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激怒する妻 side夫
「バカ!ギルのバカ!!もう知らない!嫌い!」
「ベル、落ち着いて」
「落ち着いてるわよ!離して!!ギルなんてもう知らない!出ていく!!」
「ベルエア!」
「やっ!んんっ……!!!」
泣いて暴れる妻を抱き締めとにかく宥めようとしていたが、聞き捨てならない言葉が放たれたことで寝台に組み敷き口を塞いだ。
イヤだと抵抗して胸を押したり叩いたりしてくるが、正直なところ全く効き目はない。
細い腕を頭の上で片手で拘束し、背けようとする顔をもう片手で押さえて無理やり舌を絡めた。
噛み付かれるかと思ったが、さすがにそうはせずに泣き続けるだけ。
一体、何がどうしてこうなった?
連日繰り広げられている妃殿下の癇癪に疲れきって帰宅すると、愛する妻がいつものように玄関で出迎えてくれて…俺の帰宅に嬉しそうな笑みを浮かべ、両手を広げる可愛い様子に応えようとしたところで…突然涙を溢れさせて俺を突き飛ばし走り去ろうとするから、すぐに確保しそのまま抱き抱えて寝室に連れ込んだ。
バカ?嫌い?…それは甘んじて受け入れよう。
離して?出ていく?…許可できるわけがない。
「……ベルエア…どうした?何に怒ってるんだ?話してくれないと分からない。俺は君に何をしてしまったんだ?教えてくれ…頼むから……」
「…っ……ふ、ぅ、、っ……」
少し落ち着いたかと思い唇を離すと、もう暴れることはしないものの涙は止まらない。
妻の涙は俺を動揺させる。
流してもいいのは閨の時だけだ。
快感による生理的なものと嬉し涙以外はダメだ。
「ベルエア…出ていくなんて言わないでくれ。君がいなくなったら俺は生きていけない。何が君を傷付けた?俺は何をしたんだ?」
「…う、、ぅ……っ…バカ…ギルのバカ……」
ポカポカと、力なく叩いてくる。
殴って落ち着くなら幾らでも叩いて構わない。
妻が死ねと言うなら喜んで死のう。
逆はダメだ。
妻が死ぬと言うなら俺も死ぬ。
「あぁ、俺はバカだ。何が君を傷付けたのか全く分からないんだ…すまない、教えてくれ」
何度も口付けを落とし、その時々で舌を絡めていると少しずつ応えてくれ始めて…安堵する。
本気で失うかと思った。
もう二度と抱くどころか、抱き締めて口付けをすることも…愛してやまない笑顔を見られなくなるのかと恐怖に襲われた。
「ベル…俺のベルエア…何に憂いているんだ?」
「…っ……貴方は…私のものよ……っ…」
「当然だ、君以外のものになんてならない」
「ならっ…どうして……っ…」
その後、なんとか宥めて原因を聞き出せば…俺の迂闊すぎる行動が原因だった。
この日、いつものように癇癪を起こして暴れた妃殿下の対応に辟易とし、ぐったり疲れていたところに馴染みの商会がやって来た。
注文していたものが届いたのだ。
目の前に出された箱を開ければそこには隣国のデザインを模した特注のドレス。
贈り先は勿論ベルエア。
結局そのドレスに少し手を加えてもらうことにしたのだが、その時に前もって依頼していた新しい香水の試作品も受け取ったのだ。
今までふたり共用で使用していたものを改良したもので…妻を思い出させるその香りを少しだけ首と手首にふりかけた。
疲れていたから妻が恋しかった。
他人には香りの違いなど分からない…それほどに僅かな改良を加えただけだったが、俺と深く愛し合っている妻には分かる。
だから妻は俺が浮気したのだと誤解した。
俺が他の女と通じたのだと心を痛めた。
完全に俺のせいだ。
「ごめん…もう勝手にひとりで新しい香水や香油は試さないから。必ずベルと試す」
まだ少し鼻を啜っているが、もう悲しみからくる涙は流していない…とは言え目元は赤く腫れてしまっていて、その痛々しい姿に胸が痛む。
「ベル…君は俺の全てだ。君がいなくなるなんて耐えられない。出ていくなんて言わないでくれ」
もう拘束は必要ないと手を離せば、途端に細い腕が俺の首に回って引き寄せられ…深い口付けを交わし、蕩けるように熱い時間が始まった。
誤解とは言え辛い思いをさせたが…僅かな違いにも気付くところや嫉妬に駆られる姿は…興奮して滾ってしまう。
それだけ愛されているのだと、激しすぎる想いに胸が熱くなって昂りは収まらなくなる。
かなり動揺したし心臓は止まりかけたが、結果として妻の激しくも深い愛情を再確認出来た。
「あの…食事は……」
「そんなものより君が欲しい」
食事など忘れていた。
そんなことより妻と愛し合っていたい。
食事と妻なら迷いなく妻をとる。
長い時間をかけて愛し合い、やがて可愛い妻は疲れて果て、いつものように俺の腕の中にすっぽりとおさまり眠りについた。
扉の向こうに声をかけて冷たいタオルを頼むと既に用意されていて、運び込まれたワゴンには片手で摘まめる軽食も乗っている。
我が家の使用人はなかなか気が利く。
赤く腫れている瞼にタオルを乗せてやると、その冷たさにピクリと震え、甘えるようにすり寄ってきた。妻が可愛いすぎる。
「んっ……ぎる………」
流石に今夜はもうこのまま大人しく寄り添うだけにする。…外はもう白けてきているし。
妻は暫く起き上がれないだろう。
このまま、ずっと腕の中にいてほしい。
「おやすみ、ベルエア」
俺の大切な最愛の人。
「ベル、落ち着いて」
「落ち着いてるわよ!離して!!ギルなんてもう知らない!出ていく!!」
「ベルエア!」
「やっ!んんっ……!!!」
泣いて暴れる妻を抱き締めとにかく宥めようとしていたが、聞き捨てならない言葉が放たれたことで寝台に組み敷き口を塞いだ。
イヤだと抵抗して胸を押したり叩いたりしてくるが、正直なところ全く効き目はない。
細い腕を頭の上で片手で拘束し、背けようとする顔をもう片手で押さえて無理やり舌を絡めた。
噛み付かれるかと思ったが、さすがにそうはせずに泣き続けるだけ。
一体、何がどうしてこうなった?
連日繰り広げられている妃殿下の癇癪に疲れきって帰宅すると、愛する妻がいつものように玄関で出迎えてくれて…俺の帰宅に嬉しそうな笑みを浮かべ、両手を広げる可愛い様子に応えようとしたところで…突然涙を溢れさせて俺を突き飛ばし走り去ろうとするから、すぐに確保しそのまま抱き抱えて寝室に連れ込んだ。
バカ?嫌い?…それは甘んじて受け入れよう。
離して?出ていく?…許可できるわけがない。
「……ベルエア…どうした?何に怒ってるんだ?話してくれないと分からない。俺は君に何をしてしまったんだ?教えてくれ…頼むから……」
「…っ……ふ、ぅ、、っ……」
少し落ち着いたかと思い唇を離すと、もう暴れることはしないものの涙は止まらない。
妻の涙は俺を動揺させる。
流してもいいのは閨の時だけだ。
快感による生理的なものと嬉し涙以外はダメだ。
「ベルエア…出ていくなんて言わないでくれ。君がいなくなったら俺は生きていけない。何が君を傷付けた?俺は何をしたんだ?」
「…う、、ぅ……っ…バカ…ギルのバカ……」
ポカポカと、力なく叩いてくる。
殴って落ち着くなら幾らでも叩いて構わない。
妻が死ねと言うなら喜んで死のう。
逆はダメだ。
妻が死ぬと言うなら俺も死ぬ。
「あぁ、俺はバカだ。何が君を傷付けたのか全く分からないんだ…すまない、教えてくれ」
何度も口付けを落とし、その時々で舌を絡めていると少しずつ応えてくれ始めて…安堵する。
本気で失うかと思った。
もう二度と抱くどころか、抱き締めて口付けをすることも…愛してやまない笑顔を見られなくなるのかと恐怖に襲われた。
「ベル…俺のベルエア…何に憂いているんだ?」
「…っ……貴方は…私のものよ……っ…」
「当然だ、君以外のものになんてならない」
「ならっ…どうして……っ…」
その後、なんとか宥めて原因を聞き出せば…俺の迂闊すぎる行動が原因だった。
この日、いつものように癇癪を起こして暴れた妃殿下の対応に辟易とし、ぐったり疲れていたところに馴染みの商会がやって来た。
注文していたものが届いたのだ。
目の前に出された箱を開ければそこには隣国のデザインを模した特注のドレス。
贈り先は勿論ベルエア。
結局そのドレスに少し手を加えてもらうことにしたのだが、その時に前もって依頼していた新しい香水の試作品も受け取ったのだ。
今までふたり共用で使用していたものを改良したもので…妻を思い出させるその香りを少しだけ首と手首にふりかけた。
疲れていたから妻が恋しかった。
他人には香りの違いなど分からない…それほどに僅かな改良を加えただけだったが、俺と深く愛し合っている妻には分かる。
だから妻は俺が浮気したのだと誤解した。
俺が他の女と通じたのだと心を痛めた。
完全に俺のせいだ。
「ごめん…もう勝手にひとりで新しい香水や香油は試さないから。必ずベルと試す」
まだ少し鼻を啜っているが、もう悲しみからくる涙は流していない…とは言え目元は赤く腫れてしまっていて、その痛々しい姿に胸が痛む。
「ベル…君は俺の全てだ。君がいなくなるなんて耐えられない。出ていくなんて言わないでくれ」
もう拘束は必要ないと手を離せば、途端に細い腕が俺の首に回って引き寄せられ…深い口付けを交わし、蕩けるように熱い時間が始まった。
誤解とは言え辛い思いをさせたが…僅かな違いにも気付くところや嫉妬に駆られる姿は…興奮して滾ってしまう。
それだけ愛されているのだと、激しすぎる想いに胸が熱くなって昂りは収まらなくなる。
かなり動揺したし心臓は止まりかけたが、結果として妻の激しくも深い愛情を再確認出来た。
「あの…食事は……」
「そんなものより君が欲しい」
食事など忘れていた。
そんなことより妻と愛し合っていたい。
食事と妻なら迷いなく妻をとる。
長い時間をかけて愛し合い、やがて可愛い妻は疲れて果て、いつものように俺の腕の中にすっぽりとおさまり眠りについた。
扉の向こうに声をかけて冷たいタオルを頼むと既に用意されていて、運び込まれたワゴンには片手で摘まめる軽食も乗っている。
我が家の使用人はなかなか気が利く。
赤く腫れている瞼にタオルを乗せてやると、その冷たさにピクリと震え、甘えるようにすり寄ってきた。妻が可愛いすぎる。
「んっ……ぎる………」
流石に今夜はもうこのまま大人しく寄り添うだけにする。…外はもう白けてきているし。
妻は暫く起き上がれないだろう。
このまま、ずっと腕の中にいてほしい。
「おやすみ、ベルエア」
俺の大切な最愛の人。
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