117 / 146
◇式前30日の記録
16.真夜中の訪問者⑷
しおりを挟む
「.........お前.........誰なんだ?」
「昨日よりリリア様の護衛に雇い入れ頂きましたの。グッ.....フウ。どうですか?わたくし合格ですか?テオルド様」
「護衛?本当か?」
女の首と左腕をギチッと離さないまま聞き返す。
「.........テオルド?テオルドなの?」
「リリア.........護衛雇ったのか?」
「護衛.........あ、スパラッシュの事?」
「ん?スパラッシュ?」
ベッドに掛かっているドレープを避け、白い髪の女性が顔を出した。月明かりに反射して緑色の澄んだ瞳が煌めいて、『悪気』で視力を強化していたテオルドには、彼女がまるで女神の様に美しく見えた。
久しぶりに.........胸がときめく。やはりリリアは特別だ。
「ええ、そうですわ。女神様に人に変えて頂きましたの。糸は出せますから護衛に雇い入れて頂きました。...ゴホッ.........シューマ様に」
スパラッシュは壁に苦しげだが凛とした声で答える。首を掴む手が離れ身体を押さえる力が少し弱まった。
「.................何故だ.........リリアの友人だからか?それだけじゃないだろ?目的は何だ?」
「下界に.........叶えたい事がございますの。その為に天界での地位も力も捨てて参りました。出来ればテオルド様にも協力をお願いしたいのですが、まあ、それは追々」
「.................分かった。信じよう」
テオルドはゆっくりとスパラッシュから身体を離す。
「テオルド.........」
リリアがベッドから出て小走りで近づいて来る。
「.........起こして、済まない。顔見に来ただけだったんだけど」
少しバツが悪い。まさかリリアの部屋の中で戦闘になるとは思わなかった。迂闊な行動だった。下手をすればリリアが怪我をしてしまう所だった。下を向くテオルド。
「平気よ。テオルドもスパラッシュも無事で良かった。.........貴方と全然会えなくてスパラッシュの事言えなくて.........。ビックリした?」
「ああ。でも途中で『悪気』が無いから可笑しいとは思ってた。そうか.........天界の者は『悪気』は発しないんだな.........」
「そうなんだね。考えた事無かったよ」
「.........えっと.........すまん。騒がしくして.........じゃあ、俺.........戻るな」
「..................」
「おやすみ、リリア」
そう言ってテオルドは身体を白い扉に向け歩き出す。ハッとして顔を上げたリリアに背を向けた。
「テオルド。あの.........あのっ!もう少しだけ.........」
リリアは小さな声でそう言いながら腕を延ばしてテオルドのバスローブの肘の辺りを指先でキュッと摘む。
「え?.........う?.........うん」
一瞬呆けるテオルドだったが、俯くリリアを見て少し胸が高鳴る。
「.........では、わたくしお部屋を出ましょうか?」
スパラッシュは指先をクルクル回し部屋の中の糸を回収しながら言った。
「え?あ、いや.........俺の部屋に行こうか?スパラッシュ、君はまだ部屋は与えられて無いのか?」
「明日同じ階にご用意頂けるそうですわ。護衛ですからね。今は一緒に寝ておりました」
「そうか。悪かった。迂闊な行動だった。済まない。怪我はしてないか?」
「ふふ。テオルド様は素直ですね。イヤらしさが無くて好感が持てます。糸で衝撃は抑えましたから大丈夫ですよ。腕はもげそうでしたが。やはり貴方はお強いですね。戦い慣れてる」
「.................それは.........どうも。.....じゃあ、少しだけ....行こうか、リリア」
「うん。じゃなくて、はい。参ります」
「俺の前では普段通りで良いよ」
そう言ってテオルドはふふっと笑った。
「昨日よりリリア様の護衛に雇い入れ頂きましたの。グッ.....フウ。どうですか?わたくし合格ですか?テオルド様」
「護衛?本当か?」
女の首と左腕をギチッと離さないまま聞き返す。
「.........テオルド?テオルドなの?」
「リリア.........護衛雇ったのか?」
「護衛.........あ、スパラッシュの事?」
「ん?スパラッシュ?」
ベッドに掛かっているドレープを避け、白い髪の女性が顔を出した。月明かりに反射して緑色の澄んだ瞳が煌めいて、『悪気』で視力を強化していたテオルドには、彼女がまるで女神の様に美しく見えた。
久しぶりに.........胸がときめく。やはりリリアは特別だ。
「ええ、そうですわ。女神様に人に変えて頂きましたの。糸は出せますから護衛に雇い入れて頂きました。...ゴホッ.........シューマ様に」
スパラッシュは壁に苦しげだが凛とした声で答える。首を掴む手が離れ身体を押さえる力が少し弱まった。
「.................何故だ.........リリアの友人だからか?それだけじゃないだろ?目的は何だ?」
「下界に.........叶えたい事がございますの。その為に天界での地位も力も捨てて参りました。出来ればテオルド様にも協力をお願いしたいのですが、まあ、それは追々」
「.................分かった。信じよう」
テオルドはゆっくりとスパラッシュから身体を離す。
「テオルド.........」
リリアがベッドから出て小走りで近づいて来る。
「.........起こして、済まない。顔見に来ただけだったんだけど」
少しバツが悪い。まさかリリアの部屋の中で戦闘になるとは思わなかった。迂闊な行動だった。下手をすればリリアが怪我をしてしまう所だった。下を向くテオルド。
「平気よ。テオルドもスパラッシュも無事で良かった。.........貴方と全然会えなくてスパラッシュの事言えなくて.........。ビックリした?」
「ああ。でも途中で『悪気』が無いから可笑しいとは思ってた。そうか.........天界の者は『悪気』は発しないんだな.........」
「そうなんだね。考えた事無かったよ」
「.........えっと.........すまん。騒がしくして.........じゃあ、俺.........戻るな」
「..................」
「おやすみ、リリア」
そう言ってテオルドは身体を白い扉に向け歩き出す。ハッとして顔を上げたリリアに背を向けた。
「テオルド。あの.........あのっ!もう少しだけ.........」
リリアは小さな声でそう言いながら腕を延ばしてテオルドのバスローブの肘の辺りを指先でキュッと摘む。
「え?.........う?.........うん」
一瞬呆けるテオルドだったが、俯くリリアを見て少し胸が高鳴る。
「.........では、わたくしお部屋を出ましょうか?」
スパラッシュは指先をクルクル回し部屋の中の糸を回収しながら言った。
「え?あ、いや.........俺の部屋に行こうか?スパラッシュ、君はまだ部屋は与えられて無いのか?」
「明日同じ階にご用意頂けるそうですわ。護衛ですからね。今は一緒に寝ておりました」
「そうか。悪かった。迂闊な行動だった。済まない。怪我はしてないか?」
「ふふ。テオルド様は素直ですね。イヤらしさが無くて好感が持てます。糸で衝撃は抑えましたから大丈夫ですよ。腕はもげそうでしたが。やはり貴方はお強いですね。戦い慣れてる」
「.................それは.........どうも。.....じゃあ、少しだけ....行こうか、リリア」
「うん。じゃなくて、はい。参ります」
「俺の前では普段通りで良いよ」
そう言ってテオルドはふふっと笑った。
0
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
はるかわ 美穂
恋愛
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
孤独な公女~私は死んだことにしてください
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【私のことは、もう忘れて下さい】
メイドから生まれた公女、サフィニア・エストマン。
冷遇され続けた彼女に、突然婚約の命が下る。
相手は伯爵家の三男――それは、家から追い出すための婚約だった。
それでも彼に恋をした。
侍女であり幼馴染のヘスティアを連れて交流を重ねるうち、サフィニアは気づいてしまう。
婚約者の瞳が向いていたのは、自分では無かった。
自分さえ、いなくなれば2人は結ばれる。
だから彼女は、消えることを選んだ。
偽装死を遂げ、名も身分も捨てて旅に出た。
そしてサフィニアの新しい人生が幕を開ける――
※他サイトでも投稿中
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる