【完結】溺愛喪失シリーズ

Ringo

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溺愛夢中

舞踏会

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エドワードは、自分の腕の中で可愛く寝息をたてている愛しい少女の寝顔を眺めている。

すっかり開き直り、いつの間にか両家からも温かく理解されていた同部屋での生活。

今朝もふたりはカロリーナの部屋で目覚める。


「んっ、、」


もぞ…と胸にすり寄るカロリーナ。


「早く結婚したい…」


そう呟いて、もう一度目を閉じて眠りについた。




 ◆  ◆  ◆



「本当に??」
「あぁ、本当に」
「エディ!」


熱い抱擁と口付けを交わすふたり。
間もなく15歳を迎えるふたりは、もう少年や少女といった呼び名は似つかわしくない雰囲気になってきた。

エドワードは日々の鍛練の成果で男らしい体つきと顔つきになり、今まで以上に輪をかけた美しさを放つ。

なんとかお近づきになりたいと思う令嬢も多いが、カロリーナへの溺愛ぶりが広く知れ渡っていることから、親に窘められ止められるケースが殆ど。

それでも果敢に接触しようとする者もいるが、絶対零度の対応と視線で震え上がってしまう。

今となっては、カロリーナに向ける優しく甘い雰囲気を眺めて楽しむことに方向転換している令嬢ばかり。

いつか愛人でもいいから…と虎視眈々と狙う僅かな令嬢達も残ってはいるが、今のところ平穏に過ぎている。


「愛しいカロリーナ…」


命を捧げることも厭わない程に愛してやまない。
そう思いながら、口付けを交わしつつ腰に回した手を下にさげて丸みを帯びた場所を撫でる。

すっかり女性らしい体つきになり、胸は前世のものとさほど変わらないまでに膨らみ、腰は折れそうな程に細いのにお尻は張りがあって丸い。

背中からお尻までを撫で擦りながら、ここまでの成長過程を思い出して堪能する。


「今夜から俺の部屋で過ごすんだよ」
「…夫婦の寝室?」


そう、夫婦の寝室。
いつかはカロリーナと…と願い用意されていた寝室を、ずっとひとりで使ってきた。

同居が始まってからは、我慢できずに忍び込むようになっていたのでカロリーナの部屋で過ごしていたが、ついに「もういいんじゃないか?」と半ば呆れた両家から、ついにお許しが出たのだ。


「舞踏会から戻る頃には準備も整っているよ」


尚も口付けを交わしながら体を撫で擦り、今夜の準備のために付けられた香油の香りを嗅ぐ。


「エドワード様、そろそろカロリーナ様を解放なさって下さいまし。間に合わなくなりますよ」


老侍女マーサからの声かけに、名残惜しそうにしながら唇と手をカロリーナから離す。


「分かっている…」


そう言いながら、また軽く口付けを始めてしまったので、マーサの手により引き剥がされた。


「可愛くなっておいで」
「待っていてね」


手の甲に口付けし、準備のために部屋を追い出されたエドワードは、自身の準備もするために自室へと向かう。


今夜は舞踏会。
成人を前にした全貴族が集う盛大な宴。

通常は伯爵家以上の催しが多いなか、低位貴族の令嬢や子息も参加する資格を持つとあって人気が高い。

その場で結婚相手を見繕おうと算段する者も多数いることから、身に纏う衣装にも力が入る。


「楽しみだ…」


思わず呟いてしまうほど、エドワードは今夜カロリーナに用意したドレスを思い出すと込み上げるものがある。

記憶を手繰り寄せデザインさせたドレス。
その為に、体への痕付けを最小限にした。


「よし、行くか」


女性に比べれば男性の身支度は早い。
玄関ホールでカロリーナを待つために部屋を出て向かおうとすると、慌ただしく走り回る使用人たち。


「何かあったのか?」


カロリーナの部屋から出てきたマーサにそう問えば、大袈裟に「はぁ…」と溜め息を吐いて呆れたような慈しむような目で見上げられた。


「ドレスに感動して涙が止まらなかったんですよ、ぼっちゃま。驚かせるのも時と場合を選んでくださらないと困ります」
「そうか…泣いてしまったか」


カロリーナの部屋に視線を向け、今すぐにでも駆けつけたい思いに足が動こうとした時、ガシッとマーサに腕を掴まれた。


「もう大丈夫です。今は侍女に全速力で仕上げられております。間もなくですのでお待ちください」
「…分かった」


後ろ髪を引かれながら玄関ホールへと歩き出すと、「エドワード様」とマーサが呼んだ。


「なんだ?」


マーサが…優しく…温かく微笑んでいる。
珍しい事もあるなと思いながら返事を促す。


「良き思い出の意匠なのでしょう?カロリーナ様を深く思われるそのお心に、マーサは万感の思いでございます。ご立派な紳士へと成長成されましたね」


最上の礼をして立ち去ったマーサをいつまでも見送りながら、エドワードは一粒の涙を流した。

生まれた時から傍にいたマーサが気付かない筈はなかったのだ。

思えばいつも、仲が良すぎると言われるふたりを何かと擁護し見守ってくれていた。

確信は持っていないのかもしれない。
もちろん、全てを話すことは出来ない。

だけどマーサ…とエドワードは思う。


「いつか知ってほしい…俺達の秘密を」





 ◆  ◆  ◆




ゆっくりと階段を降りてくる天使。

身に纏うドレスの意匠も手伝って、意識が一気に300年前へと引き戻されそうになる。

けれどそれは悲しいものではない。
幸せに包まれた始まりの記憶。


「エドワード様…お待たせ致しました」
「綺麗だよ、カロリーナ」


手の甲に口付け、じっくりと眺める。
小物や細部に至るまで再現させた紫のドレス。
膨らんだ胸にはしっかりとした谷間が作られ、細いウエストから下はふわりとドレスで覆われているが、お尻が丸みを帯びていることは想像に容易い。


「俺から離れてはダメだよ、カロリーナ」
「頼まれても離れませんわ」


腕に華奢な手が絡められる。


「行こうか」
「はい」


今夜の意匠はエドワードが指示をした。
自分のものとカロリーナのもの、両方を。


「エディもその意匠なのね」
「君がその意匠ならこれしかないだろう?」


今夜は全貴族の令嬢子息にふたりの仲を披露する。
それなら意匠はこれしかないとエドワードは考えた。


「覚えてくれていて嬉しい」
「君の事なら全てを覚えているからね」


優雅にエスコートをして、されて、ふたりが馬車に乗り込む姿を見守りながら、マーサはカロリーナの呟きを思い出す。


『結婚式の…』


涙を流しながら確かにそう言っていた。
ほかの使用人には聞こえないほどの小さな呟き。

きっと結婚式で着た意匠なのだろう…とマーサは目頭を熱くさせる。

それを細部まで再現させたエドワードと、すぐに気付いたカロリーナ。

どこまでも互いを思い合い、愛し合うふたり。


「素敵な夜を…」


ほかの使用人が仕事に戻ってもひとり見送り続けついたマーサは、馬車が去った方角に礼をしてから屋敷の中へと戻っていった。






 ◆  ◆  ◆





「素敵…」


感嘆するカロリーナをエスコートして、本日の舞台となる王宮の会場内へと歩を進める。


「全貴族が集まるからね。一番大きくて豪華なホールが選ばれているんだ」


何代かに一度、王太子の希望で開催されると言われている全貴族子息令嬢が集まる舞踏会。

始まりは、運命の相手を自分で探したいと言い出した王子がいたことが由来だとされている。

この日ばかりは、普段質素倹約に努める低位貴族も子供の衣装にお金をかけて着飾らせる為、ホールの中は色とりどりの豪華なドレスが花のように咲き誇る。


「カロリーナが一番綺麗だ」
「エディも一番素敵よ」


ぴたりと腰を寄せてカロリーナの頬へ口付け、周りの視線など全て無視してふたりの世界。

王太子が入場するまでの間、イチャイチャと甘い空気を周りに飛ばしていた。


「第一王子の入場でございます」


近衛に付き添われて会場入りする王太子を、多くの令嬢が目を輝かせて見ている。

未だ婚約者もいない王太子。
この時代のこの国は、貴族で良識があれば低位でも王族へ嫁ぐことが出来るとあって、じりじりと令嬢達の熱が上がっていく。


「踊って頂けますか?愛しい人」
「えぇ、喜んで」


舞踏会の始まりの合図が鳴り、王太子と王女が双子ならではの息の合ったダンスを披露したのち、参加者達のダンスへと流れた。

前世からダンスを好んでいたふたり。
古典的なものも難なくこなし、最新のものも優雅に踊り続ける。


「ほかの男の手を取ってはダメだよ」
「エディ以外と踊りたくないわ」


踊りながら器用に何度も口付けを交わし、身長差から生まれた〔谷間を見下ろす〕光景に恍惚とするエドワードは、自身の昂りを必死に抑えた。

屋敷に帰れば、もう堂々と同じ部屋に戻れる。

そう考えただけで抑え込んだはずの昂りがぶり返してしまい、周りに誤魔化す為、カロリーナを抱き寄せて密着させた。


「エディ…大きくなってる」
「カロリーナが可愛いから」


どんなに恥ずかしいことでも、カロリーナになら知られても構わない。

密着させたことでより昂りが増してしまったが、それも構わずにカロリーナを抱き寄せ続けた。

三曲踊り終わったところでバルコニーへ移動し、風にあたりながらシャンパンを飲みながら寄り添う。


「あと一年ちょっとで結婚式だ」
「…っ、楽しみね…」


エドワードは、綺麗に盛り上がった谷間に指を抜き差しして楽しんでいる。
本当なら露出させて眺めたいが、ここは舞踏会のバルコニー…なんとか自制していた。


「早く帰ろう、カロリーナ」
「まだっ、…っ、御挨拶していないわ…あっ、、」


高位貴族は、舞踏会の最中に王太子へ挨拶をするのが決まりとなっている。
それをするまで帰れない…と口にするカロリーナに非はないが、ほかの男への挨拶を優先されたことが面白くないエドワード。

グラスを置くとカロリーナの後ろに回り、ドレスの中に手を差し込み胸を揉んだ。


「だめよっ…っ、着崩れてしまう…っ、、」
「ちゃんと直してあげるから大丈夫だよ」


ホールには背を向けているふたり。
婚約者を後ろから抱き締めて…胸を揉んでいるとは気付かれないよう、念のために死角となるバルコニーの端へ移動した。


「大きくて柔らかい…素敵だ」
「もうっ、、エディ…っ」


優しく揉みながら、時折乳首を刺激する。
それに弱いと知っているエドワードは執拗に攻める。


「さっさと挨拶して帰ろう」
「んっ…っ、分かった」


まだ舞踏会は序盤だが、盛り上がり始めたふたりは早くひとつになりたい。

カロリーナの胸元を直して、王太子の元へと向かう。


「まだいいだろう?」
「もう帰る。カロリーナを愛したい」


引き止めようとする王太子に素直に理由を述べ、呆れた顔をされてもお構い無し。


「お前…少しは自制しろよ」
「する気はないし、したくもない」


呆れる王子の隣では、王女がクスクスと笑う。


「相変わらずなのね、エドワード」
「カロリーナが日に日に綺麗になるからね」


再従兄弟だからこそ、エドワードの溺愛ぶりをよく目にするし耳にしてきた。

今も早く抱きたいのを我慢していると隠しもしない。


「今夜から同じ部屋なのでしょう?早く帰りたくなっても仕方ないわ」


母親同士が従姉妹とあって情報が早い。
恥ずかしい…と少し思うも、ずっとお尻を撫でられているカロリーナはもう立っているのがやっと。


「またお話ししましょう?カロリーナ」
「はい、殿下」


なんとか礼をして、エドワードとカロリーナは舞踏会を足早にあとにした。






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