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「僕の妻になれば、ファーストレディーじゃないか」――いえ、私は、好きな仕事がしたいんです
[溺愛らぶらぶ]彼の妻にされ、きっと私も、世界の敵になっていた。でも、違う未来にたどり着いた
しおりを挟む「……うん。
いいよ。
入ってきて、エリオット……あ……あっ!
ああう! あんっ!」
「……アリスねえさん……はじめ……て、会った時から……ぼくらは……こうして……身体一つとなる……さだめだったんだ……戦争で、かあさんの優しい手は失ってしまったけど……君が、ぼくの前に……舞い降りてきてくれて……だから……これからも、ぼくと手をとりあって……いきて……」
「エリオット……力が抜けたように身体を、私の上に預けてきて……出したって事……?」
「――また、君の内に僕を刻ませてもらった。
今度こそ……僕の子の母親になってしまうかもしれないが、後悔はしないかい?
アリス姉さん。
構わないと思うのならば、言葉での返事代わりに、僕の身体を強く抱きしめてほしい。
そして、誓ってくれ。
君の知らない、僕の素顔を見てしまったとしても、嫌いにならないと。
子供の頃に、両親を失い、施設に預けられる事になった僕に言ってくれた――絶対に嫌いになったりしないという言葉が、偽りではなかったと証してほしい」
「……あ。
抜いてもらったところから、あふれているのは、エリオットのものなのかな……足を伝って何か流れ落ちているわよね。
私の中から、エリオットのものが出てきてるのって……本当は、とても大変な事なんだろうけど……でも、不思議。
いやじゃないの。
嬉しいのかって言われると、今は複雑な気持ち。
だけど、それは、エリオットの顔が目の前にあるからで、優しい視線を向けてもらえなくなったら不安という意味で……そうね。
嫌いになったりはしたくないわ」
「ありがとう、アリス姉さん。
僕の身体を、強く抱きしめてくれた意味も、素直に受け止めさせてもらった。
返事は、今すぐでなくていい。
妻になってくれないか?
身体を重ねる事を許してくれている君に対して、責任を取らないのは、礼儀をわきまえないと考える。
僕の事は心配しなくていい。
だが、君が、尾籠至極な人間であると、疑われるのは避けたいんだ」
「うん……私の事を、気にかけてくれているのね。
エリオット、ありがとう。
そうね。
感謝を言葉で伝えた上でだけど、お返事は少し待って……今日は、楽しい事が多すぎて、疲れてしまって。
ひと眠りして、頭がすっきりしている時に、ちゃんと考えてみるから――」
「――アリス姉さん?
おや。
もう少しの間、君の方から抱きしめていてほしかったが、眠ってしまったのか。
残念だが、仕方がないな。
肩が出たままだ。
掛け布団だけでは、風邪を引くといけない。エアコンを操作してくるよ」
「……う……うん……」
「ふふ。
まともには、聞いていないようだね。
おやすみ、アリス姉さん。
……ん?」
『閣下。
クソ田舎――閣下がいつか滅ぼしてやるから地名も呼ぶなと言っていた、天王寺アリスさんが館の家財整理をしたあげく故郷の奥地へ引きこもった先、在方過ぎて軍との情報のやり取りをまともにしないから、すでに書類上から存在を消してやった区画を物理的に破壊する部隊の人員選出リストが完成いたしました。
および作戦の立案も完了しております』
「……タケ。
プライベート回線で、軍事関連の連絡をしてくるなと、いつも言っているだろ!
こんな時に――」
『行為の最中なら、音声通話には出ないだろうと思っておりましたので。
天王寺アリスさんご本人の今後の処遇など、そろそろ、この竹内イチロウに相談したい事がおありの頃かなと、見計らって連絡したまでです』
「僕に対する嫌がらせではなく、機を見るに敏だというのなら、最高のタイミングだ。
竹内イチロウ。
さすがは、僕の側近中の側近、という言葉を送っておいてやろう。
まあ、いい。
さっそくだが、手筈通りに、僕の正妻の御披露目の話を進めてくれ。
そして、彼女のご自宅は、この機に故郷を丸ごと家財整理しておいてくれ。
この場で、下知しておく」
『御意のとおりに。
エリオット・ジールゲン閣下の御心のままになるように、取り計らっておきます――。
ああっと。
ここからは、閣下の大学の後輩でもある竹内イチロウとしての話もまじりますが、よかったですね。
御執心だった、天王寺アリスさんが手に入った事、おめでとうございます』
「ああ。
だが、タケ。
ここからが意外と大変さ。
大学時代の彼女を知っているだろ?
いかにも、軍人を目指していると言わんばかりに、男性のように振る舞っていた。
僕が、恐怖政治の指導者だと知った時、天王寺アリスは、どのような反応をするのだろうか――はは!
楽しみだ。
僕に心を許して、また身体を重ねてしまった。今度こそ、子を宿す事になるかもしれないっ。
独裁者の妻として、輿入れするしかなくなった現実を、どう受け止めてくれるのだろうかね!」
『閣下。
それは、単なる惚気であると、私は判断させていただきます。
最後には、天王寺アリスさんの事を愛しているという趣旨で締めくくられる話など、聞くつもりはありません。
竹内イチロウは、それほど暇ではございませんので』
「タケ。
いつも言うが、上官の僕に対して、無礼であるという気持ちをもう少し持て。
だが、許してやろう。
天王寺アリスという存在が、僕の手の内におさめられた事で、とても機嫌がいいんだ。
あははは。
アリス姉さん。
明日の朝になっても、君が列車に乗って、自宅だと認識している場所に帰るという出来事は起こらないんだよ!
君は、これから、僕の下で生きていく事になるっ。
ふふ。
穏やかな顔で、寝息をたてているアリス姉さんに言っておく。
次に、この軍事施設の外に――いや、座敷牢と等しいこの部屋から出られるのは、君がアリス・ジールゲンとなった後だからな」
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