未完】風神アウィンの受難〜全属性神族の番になれる愛妻は女神らしい。いや、俺のだからな?〜

平川

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第五章 「勝者」と「陰謀」

87.可愛い〜!

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「第2闘技場、第2試合勝者、風の神族アウィン・シータ・ウィングボルト!」

 歓声と共にヤマアラシが担架に乗せられ医務室に連れて行かれる。レイピアの鞘を奴の腰から引き抜き刀身を収めた。

 鞘も似てる。やっぱり同じ奴が造ったんだろうな。ヤマアラシは.....獣人神に因縁があるのか?どちらにせよ一度ミル様のレイピアと見比べてみよう。

 レイピアを持ったまま俺はスタスタ歩いて闘技場を後にする。持ってるの邪魔だから取り敢えずチェーンで繋げて腰のベルトに挿しておく。おお!俺もちょっと剣士みたいじゃん!

 さて、俺の試合は終わったし、サラを迎えに行こう。第3試合はいつ始まるか判らん。第2試合の残り4組が終わらないとな.........

 俺は昨日と同じく神の居る観覧席まで飛び、象の衛兵に話し掛けた。

「お疲れ様です。妻を迎えに来ました」
「おお。風か。主は強いな。まあ、私には敵わないだろうがな!がははははっ!」
「ははは。次があれば私なんかで良ければお相手お願いしますよ」
「ふふ。そうだな。今期は機会が無くて残念だ。では、少し待て」
「いつもすいません」

 象がドシドシと報告に向かう。いや~.....あんなのと戦ったら地面に穴空くだろうな。楽しそうだけど。やっぱり鼻とか伸びるんだろうか?などと考えていると、不意に誰がの視線を感じた。チラリとそちらに目を向けると

 審判神.........
 あの銀髪か。なんだよ。サラはやらねーぞ。

「アウィン~!」

 サラがタタタッと走って来る。
 あれ?これデジャヴ.........
 そしてまた蹴躓く。サラ~お約束か!
 だが今度は

 ポスッと腕の中で白銀の髪が揺れる。

 二度も他の奴に触らせる程俺も優しく無い。風で瞬間移動してサラを受け止めた。

「サラ、走らなくて良いから。ゆっくり歩いて来いよ。2回目だぞ?」
「うぅ.........だって.........」
「ふふ。さあじゃあ、次の試合までに飯食っとくか。コロシアムの外に露店が沢山出てたから行ってみるか?」
「うん!気になってたの、嬉しい!」

 ぱあっと顔が綻んだサラの笑顔、可愛い~!

 俺は彼女を抱き上げるとスイッと宙に浮いた。獣人神の姫達が全員見上げてる。何だろ.........表情が無い。面白くないって感じだな。サラはお前らのおもちゃじゃねーぞ?全く。

「姫様達、いつもサラを楽しませて頂いてありがとうございます。また、第3試合の前に預けに参ります」

 ペコリと軽く頭を下げて俺はその場から飛び去る。なんて言うか.........色んな所からの視線が痛いな。だが、サラは俺の妻だ。誰にもやらん!女神だからなんだ。今更なんだって言うんだ。例え神にだって.........俺からサラを奪う権利なんて無い!

 ****


「アウィンあれ!あれ何?」
「あれは焼きそばだな。焼いた肉とキャベツと一緒に甘辛いソースで味付けしてある」
「じゃあ、あれは?」
「あれはお好み焼き。焼いた肉と細かく刻んだキャベツを小麦粉と混ぜて甘辛いソースで.........同じ味だ」
「ふーん」
「まあ、気分だよ。後、食感。場所によっては味が違うらしい。サラのパイと同じで幾らでも自分好みに出来るから」
「成る程。じゃあ、あれは?」
「あれはタコ焼きって言う。細かく切ったタコが入ってて味も.........甘辛いソースであんまり変わらん」

「.................」

「ふっ。ふふふっ。サラ、じゃあさ、食べ比べれば良いんじゃ無いか?俺はあまり食に興味が無いから。サラなら違いが良く判るだろ?」
「そうね、形が違うんだもの。同じ味でも試してみたいわ」
「よし、じゃあ、一つずつ買って検証しよう」
「賛成~!」

 俺とサラは露店で色々買い回る。楽しい。因みに地上の金で買える。別に高くも無いし安くも無い。出店時の場所代とか要るのかな?とか原価は、とか商人なんでつい要らない事を考えてしまう。
 飲み物はシンプルに水を買い、ベンチに座って2人で分けて食べた。これ、ランチデートだな。良し!また一つ恋人らしい事クリアした。順調だ。

「確かに同じ味だけど.........違う物を食べてる気になるね。私はタコ焼きが1番好きかな?タコって海に居る形が決まっていないぐにょぐにょしてる魚だよね?どうしてこれは固いの?」
「魚って言うか軟体動物だな。火を入れると身が締まるんだ。腕が8本有って貝類の仲間なんだって。頭が良い生物で餌までの道順とか覚えられるらしいぞ?イカと似てるけどあっちは腕が10本で、タコは吸盤だけどイカは吸盤じゃなくて鉤爪で獲物を捕まえるんだ。それから.....」
「.........アウィンはなんでそんな物知りなの?」
「知りたがりだから」
「成る程」
「だからサラの事もっと知りたい」
「う?」
「お前が何が好きで何が嫌いで、これから何がしたいのか。そうしたら俺はどうすればサラを幸せに出来るか考えられるだろ?」
「.........もう!アウィン~っどうしてそんなに優しいの?私何も返せないよ....」
「違うよサラ。もう前払いで貰ってる」
「え?何を?」
「俺の妻になってくれただろ?それで充分だ」

 一瞬ポカンとしてからサラの顔が徐々に赤くなりうるうるの涙目になって行く。

 うお?俺、変な事言ったかな?



★★★★★★★★★★★★★★★★

2020年、平川の作品をお読み頂きありがとうございました。
来年の投稿は、過去作の大幅改修、改稿と新作投稿準備の為お時間を頂き、少し遅いですが1/23(土)より致します。

皆様良いお年をお迎え下さい。

2020.12.27


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