雨はやさしく嘘をつく

黒崎優依音

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第八章 開かずの扉がひらくとき

ひび割れた静寂

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sideルアルク



入城の儀は拍子抜けするほど軽やかだった。

赤絨毯の先、玉座の脇に立つ第一王子が目を丸くし、王は思わず腰を浮かせる。



「やっほー、陛下。

 ……大きくなったね、第一王子。最近第三王子が生まれたんだっけ?」

「シェイフィル様――いえ、その、頭を――」

「やめてくださいってば。王権は“預けた”側です。僕に頭を下げないで」



黒髪の青年は、まるで旧友にでも会ったように笑った。

対する王は苦笑しつつも姿勢を正す。



「聞こう、シェイ様。教会の件だな」

「今日は、お願いがあって来ました。……協力してもらえませんか?」



王が「シェイ様」と呼ぶ――その一語が耳から離れない。

しかも、王は思わず頭を下げかけ、シェイが片手でそれを制した。



(……逆だ。頭を下げさせるのは、こっちじゃない)



目の前の“軽口”は、礼を崩しているのではない。むしろ、王が彼に歩調を合わせている。



胸の奥がすうっと冷える。

ルアルクは思わず肩をすくめ、視線を落とす。



――王の間で呼吸を浅くする癖は、子どもの頃から変わらない。



シェイは一歩進み、声の温度をわずかに下げる。



「治外法権を盾に、人道に背く行いを“不可侵”とする空気ができている。

 まずそこを、王家の名で止血したいんです」





王は第一王子と目を交わし、短く頷いた。



「王命で特別監査を復活させましょう。

 “人を守るためなら、教会にも立ち入れる”という権利です。

 昔に一度だけ前例があります。

 これを『王命特別監査令』とします」



「助かります。

 裁きの場に引き出すには、きっかけが必要ですから。

 ――“来ない自由”はこちらから奪わないと」



そこでシェイはふっと目を細め、笑みを浮かべながらも声を鋭くした。



「よりによって“うちの子”に手を出しましたからね。

 親として、相応の報いを受けてもらう……そうですよね、陛下?」



王は短く息をのみ、それから静かにうなずいた。

「当然だ。王家はそなたらを支える。

 ――責任を預かる者として」



第一王子がルアルクに視線を向ける。

「ルアルク・ノア・アストレイド。

 きみの証言も必要だ。恐れずに話してほしい」



「……は、はい」

喉が乾く。声が震えた。



シェイがさりげなく彼の肘に触れ、無言で合図する。

(大丈夫だ)――青の瞳がそう語っていた。



「では整えましょう。

 王命特別監査班を設け、治外法権の一時停止も認めます。

 すぐに動けるよう、今日から施行です」



「それから……公の場では“公爵”として立ってください、シェイフィル様」



王の言葉に、シェイは肩をすくめて軽く応える。

「必要な時だけ――それでよろしければ」



「任せた、シェイ様。そして……ありがとう」



(……公爵? 今、陛下はそう呼んだ。冗談じゃない。王が“任せる”側の声音だった)



軽い挨拶で始まった面会は、短く、しかし決定的に終わった。

“開かずの扉”に、ひとつ鍵が差し込まれた――そんな手応えだった。





王命はその日のうちに実行された。

城の監査局、王立文庫、ガーディアン本部、そして教会側の協力窓口――四者合同で「王命特別監査班」が編成される。

内訳は、封呪班と警護隊を抱えるガーディアン本部、記録を管理する城監査局と王立文庫、そして名目上の教会側担当。



最初に調べるのは、教会中央書庫の「出生・婚姻・人事」の三つの記録だ。



「開架は封鎖。閲覧は監査立ち会いのもと、三者の印が必要です。

 複写は二部、原本は耐火箱に。

 搬送は王印・公印・教印の三重封蝋。破られれば即違反とします。……異議は?」



誰も反論できない。沈黙が重く落ちた。

シェイはさらりと笑い、最後に一言だけ釘を刺す。



「治外法権は“人を守るための壁”です。

 その内側で人が傷つくなら、一時的に壁を外すしかない。今日は、そのための合鍵を作りに来ました」



淡い緊張が場を包み、空気が引き締まった。





その夜、屋敷に戻ると食卓には湯気の立つスープと焼きたてのパンが並んでいた。

外套を脱ぎながら、シェイが簡潔に告げる。



「王命特別監査は動き出しました。編成も完了です」



ユリカはうなずき、帳簿の束を広げて指で示した。

「仕入れ台帳の数字が合いません。同じ伝票が二重に計上されています」

「修繕費も水増しの痕があります。寄付金の一部が戻っていますね」



リリが身を乗り出して覗き込み、

「ルー、ここ“空振り伝票”だよ。押印は教会側の書記」

と素早く拾う。



シェイは短く息をつき、「助かります。やっぱり現場の目は鋭い」と笑みを返した。



その時、ルアルクがぽつりと呟く。



「……ユリカ、いつの間にか“公爵夫人”になっていたんだな。知らなかった」



聞き慣れない言葉に、ユリカは一瞬目を瞬かせる。

「ま、待って。なにそれ、聞いてない」



視線は自然とシェイに集まった。

ミーナがカップを配りながら、じとりとした目で問い詰める。



「……シェイ様、まさか説明もしないまま奥様を迎えられたのですか」



叱られた子どものように苦笑しつつ、シェイは頭を下げる。



「……ごめんなさい、ちゃんと説明します。

 法律上、僕は“公の場”でだけ公爵を名乗ります。

 裁きや監査、予算の保証――いわば“壁の監督役”です。

 その経緯は代々の王にだけ伝えられています。

 普段はただのシェイフィル・ラファリス・ナーバ。

 肩書を強制するつもりはありません。

 ユリカさんも、公的文書に限って“公爵夫人”と書かれるだけです」



「じゃあ普段は――」



「普段は家族。いつも通りでお願いします」



ユリカは心底安心したように笑みを浮かべ、シェイも微笑みを返した。



「はいはーい、公爵夫人でもユリカはユリカ!」

「ママはママ~!」



リリとリシェリアの明るい声に、食卓の空気は一気に和らいだ。









食後、リシェリアが毛布を抱えたまま駆けてきた。



「今日はみんな一緒にねる?」

「はいはい、川の字にしよっ」とリリがちゃきちゃき布団を敷く。



並びは自然と決まり、ユリカ、リシェリア、ルアルク、シェイ、最後にリリが潜り込んだ。



灯りを落とすと、静けさが降りる――が、やがてシェイの袖口を、眠りかけのルアルクの指が無意識につまんだ。



ユリカがくすくす笑う。

「子どものころから変わらないね」

「観察はありがたいですが、救援は――」とシェイが小声で困ると、ユリカがリシェリア越しに彼へと手を伸ばし、優しく誘導する。



指先は自然にそちらを握り、シェイの袖が解放された。

ユリカは肩をすくめ、「抱きつかれるほうは大変だけど、嫌いじゃないよ」と柔らかく笑う。

シェイは少しだけ複雑そうな表情を浮かべつつも「救援ありがとうございます」と礼を述べた。

リシェリアが「今日はみんな一緒だから大好き」と呟き、布団の中で頬を寄せる。



「では……灯りを落としますね。おやすみなさい」シェイが布団を整え、ランプを消した。

いつもは少し広い寝室が、この夜だけはちょうどいい。

温もりが、音もなく部屋いっぱいにひろがっていった。





sideルアルク



翌刻、初動の担当班にルアルクはシェイの指名で入った。

白大聖堂の地下、温度と湿度が一定に保たれた中央書庫。

金属の引き戸が重く滑り、インクと古紙の匂いが肺に落ちてくる。



「本日は出生・婚姻の台帳を優先します。写本は王城に、原本は分散耐火保管へ」



監査官が段取りを読み上げ、抄写役の書記たちが席につく。

ルアルクは最初の束を受け取り、ページの端に指を差し入れた。

指先が、かすかに震える。



(……ここに、すべてがある)



時折、視界の隅を横切る表紙――『母体保護記録』『洗礼登録』『家系照合票』。

閉じた表紙の向こう側に、言葉にしたくない何かの気配がある。

顔を上げると、薄く笑うシェイの青が、こちらを定点のように見守っていた。







sideルアルク



書庫の奥から煙が吹き上がった。

紙が焼ける匂いと、熱気。

立ちすくむ司書を押しのけて、ルアルクとシェイで結界を張る。

風は使えない。

火を煽れば一気に広がるからだ。



「窒息で落とす。……合わせてください」



シェイの低い声にうなずき、白を結界の縁に流し込む。

空気を奪われた炎は痩せ、やがて黒く沈んだ。



……間に合った。

束を抱えて出ると、表紙は焦げ、まだ熱をもっていた。



「シェイさん! ルー!」

廊下を駆けてきたのはリリだった。

顔は真っ青で、息が荒い。



「ユリカとリシェリアが……攫われたのっ!」



視界が弾ける。

耳の奥で鐘が鳴ったように、すべての音が遠のいた。



「……何で」

言葉にならない声が喉を焼く。



「教会の中庭にいたの。

 あの人たち、神官の姿をして……!

 あたしが気づいた時にはもう……!」

リリの声は震えていたが、確かだった。



考えるまでもない。

教会以外にありえない。

「行く!」反射で駆け出そうとした、その時――





「――お待ちください」



冷たい声が空気を断ち切った。

司書長が刻印盤を掲げ、震える指で印影を示す。



「最終入室記録。……ルアルク・ノア・アストレイド。

 ルアルク様、これは、どういうことですか?」



空気が凍りついた。

背に突き刺さる数十の視線。

火を放ったのは“彼”――そう告げる沈黙。



「そんなはずは……! 僕じゃない! 今はそれどころじゃ――!」



「ですが記録がそう示しています」

「関係者は行動を制限させていただく決まりです。

 疑いが晴れるまでは、教会内への立ち入りが原則禁止となります」



「っ……!」



走り出したい。

すぐにでもユリカとリシェを探しに行きたい。

なのに足が床に縫いとめられる。

怒りで喉が焼ける。悔しさで拳が震える。



「……僕も、ですか」



シェイの声が低く響く。

淡い笑みを浮かべながらも、目は冷たかった。

「共同の父――なら、共犯の可能性もあると?」



「もちろんです。……そして、その“妻”も」



視線がリリに注がれる。

彼女は奥歯を噛みしめ、唇を血がにじむほどに噛んでいた。



三人とも、動きを封じられた。



(こんな時に……! ユリカとリシェが、目の前で危険に晒されているというのに!)



熱と煙よりも、濡れ衣と足止めの方がよほど息を詰まらせる。

胸の奥で、爆ぜるような怒りが渦を巻いていた。





――そんな中、シェイだけは声の調子を変えなかった。

「現場はすぐに封鎖してください。

 証拠が隠されれば本当に調べようがなくなります。

 僕の名前を出せば、王命監査に動いている職場がすぐに応じるはずです。

 もちろん僕自身は現場にも証拠品にも触れません。

 ……心配なら監視を付けて構いません」



その言葉は冷静で、理路整然としていた。



だが、よく見ると右手がひとつ、きつく握りしめられている。

指の関節が白く浮き、爪先に小さな血色が差しているのが見えた。

唇の端を薄く引き結び、瞳はいつもの穏やかさを保っている。

けれど肩の線が硬く、呼吸の出入りが少し浅い――プロとしての癖で動いているのだと分かっても、その背後にある不安が透けて見える。



(本当は、すごく怖いんだ)



そう思わせる何かが、――手の甲に滲む微かな震えに宿っていた。



ガーディアンが呼ばれ、数人が現場保全と監視の手配に動き始める。

それでも、ユリカとリシェリアの行方を追う音はまだどこからも聞こえてこなかった。



「……自分の部屋に戻るのは、許されますか?」  

ルアルクの問いに、監視役の神官が少し黙り、うなずいた。  

「私物を持ち出す程度なら構いません。

 ただし、監視はつきます」  



返ってきた言葉にほっと息をつく。

ありがたかった。

せめて身なりを整える必要がある。  

部屋にも戻れないままでは、心まで折れてしまいそうだった。  



こうして彼らは、監視に付き添われながら自室へと戻った。





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