雨はやさしく嘘をつく

黒崎優依音

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第七章 認め合う絆

共犯という選択

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sideルアルク



教会を出てからというもの、街の空気がこんなにも柔らかいものだということを、ルアルクは忘れかけていた。

石畳の通りに家々が並び、雨上がりの空には虹がかかる。

行き交う人々は笑顔で声をかけてくる。



「おめでとうございます!」

「まあ、なんて愛らしい……お父様にそっくりですね!」



リシェリアがユリカの手をぎゅっと握り、もう片方の手でルアルクの指を掴む。

小さな掌の温もりが伝わり、胸の奥が熱くなる。



――もう、誰にも彼女を“父のいない子”とは呼ばせない。



その事実が、これほど心を軽くするとは思わなかった。



「ねぇねぇ!パフェ!パフェ食べたい!」

無邪気な声に、さらに笑いが広がる。

ユリカが「今日は特別だから」と頷くと、ルアルクは穏やかに提案した。

「僕はリシェリアと一つを分け合います。ユリカは好きなものを」



運ばれてきたパフェを前に、シェイの碧い瞳がふっと輝く。

普段は滅多に見せない表情に、ルアルクは思わず口元を緩めた。



「パパ、嬉しそう!」

リシェリアが笑い、シェイは小さく咳払いで誤魔化す。

「色合いが綺麗ですね。芸術品のようだ」



ユリカはその様子を見て頬を赤らめる。

横顔を視界の端に捉えるたび、ルアルクの胸がちくりと痛んだ。



だが、娘が彼の腕を引き「お父様、こっちの苺も食べて!」と差し出す。

彼は素直に頷き、娘とひと口を分け合った。



甘酸っぱい果汁が舌に広がる。

いつもなら一口で十分な甘さも、いまは不思議と心地よい。



――どうか、この日々が長く続きますように。



そう願いながら、ルアルクはもう一度小さなスプーンを手に取った。









門をくぐった瞬間、外の明るさが背後に遠のき、足元の空気が一気に冷えた。

石造りの回廊に響く靴音。

そのたび、周囲からの視線が突き刺さる。



「……やはり、あの子を囲っていたのだな」

「直系の名を汚して……」

「どれほどの顔で認められたものか」



抑えた声が、壁を伝って耳に届く。

ルアルクは歩みを止めず、ただまっすぐに前だけを見据えた。



冷笑は確かに冷たい。



だが――父として与えられるものなら、受け入れてみせる。

あの子の傍らに立てるのなら、それだけで誇らしい。



胸の奥がひりつくように痛む。

それを表に出すことなく、唇の端をわずかに引き上げ、静かに息を吐く。



シェイさんの言葉どおり、先に動いたのは正しかった。



だが――これからが本当の戦いだ、とルアルクは思う。



その時、回廊の奥から足音が近づき、従者が深く頭を垂れた。



「ルアルク様。上より、お呼びがございます」

冷気がさらに濃くなる。

祝福の余韻は遠い。



今、待っているのは――新たな試練だった。











通されたのは、こぢんまりとした応接室だった。

扉を開けた瞬間、意表を突く光景に足が止まる。



「んー!美味しい!」



卓にずらりと並んだ皿。

肉も魚も甘味も、ごちゃ混ぜに手を伸ばしている娘がひとり。

口いっぱいに詰め込み、はむはむと頬張る姿は、貴族の娘とも神官の候補とも到底思えない。



こちらに気づいた少女が、パンを片手に振った。

「ふーん?あんたが今日のお相手?いいんじゃない?」



野生児のような笑顔。

あまりに拍子抜けして、思わず言葉を失った。



パンを頬張ったままの彼女は、悪びれる様子もなく笑っている。

マナーなど一切なく、貴族の令嬢に求められる優雅さからはほど遠い。



けれど、その無邪気な笑顔に妙な清々しさがあった。

こういう人もいるのだと気づき、肩の力が少し抜ける。

教会から突きつけられる圧力や、直系という重荷とはまるで無縁のように見える少女。

だが同時に――なぜ彼女のような娘が、縁談に担ぎ出されたのか、その意図を考えずにはいられなかった。



「……あなたは、ここでの暮らしに、不満はないのですか」

気づけば問いかけていた。



「ん?別にー。美味しいもの食べられるし。

 けど、結婚できなかったら困るんだって。

 あたし、後ろ盾ないから」



あっけらかんとした声。

しかし、その言葉に潜む現実の重さに、胸がざらりとした。



(……後ろ盾がない?だから押し付けられた……?)



ふと彼女の瞳がこちらを見上げた。

笑っているはずなのに、奥底に影が差している気がした。



「だからまぁ、よろしくね。――ルアルクさん、だっけ?」

にっと笑った少女が、屈託なくそう呼んだ。



その瞬間、背負わされた重さを少しも見せない彼女の強さに、わずかに心を揺さぶられた。



けれど同時に、胸の奥でざわめきが広がる。

この娘の立場を理解しきったとき――自分はきっと、選ばされるのだろう。









応接室を出ると、さっきまでの奇妙に明るい空気が、扉の向こうに閉じ込められていく。

回廊を歩くうち、再びあの冷たい気配が肌にまとわりついた。



ふと、脇の扉の隙間から人の声が漏れてきた。

足を止めるつもりはなかった。だが、耳に入った言葉が、思わず彼を立ちすくませた。



「……やはり、あやつはまた断ったか」

「ええ。ですが問題ありません。次がある」

「次が駄目なら、あの娘を連れてこよう。

 あやつがどうしても“あの女”を忘れられぬなら、いっそ――」



続く言葉に、血が凍った。



「純白を産んだ女を囲い込み、複数の相手をあてがう。

 あの子も、将来は聖母となる器だ」

「ええ。リリとやらも、混ざらぬ魔力を持つなら利用価値はある。

 後ろ盾がない分、いくらでもやりようがあろう」



乾いた笑い声が交じる。

胃の奥が締めつけられ、吐き気がこみ上げる。



それが教会の本心なのだと、ルアルクは冷たく痛感した。

ユリカもリシェリアも、ただ「道具」としか見られていない。

自分の選択が導く未来が、こんな冷たい計略へ繋がってしまうのか――吐き気がこみ上げる。



その時、気配に振り向くと、壁際にさきほどの少女――リリが立っていた。

先ほどの無邪気さは消え、瞳だけが真剣に細められている。



彼女もまた、この声を聞いていたのだ。





誰もいない石の廊下に、しばし沈黙が落ちた。

リリは壁にもたれかかり、さっきまでの陽気さをすっかり消していた。

大きな瞳が暗がりの奥で光り、真っ直ぐにこちらを射抜く。



「……聞こえちゃったね」

声は軽いのに、底はひどく静かだった。

ルアルクは言葉を探す。

だが喉の奥には、さきほどの言葉の棘がまだ刺さっている。



リリは肩をすくめ、つと口を開いた。

「どうせあたしなんか、混ざらない魔力だから。

 白を増やすために、どっかに閉じ込められて“使われる”んでしょ」



無邪気に笑っていた少女の口から放たれるには、あまりにも残酷な現実。

その受け止め方が、あまりにも達観していて胸が痛む。



「……そんなのは、いくら理由を並べ立てても人権侵害だ。

 君は、それでいいのですか」

「よくないよ。でも、どうしようもないじゃん」



彼女はわざとらしく大げさに息を吐き、ふと視線を戻してきた。

「ねぇ、あんたの子ども、可愛い?」



唐突な問いに、戸惑う間もなく答えていた。

「ええ。……もちろん」



「そっか」

リリの口元に、再び笑みが戻る。

「いいね。気に入った。

 ――じゃあさ、あんたと結婚してあげてもいいよ」



「……は?」



「契約結婚。あたしは絶対、あんたに恋しない。

 あたしは自由でいたいし、掴まるのは嫌。

 でも、あんたは子どもを守りたいんでしょ?

 だったら利害は一致してるじゃん」



小さく首をかしげ、楽しげに笑う。

けれど、その瞳の奥にかすかな諦念が見えたのを、彼は見逃さなかった。



「……共犯、というわけですか」

「そう、それ!」

ぱんと手を打つ音が響く。

差し出された手はひどく軽やかで、同時にどこまでも重い。



ルアルクは静かにその手を握り返した。

この手を取った瞬間から、もう戻れない――そう悟る。



胸の奥が痛んだ。だが、それでもいい。



ユリカとリシェリアを守るためなら、この役目も引き受けよう。









リリとの契約を交わしたその日から、彼の胸には一つの決意が芽生えていた。

彼女を迎え入れる前に、どうしても果たさなければならないことがある。



――ユリカと、リシェリアに会わせること。



ルアルクにとっての大切な人々と、リリがどう向き合うのか。

それを見ずして、この共犯関係を進めるわけにはいかない。



シェイさんには、その決意だけを伝えた。

彼は少しだけ眉をひそめたが、それ以上は何も言わなかった。



「……そうですか」

ただ、それだけ。

けれどその声音の奥に、心配と、そして彼を信じている気配が確かにあった。





sideルアルク



その日、ルアルクはリリを伴ってシェイの屋敷を訪れていた。

教会の壁に囲まれた自室では、もはや彼女たちを迎えることはできない。



あの場所は――安全ではないからだ。



ここまで追い込まれて、彼は初めて教会の危うさを正しく理解した。





静かな応接間に、薪のはぜる音が響いていた。

ルアルクは椅子に座るユリカと、その隣にちょこんと腰かけるリシェリアを見やり、小さく息を整える。



ここでの顔合わせが――すべての鍵になる。





「ねぇ、ルアルク。今日、会わせたい人って……」

ユリカが問いかけた瞬間、扉が勢いよく開いた。



「やっほー!」

飛び込んできたのは、金の髪を揺らす小柄な娘。

ルアルクの隣に立ったかと思えば、すぐに視線を少女へ向ける。



「わぁぁっ!めっちゃ可愛いじゃん!!ルーそっくり!!」

叫ぶなり、リシェリアをひょいと抱き上げてしまった。



「えへへ……でも、強いです……!」

戸惑う声と共に、リシェリアのお気に入りの赤いリボンが揺れる。

だがすぐに、藍色の瞳が嬉しそうに細められた。



「ねぇねぇ!今日からあたしのこと、“リリママ”って呼んで!!」

「リリママ……?」

小首をかしげ、少女は言葉を繰り返す。やがてぱっと笑顔を弾けさせた。

「うん!リリママ!」



無邪気な声に、部屋の空気がふっと和らぐ。

ユリカも思わず微笑んだ――まるで張りつめた糸がほどけるように。



すると今度は、リリが彼女へ向き直る。

「わぁぁ、ユリカちゃん!可愛い~!

 ルー、めっちゃ見る目あるじゃん!

 こんな可愛い人と可愛い娘がついてくるとか最高!!」



勢いのままに両手を広げ、ユリカへ抱きつく。

突然のスキンシップにユリカが驚いたように目を瞬かせたが、やがて苦笑しながらその腕を受け入れた。



「……本当に、あなたって……」

「でしょ~?あたし、ユリカちゃんのこともリシェリアちゃんのことも、めっちゃ気に入った!」



その笑顔に、ルアルクは胸の奥の緊張が少し解けていくのを感じた。



利害の一致だけではない。

彼女は――きっと本気で、大切に思おうとしてくれている。



「……こういう人です」



静かに言葉を添えると、リリは振り返り、いたずらっぽく笑った。



「じゃあ、よろしくね。今日から“共犯”なんだから!」





sideルアルク



夜更けの記録庫前は、蝋と古紙の匂いが濃かった。



廊下の端、鉄扉の脇に「文書取次」と刻まれた無人の投函口がある。

外から差しこむだけで、内側の刻印盤が自動で受領印を落とす仕組み――人を介さない、それだけが今の救いだった。



机代わりの細い腰壁に、二枚の紙を並べる。

上は教会の婚姻届。下は二人だけの覚書。



「最終確認ね」

リリが身を寄せ、指で覚書の条文をとんとんと叩いた。

「寝室は別。恋愛はしない。『そういう意味の接触』は――指先ひとつでもしない」

「……加えて」ルアルクは末尾に小さく書き足す。

「教会改革が進み安全が確保され次第、君を自由にする。逃がす段取りは僕が負う」



リリは笑って、しかし目は真剣だった。



「了解、推し夫婦の護衛任務。ユリカちゃんが笑ってくれたら満点。

 ルーが隣で胸張れてたら花丸」

「シェイさんになり替わろうなんて思ってないんだけどな」

苦笑いしつつ、書面を睨むように見据えた。



ペンを握る。普段なら整った書体で書くはずの名を――今日は、違う。



ガリ――。



紙が鳴くほどの筆圧で、名前を殴り書く。

滲んだインクが夜気で冷え、黒く固まった。

隣でリリが「じゃ、合わせるね」と悪戯っぽく口角を上げる。



ガリ、ガリッ。



見事なやけくその署名。

最後の一画でハートを描きそうになって、ぴたりと止めた。



「セーフ。私情は覚書だけにしとく」



婚姻届を二つ折りにし、紅糸でひと結び。

覚書は革の書類箱へ――鍵をかけて、胸の内ポケットに押し込む。



「行くよ、相棒」

リリが拳を差し出す。

ルアルクは短く息を吐き、拳をそっと合わせた。



二人で投函口の蓋を持ち上げ、婚姻届を落とす。

カシャン、と小さな金属音。内部の刻印盤が降り、受領の印が押された合図だ。



人の手は、要らない。



「……これで、戻れない」

「戻らないよ」リリは肩をすくめる。

「前だけ見よっ」



蝋燭の炎が細く揺れ、廊下の石に二人の影が並ぶ。



革箱の中で覚書が静かに眠る――約束の重みといっしょに。





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