雨はやさしく嘘をつく

黒崎優依音

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第八章 開かずの扉がひらくとき

眠れぬ夜、ほどける心

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sideルアルク





雁字搦めの白結界が、幾重にも折り重なっていた。

まるで複雑な結び目をいくつも絡めたようで、触れれば硬く、すぐにまた別の層が補強を始める。



ルアルクは額に汗をにじませ、両手をかざした。



(……正攻法でいくしかない。必ず解けるはずだ)



一つ結びを緩めても、また新しい光の糸が重なっていく。



まるで知恵の輪。

彼は諦めずに指先を動かし続けた。



(……解けるはずだ。きっと理屈はある)



白い魔力を指先に集め、ひとつずつ結び目をほどこうとする。

だが手を伸ばすたび、別の糸が絡み合い、さらに堅牢に固まっていく。

汗がにじみ、息が荒くなる。



「――ルーくん」



背後から低く響いた声に、思わず振り返る。

黒髪の青年が、静かに笑んでいた。



「こういう結び目は……ハサミで切った方が早い」



次の瞬間、空気が凍りついた。

彼の掌に集まった黒の魔力が、鋭い刃のかたちを取る。

光を呑み込み、艶めくようにきらめく――綺麗で、妖しく、そしてどこか禁忌めいた存在感。



刃が振り下ろされると、純白の結界が悲鳴をあげる。

雁字搦めの結び目も、重ねられた層も、一息に裂かれていく。

黒が走るたび、白が砕け散り、光の欠片が舞った。



(……見惚れている場合じゃないのに)



胸が早鐘を打つ。

禁じられたものを目にしているはずなのに、あまりに美しくて――目を逸らせなかった。



光が崩れ、白の結界が散っていく。

その向こうから、銀の髪が駆けてきた。



「ルアルク!」



理性より先に、ユリカが腕の中に飛び込んでくる。

震える肩を抱きとめながら、胸の奥に苦いものが広がった。



(……役得、なんて思う自分が情けない)

(それよりも――ここまで不安にさせたこと、そして……シェイさんへの顔向けが……)



腕を回すことに、一瞬ためらいが走る。

けれど、彼女の震えを無視することはできなかった。

そっと抱き返す。



足元で、リシェリアが母を真似るようにしがみついてくる。

だがすぐに視線の先に黒髪を見つけ、涙声で叫んだ。



「パパっ!」



次の瞬間、小さな体はシェイへと飛びついた。



必死にしがみつく腕。

「絶対に離れない」という怯えが、その全身から伝わってくる。

シェイは無言で、その震えをしっかりと抱き締めた。



――青の瞳と目が合う。

わかっている、という静かな色。

けれど彼は何も言わず、ほんの少しだけ視線を逸らした。



胸の奥が痛んだ。

それでも今はただ、腕の中の温もりを離さないように強く抱き締めることしかできなかった。





「……愚か者どもが」



背後で、なおも冷たい声が響いた。

拘束されながらも、ルアルクの父は唇を動かし、言葉を吐き続ける。



「その娘を産んだことだけは褒めてやる。だが、それきり次を作らぬとは……。

 愛や恋に酔う愚か者どもめ。

 白の血統の前には、そんなもの塵ほどの価値もない」



ユリカを抱き寄せる腕に、ルアルクは自然と力を込めた。

父の言葉を、もう二度と彼女には届かせまいと誓うように。





強く抱き合う彼らの姿を鼻で笑うと、その視線を今度は黒髪の青年へ向ける。



「婚姻など無意味だ。

 白はそれでは縛れぬ。

 ……黒の直系など、なおさらだ。

 存在そのものが、神の秩序を汚す異物よ。

 その腕に抱かれているのが直系の娘とは……嘲笑うしかない」



少し目を伏せたきり、何も答えず、ただ娘を落ち着かせるべく抱きしめるシェイの姿がルアルクの胸を打った。



「……哀れですね。

 これほど強く、美しい魔力を前にしても、それを“異物”としか呼べないとは」



驚くほど静まり返った声で、ルアルクはそう呟いた。





sideユリカ



ナーバ家のリビング。

ランプの灯りが揺れる室内に、ユリカは静かに帰ってきた実感を抱いていた。



ユリカはリリに腕を引かれるようにして、気づけばソファーの真ん中に座らされていた。



片側にルアルク、反対にリリ。

両脇から伝わる温度に、胸が締めつけられる。



「ほら、こっちに座って。ね? ルーはそっち」

リリが段取りを決め、楽しげに笑った。



ルアルクは微かに眉を寄せたが、逆らわず隣に腰を下ろす。



袖口に触れるか触れないかの距離――けれど、それだけで心が少し楽になる。

彼が近くにいる。

それだけで、まだ大丈夫だと思えた。



向かいの椅子にシェイが腰かけていた。

穏やかな眼差しの奥に、どこか突き放したような静けさを宿して。



「……言える範囲で構いません。

 捕らえられていた間のことを教えてください。

 ……あの男に何を言われました?」



喉がひりつく。

ユリカは唇を開きかけて、すぐ閉じた。

「……言えません。あんな言葉、ルアルクに……」



隣で、彼の指がそっと自分の手を取った。



「ユリカ。僕は聞きます。

 どんなにひどい言葉でも、大丈夫です。

 ……僕は、聞く覚悟があります」



彼の藍の瞳に、逃げ場はなかった。

ユリカは涙を堪えながらも頷き、震える声で父の言葉をひとつひとつ紡いだ。



――道具。半人前。役目を果たせ。



その冷酷な響きが、また胸を切り裂いていく。



言い終えたとき、息が乱れていた。



「……ごめんなさい。こんな酷いこと、あなたに聞かせたくなかった」



ルアルクは小さく首を振り、微笑もうとした。

「大丈夫です。あの人の言葉には……慣れていますから」





その一言に、心臓が痛むほど締めつけられる。



慣れるほど繰り返し傷つけられてきたという事実。

それでも彼は、笑って自分を安心させようとしている。



涙が頬を伝った。



「……そんなの、大丈夫なわけないじゃない」



沈黙。

その静けさを破ったのは、シェイの低い声だった。



「幼いころの彼は、姉を慕う素直で無垢な少年に見えました。

 ……それすら歪められてしまうのは、悲しいことです。

 ルーくん。あなたは、よくそんな中でまっすぐに育ちましたね」



ユリカははっとして隣を見た。



ルアルクは俯いたまま、何も言わなかった。

ただ自分の手を握る力だけが、静かに強まっていた。







重たい沈黙のあと、それぞれが口を閉ざしたまま夜を迎えた。

翌日が裁きの日であることを、誰もが意識していた。







sideユリカ





夜更け。



食器は片づき、卓上には湯気の立つポットと薄い蜂蜜の香りだけが残っていた。

暖炉の前ではリリがリシェリアに絵本を読んでやっている。



赤いリボンが揺れて、やがて小さな寝息に変わった。



ユリカはカップを受け皿に戻し、向かいの男に向き直る。



「ルアルク。明日、私も証言台に立つわ」

彼は一瞬だけ目を見開き、こくりとうなずいた。



「……ユリカ」

「だから、全部を一人で抱え込まないで。

 私はあなたを見てる。ずっと傍にいる」



そっと、両手で彼の手を包む。



固くなっていた指が、少しずつ温度を取り戻す。

ルアルクの耳の先が、かすかに赤く染まった。



「……ありがとう。心強い」

声は低く、けれどほんのわずか震えている。



そこで、リリが顔だけこちらへ向けてにやりと笑った。



「うわ、ルー、顔まっか。ユリカに“ぎゅっ”されてとけてる~」

ユリカは思わず困ったように笑い、手は離さなかった。





「ユリカさん」

シェイが冗談めかして肩をすくめる。

「ルーくんは純情なんですから、あんまりからかったらだめですよ」



「からかってなんていません」

ユリカは微笑む。



「励ましているの」



「それなら合格です。

 ……嫉妬は、少しだけしておきますけどね」



軽口に、場の緊張がほどける。

リリは寝入ったリシェリアをそっと毛布で包み、「明日は勝ってこい、相棒」と親指を立てた。

ユリカはもう一度、ルアルクの手をきゅっと握る。





窓の外、夜は静かに深まっていく。

四人のあいだに確かなあたたかさだけを残して。





sideシェイ



救出から数刻。

ようやく静けさを取り戻した家の寝室から、かすかな寝息が聞こえてきた。



ユリカとリリが間にリシェリアを挟んで、三人くっついて安心しきって眠っていた。





今夜くらいは安らかに眠ってほしい――シェイはそう思い、そっと扉を閉めた。





居間の片隅、灯りも落としたまま、ただ月明かりに縁取られて座り込む影がある。



ルアルクだった。



握られた両手が膝の上で強く組まれていて、わずかに震えているのが見て取れる。





「……眠れないんですか」



シェイが声をかけると、ルアルクは肩を揺らし、苦笑した。

「シェイさんこそ」



「僕はもともと夜更かし気味なんです」

軽口で返すと、ルアルクはふっと視線を落とした。





しばし沈黙。



やがて、彼はゆっくりと口を開く。



「……さっきは、強がっていましたけど」

「?」

「本当は、乗り越えられてなんていないんです」



震える声が、静かな空気を切った。



「明日、またあの人を目にすると思うと……手が震える。

 ユリカや……シェイさんに、またひどいことを言うんじゃないかと思うと、怖いんです」



――ルーくん。



その名を心の中で呼び、シェイはそっと隣に腰を下ろした。





「……怖がって、いいんですよ」



「……」



「僕だって、全部を乗り越えたわけじゃない。

 今でも過去に囚われる夜はある。

 忘れられないことは、どうしたって残るものです」





ルアルクは顔を上げ、青白い月明かりの中でまっすぐこちらを見る。

藍の瞳が、かすかに揺れていた。



「でも、支えがあれば……立ち続けられる。

 “乗り越える”必要なんてない。

 大切な人と一緒なら、“前に進める”」



しばらくの沈黙ののち、ルアルクの唇がわずかに緩んだ。

「……僕も、強くなりたいですね」



シェイは笑った。

「あなたはもう十分、強い人ですよ」



二人の間に、ようやくわずかな安堵の色が落ちた。





窓の外では、夜明け前の白が街を薄く染め始めている。



眠れぬまま杯を重ね、彼らはただ黙って夜を分け合った。





翌朝。

リビングのソファ。



テーブルの上には昨夜のまま片付けられていない杯とポット。



そして――



背を預け合って並んで眠る、シェイとルアルク。



肩と肩がくっついたまま、呼吸を揃えてぐったり寝落ちしていた。



「……あれ?」



リシェリアが目をこすりながらリビングに入ってきて、ぴたりと足を止める。



じーっと二人を見つめ、ぱちぱち瞬きを繰り返す。



「……仲良し……?」



ぽそっと呟いた声に、後ろから顔を出したリリがぷっと吹き出した。

「なにこれ、なんだかいい感じじゃない」



ルアルクは小さく唸って目を開ける。



「……リ、リシェ?」



「お父様、パパとくっついて寝てるー!」





その声にシェイも飛び起き、慌てて距離を取る。

「ち、違います! これは……!」

「はは、弁解が余計怪しいんですけど」



リリはにやにや笑いながら両手を腰に当てる。

「ま、まぁまぁ。これで今日のチームワークもばっちりでしょ」



リシェリアは「ふふっ」と笑って駆け寄り、二人の手をぎゅっと取った。

「じゃあ今日も、三人で頑張ってね!」



リシェリアに両手を取られて笑っているところに、背後から柔らかい声。





「……あなたたち」



振り返ると、ユリカがキッチンの方から現れていた。

朝の光を受けて髪がふわりと光り、けれどその瞳はきっぱりしている。



「夜更かししたでしょう。

 ……今日、裁判できるんですか?」



ド正論。

ぐっと詰まる二人。



「え、えっと……」とシェイが気まずそうに頬をかく。

ルアルクも「……すみません」としゅんと頭を下げる。



リリは横で肩を震わせて笑っている。

「ほら、やっぱり怒られた~」



リシェリアだけが無邪気に「でもでも!お父様とパパ仲良しだったよ!」とフォロー(?)して、さらに空気が混沌に。



ユリカは小さくため息をつき、けれど最後には柔らかく微笑む。

「……本当に。子どもより先に怒られる大人が二人もいて、どうするんですか」



「はい、すみません」



二人の声が揃い、場は笑い声が響き渡った。





――錠は、落とされた。



後は、開くだけだ。





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