふれているのは、エリオットのものなのかな……足をつたって何か流れ落ちているわよね。
 私の中から、エリオットのものが出てきてるのって……本当は、とても大変な事なんだろうけど……でも、不思議。
 いやじゃないの。
 嬉しいのかって言われると、今は複雑な気持ち。
 だけど、それは、エリオットの顔が目の前にあるからで、優しい視線を向けてもらえなくなったら不安という意味で……そうね。
 嫌いになったりはしたくないわ」

「ありがとう、アリス姉さん。
 僕の身体を、強く抱きしめてくれた意味も、素直に受け止めさせてもらった。
 返事は、今すぐでなくていい。
 妻になってくれないか?
 身体を重ねる事を許してくれている君に対して、責任を取らないのは、礼儀をわきまえないと考える。
 僕の事は心配しなくていい。
 だが、君が、尾籠至極びろうしごくな人間であると、疑われるのは避けたいんだ」

「うん……私の事を、気にかけてくれているのね。
 エリオット、ありがとう。
 そうね。
 感謝を言葉で伝えた上でだけど、お返事は少し待って……今日は、楽しい事が多すぎて、疲れてしまって。
 ひと眠りして、頭がすっきりしている時に、ちゃんと考えてみるから――」

「――アリス姉さん?
 おや。
 もう少しの間、君の方から抱きしめていてほしかったが、眠ってしまったのか。
 残念だが、仕方がないな。
 肩が出たままだ。
 掛け布団だけでは、風邪を引くといけない。エアコンを操作してくるよ」

「……う……うん……」

「ふふ。
 まともには、聞いていないようだね。
 おやすみ、アリス姉さん。
 ……ん?」

『閣下。
 クソ田舎――閣下がいつか滅ぼしてやるから地名も呼ぶなと言っていた、天王寺アリスさんが館の家財整理をしたあげく故郷の奥地へ引きこもった先、在方ざいかた過ぎて軍との情報のやり取りをまともにしないから、すでに書類上から存在を消してやった区画を物理的に破壊する部隊の人員選出リストが完成いたしました。
 および作戦の立案も完了しております』

「……タケ。
 プライベート回線で、軍事関連の連絡をしてくるなと、いつも言っているだろ!
 こんな時に――」

『行為の最中さいちゅうなら、音声通話には出ないだろうと思っておりましたので。
 天王寺アリスさんご本人の今後の処遇など、そろそろ、この竹内イチロウに相談したい事がおありの頃かなと、見計らって連絡したまでです』

「僕に対する嫌がらせではなく、を見るにびんだというのなら、最高のタイミングだ。
 竹内イチロウ。
 さすがは、僕の側近中の側近、という言葉を送っておいてやろう。
 まあ、いい。
 さっそくだが、手筈通てはずどおりに、僕の正妻の御披露目おひろめの話を進めてくれ。
 そして、彼女のご自宅は、この機に故郷を丸ごと家財整理しておいてくれ。
 この場で、下知げちしておく」

『御意のとおりに。
 エリオット・ジールゲン閣下の御心おこころのままになるように、取り計らっておきます――。
 ああっと。
 ここからは、閣下の大学の後輩でもある竹内イチロウとしての話もまじりますが、よかったですね。
 御執心ごしゅうしんだった、天王寺アリスさんが手に入った事、おめでとうございます』

「ああ。
 だが、タケ。
 ここからが意外と大変さ。
 大学時代の彼女を知っているだろ?
 いかにも、軍人を目指していると言わんばかりに、男性のように振る舞っていた。
 僕が、恐怖政治の指導者だと知った時、天王寺アリスは、どのような反応をするのだろうか――はは!
 楽しみだ。
 僕に心を許して、また身体を重ねてしまった。今度こそ、子を宿す事になるかもしれないっ。
 独裁者の妻として、輿入こしいれするしかなくなった現実を、どう受け止めてくれるのだろうかね!」

『閣下。
 それは、単なる惚気のろけであると、私は判断させていただきます。
 最後には、天王寺アリスさんの事を愛しているという趣旨で締めくくられる話など、聞くつもりはありません。
 竹内イチロウは、それほど暇ではございませんので』

「タケ。
 いつも言うが、上官の僕に対して、無礼であるという気持ちをもう少し持て。
 だが、許してやろう。
 天王寺アリスという存在が、僕の手の内におさめられた事で、とても機嫌がいいんだ。
 あははは。
 アリス姉さん。
 明日の朝になっても、君が列車に乗って、自宅だと認識している場所に帰るという出来事は起こらないんだよ!
 君は、これから、僕のもとで生きていく事になるっ。
 ふふ。
 穏やかな顔で、寝息をたてているアリス姉さんに言っておく。
 次に、この軍事施設の外に――いや、座敷牢と等しいこの部屋から出られるのは、君がアリス・ジールゲンとなったのちだからな」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...