うさぎ獣人のララさんは、推し声の騎士様に耳元で囁かれたい。

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「ララさん? 大丈夫?」

 ハンナが、心配そうに顔を覗き込む。

「あ、だ、大丈夫なんです。ちょっと……」

 耳を押さえたのも虚しく、ふわふわの感触が手に当たってしまう。

「あら……ララさん、来客用のお部屋があるのだけど、そちらに行きましょうか」

 ハンナが、ララの耳を見て、すぐに察してくれたのかそんな風に言ってくれる。ララは、ハンナの気遣いがありがたくて涙が出そうになる。
 
「は、はい。ありがとうございます」

 扉がまた開き、カランカランと大きな音がする。複数の騎士が帰ってきたようだ。

「ただいまー。あれっ、ハンナさん、その子どうしたの?」
「女の子だ」
「えっ、しかも獣人の子だ」
「まじで? 俺、獣化してるの初めて見た!」
「おい、あんま、ジロジロ見んなよ」
「えっ、なんで? 耳、ふわふわでめっちゃ可愛い」

 止めてくれている人もいるけれど、物珍しいからか、ララを見て、若そうな騎士達が騒いでいる。獣化した姿で注目を浴びてしまい、顔が燃える様に熱くなり、変な汗が出てきてしまう。

「ちょっと!! あなた達、ジロジロ見ないの!!!」

 ハンナが若い騎士達を一喝した瞬間、扉がまた、カランッと音を立てた。
「ララさんっ」

 珍しく焦った様な、ララの大好きな、あの声が聞こえた。

「あっ、レオンさん! 良かった。ララさん、レオンさんが来られたわ」
「ララさん」

 獣化したララを見て、レオンは驚いた顔をする。レオンがララのそばに寄り、自分が着ていた上着を脱いで、頭から耳が隠れる様にかけてくれる。ララを囲んでいた若い騎士達を一瞥し、

「何を見ているんだ。失礼なのが分からないのか」

 と、静かだけれど、怒りの含んだ声で言い、若い騎士達の動きが止まった。

「す、すみません、こんな所で獣化してしまって……」
「どうしましょうか。ララさん、レオンさんに来客用の部屋に連れて行ってもらう? 私が一緒に行った方が良いかしら?」
「私が連れて行きます。ララさん、良いでしょうか?」

 レオンが、しゃがんで抱き上げようとしたので、

「あ、大丈夫です。歩けますっ」

 慌てて立ち上がろうとして、ふらついたララを、レオンが支えた。

「失礼します」
 
 レオンにもたれかかったララを、軽々と抱き上げる。

「ララさん大丈夫?」

 と、ハンナに聞かれ、真っ赤な顔でこくりと頷くララを見て、

「じゃあ、レオンさん、お願いしますね」

 ハンナが納得した様に頷いた。レオンが、若い騎士達からララを隠す様に、さっと向きを変え足早に歩いて行く。後ろの方で、

「レオンさん、かっけー」
「ひゅー!」

 と、騒いでいる声が聞こえた。

 廊下を少し歩いた所にあった扉を、ララを抱きかかえながら器用にレオンが開け、中へと入る。一人掛けの椅子と、二人掛けの椅子が、丸机を挟んで置いてあるだけの、落ち着いたしつらえの部屋だ。二人掛けの椅子に、レオンがララをそっと下ろした。

「ララさん、扉の外で、誰も近づかない様に見ていますので、落ち着くまでこの部屋で過ごして下さい」
 
 レオンが落ち着いた声でそう言い、ララから離れようとした瞬間、レオンの服を掴んでしまった。

 獣化した上に注目を浴びてしまい、パニックになりかけていたララは、レオンの声が聞こえた瞬間、心の底から安心し、もう大丈夫だと思えた。久しぶりに聞くレオンの声は、ララの心を温かく満たしてくれる。

「……私がここにいて、できることはありますか?」

 少し困惑したレオンの声が聞こえる。

「すみません……あの……」

 ララが言葉に詰まり、服を掴んでいた手を離すと、レオンが隣に座った。レオンは何も言わずに、俯いているララの顔を、心配そうに見つめる。

「……レオンさんの声、落ち着くんです。お話、してくれませんか?」
「そんなことでしたら……うまく、話せるか分かりませんが」

 レオンが、真剣な顔で黙った。何を喋ろうか、考えてくれているのだろう。

「……ララさん、お元気でしたか? 私は、ララさんと昼食の時間を過ごさなくなってから、また硬いパンやチーズを齧ったり、時々食堂で食べたりしています。……ララさんと話しながら、ララさんの作ってくれたサンドイッチを頂いていたことが、贅沢な時間だったのだと改めて感じていました」
「……レオンさん」
「はい」
「……私も、自分が作ったものを、美味しいと食べてくれる人がいて、とりとめもない話ができる相手がいることが、とても贅沢なことだったんだなと、思っていました……」
「同じ様なことを、思っていたんですね」

 レオンが、目を細めて優しく笑う。
 それだけで、ララは嬉しくて、幸せな気持ちになる。

「……ララさん、身体はつらくありませんか?」

 まだ、獣化しているララの状態を気遣ってくれている。

「やはり、私は出て行った方がいいのではないでしょうか?」
 
 心配そうなレオンの声に、早くなんとかしなければと思うけれど、ララは、自分でいじり過ぎて痛みしか感じなくなったこの身体を、一人でうまく慰められる気がしなかった。

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