愛した人は青空の瞳〜御使いシラサギと3つの選択〜

平川

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◇本編

57.

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 爆発が収まり、その間に戦闘の終息も見えた。


 テオルドの殲滅部隊は戦争孤児や傭兵。暗殺を生業にしている者など出身は様々だ。能力の高い者だけを集めて来た。
 公爵領に専用の衣食住の手厚い施設、鍛練場などを造り、現在はチャズール王国を影から表向き他国より防衛する任を担っている。

 王国軍とは違うもう一つの戦力。
 指揮系統の頂点は公爵ではない。
 テオルドだ。

 公爵家に仕えている騎士の中ではトーザを含めた3人だけがこの殲滅部隊に入っている。


 発端は10年前。あの日神託を受けたテオルドは直ぐ様行動を開始した。当時は公爵家の名を十二分に使い国内では半年に一度全ての孤児院で体力、運動能力測定を実施しては高い数値の者だけを引き取り、指南役に騎士達を就かせた。
 徹底的な主従の概念を植え付け能力による配置、組織化を組み立てる。飴と鞭を効率よく一人一人に使いこなして心を掴んで行く。

 歳を重ねる度に更に強い力を探し出し囲い込み、いつしかテオルドは「主」と言われるようになりその規模は年々増え続けた。

 唯の一人の公爵子息には出来るはずも無いそれは、テオルドの「異能」から来るモノであった。


 彼は

【覇王】の命運から成る特別な魂を持っていた。

 《邪同化》による絶対的な力と人を従わせ集める事が出来る才能と運。
 防衛か侵略か。全てはテオルドの指先一つで決められる。

 それは同時に戦乱の世の幕開けを予兆させる事になる。
 最大の運と力を手に入れる事が出来る彼の存在は国の命運を担う王と父親に女神から『御神託』として伝えられた。



 幼い頃からテオルド自身も自らの異能を少しずつ感じていた。
 手に入れたいと思うモノは必ず手に入る。それは公爵家の権力とは別の場所でもだ。
 10歳にしてテオルドは既に国取りを考えるようになっていた。
 このまま行けばチャズール王国は労せずテオルドの手に落ちて来る。


 だが、あの日の出逢いより、彼もまた女神の悪戯に翻弄される事になる。


 ************


「主様」
「.................」
「林の木の枝に引っ掛かっていたそうです。爆風で飛ばされたのでしょう」

 そう言いながらトーザは布に包まれた物をテオルドに差し出す。


「................」


 それは千切れた片翼。真っ白であった筈のそれは光を失い、焦げて黒くなっていた。真面な羽根は一枚も残っていない。赤黒い血の跡は既に乾いていた。

 ほぼ毎日のように綺麗に洗っていた羽は、一瞬の内に焼けて燃えてしまった。


 いつでも側に置いて育てた彼女が姿を消した。

 こんな事なら天界に行かせた方が良かった。
 いや......彼女は俺を護ったのだ。 
 爆発を防ごうとしたのだろう。
 燃えた樫の木の下に壺の破片と黒炭になった人の亡骸が落ちていた。下に投げられ爆発していれば俺も死んでいただろう。




 賢い.........全てが白い.........真っ直ぐな.........

 リリア


 俺の..................................楔
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