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妖精の誕生
しおりを挟む「お付けになられますか?」
妖精の羽根を手に、メリルは羞恥に顔を赤らめるアンジェリカへにじり寄った。
明らか興味を惹き付けられているのに、モジモジとするだけで手を伸ばさない。
その理由に思い至るからこそ、メリルはジリジリと追い詰めている。
「……いい歳をしてと思わない?」
「全く思いませんわ。お嬢様なら、たとえ八十を超えようと妖精そのもの」
「八十って…それでは魔女よ、メリル」
相変わらず自分に甘い侍女に苦笑しつつ、差し出された羽根にそっと手を置いた。
奇しくも本日の部屋着は白いシフォン。
きっとよく合う組み合わせだとは思うが、やはり子供じみた遊びではないかと躊躇ってしまう。
「エメットも見たいはずです」
途端にポンッと頬が赤らんだ。
「………そう…かしら…」
「そうですとも。何より、私もお嬢様が妖精になるお姿を拝見したいのです」
「……じゃぁ…付けてみようかしら…」
待ってましたとばかりにアンジェリカの後ろへ周り、ウエストを絞る為に付いているリボンの結び目へ取り付ける。
「どう?…………可愛い?」
「この世で一番お可愛らしいですわ。本物の妖精かと見紛えてしまいます」
「んもぅ……メリルは甘いんだから」
「お嬢様限定ですけれどね」
姿見の中を覗いていると、部屋の扉が控えめにノックされた。
アンジェリカの好む新鮮な果物を買いに出ていたエメットが戻り、メリルが内鍵を開ける。
「お嬢様、ただいまもど………………」
「? お帰りなさい、エメット」
何故かエメットはカチコチに固まり、「どうしたの?」と近付けばその分だけ後退った。
その反応に悲しくなり、しょんぼりと眉が八の字になってしまう。
やっぱり似合っていないんだと思ってメリルを見れば、口元をニヨニヨさせている。
その意味が分からず困惑していると、エメットは抱えていた紙袋をメリルへ渡して「………っ、失礼致します!!」と言い残し退室してしまった。
「メリル………嘘をついたの?」
「いいえ、大成功ですわ」
親指を立てて満足気に頷くメリルに、そうなの?と小首を傾げてしまう。
「でもエメットは逃げてしまったわ」
「お嬢様…そのように頬を膨らませても、お可愛らしさが増すだけです。それにエメットは…年頃なのでそっとしておきましょう」
「年頃……ってどういうこと?」
メリルは微笑むだけで答えてはくれない。
なんだか子供扱いされているようで悔しく、無意識に頬を膨らませた。
「お嬢様、ちなみにこのようなものも御座いますが…如何致しますか?」
差し出されたのはティアラ。
これもカフェで購入したもので、人工的に作られた宝石が散りばめられている。
あまりの可愛さに目を奪われ、それに気付いたエメットから贈られた。
「やり過ぎにならない?」
「むしろ足りないくらいですわ」
「……エメットがまた逃げてしまうかも」
「縄で括って縛り付けます」
その後、エメットは本当に縄で括られアンジェリカの前に立たされた。
「夢だ……これは夢に違いない……」
そう呟くエメットの顔は赤らんでおり、心なしか目を潤ませてもいる。
熱でもあるのかと心配したアンジェリカが額に手を添えると、その瞬間に崩れ落ちた。
「エメット!!大丈夫!?」
「無理……これは無理…………」
俯きブツブツと何やら呟くエメットの顔を覗き込むと一瞬目を見開き、次いで細めた。
まるで眩しいものを見るかのように。
「…………ご馳走様です…」
その意味が分からずメリルに助けを求めるが、またも親指を立てているだけだった。
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