【完結】欲しかったのは…

Ringo

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運命の隣国 3【後編】 ※騎士side

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殿下とミレーヌ王女が乗る馬車に並走するようにして馬に跨がり、少しずつ近付く自国を見やればキリキリと胃が痛んだ。

殿下達の後ろを走る馬車には第五王女が乗っている。状況を鑑みて同時に輿入れとなった。


───の為に。


あの日、深酒をしいつ寝入ったのかさえ覚えていない。けれど夢を見たことは覚えている。

…トリシアを抱く夢だ。

あまりにも生々しくて、会えずにいた日々を埋めるように掻き抱いて何度も精を放った…トリシアとの行為だと思っていたから。

トリシアに対して言い訳になどならない。明らかに深酒をした俺の責任だし、トリシアだと思ったからこそ何度も注いだなんて言えるわけがない。

分かっている。

それでも、どうすればトリシアを失わずにいられるかとばかり考えてしまう。帰ったら結婚式を挙げようと楽しみにしていたのに…いっそこのまま馬を走らせ、トリシアと共に逃げてしまおうか。平民となる覚悟など出来ているのだから。

第五王女は『子が出来やすい時期でした』と言っていたが、それも狙った上だったのかと思えてならない。


『トリシアさんとは…少しずつで構いません』


まるでいつかは自分だけになるかのように期待をして、恥じらう姿も悪魔にしか見えなかった。

出立直前に訪ねてきた側妃には謝られ、自身の想い人の最期について教えられたが…悔やむくらいなら娘を閉じ込めるくらいすればよかったんだ。


『あの子のことは無理をしないで』


そう思うのなら俺に嫁がせずに幽閉でもして、子がいるなら堕胎させればいい。トリシア以外が生む子供など愛せるわけがない。

両親には早馬で知らせているが、無理を言ってお願いしていた従兄は喜ぶだろう。伯爵家当主など荷が重いと常々言っていたのだから。

両親は…本音では俺に継いで欲しいと思っていることくらい分かっていたから、きっと受け入れるだろう。なんだかんだと上昇思考の強い二人だ、相手が王女なことも喜びそうだ。

トリシアは…きっと泣かせてしまうだろうな。深く傷付けて、もう顔も見たくないと言われるだろうか。もしも子が出来ていたら、生むのは嫌だと言うだろうか。もしも…一緒にいたいと言ったら受け入れてはくれないだろうか。

第五王女を抱くことなど二度とない。正妻の立場と本館での生活はくれてやる。幸いなことに伯爵以上は第二夫人まで娶る権利を有しているから、社交もトリシアと行えばいい。第二夫人なら身分差など関係ないのだから不幸中の幸いだ。


「まもなく国境です」


つらつらと考え事をしていたら隣国との国境まで来ていた。今夜はここで人も馬も休み、明日の夕刻には王宮へと到着する…そして帰宅だ。

二ヶ月前には想像もしていなかった展開に頭痛と胃痛は止まないけれど、失いたくないものの為には戦うと決めた。




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