僕の婚約者は悪役令嬢をやりたいらしい

Ringo

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これはまるでアレですわ! ※ヒロイン視点

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「編入生……ですか?」

「うん、とても優秀らしいよ」


 厳しくも充実した王太子妃教育を終えたあとのお気に入り、ほのぼのティータイム。

 今日も今日とてわたくしの婚約者は素敵で、眺めているだけでも癒されますわ。


「大変な努力をなされたのでしょうね」


 長い付き合いでも会話の尽きないわたくし達ですが、本日の話題はわたくし達が通う王立学園にやって来ることになった編入生について。

 教育に力を入れるこの国では全ての子供に通学が義務付けられていて、貧しい平民でも通えるようにと無償の学校も点在しております。

 わたくし達が通う王立学園は有償で、高水準な教育を施す代わりに学費はとんでもなく高額。

 通う生徒は殆どが貴族子女で、平民もおりますがいずれも資産家の子供達でごく僅か。

 更には伯爵位程度のマナーを習得していることが入学条件のひとつとなる為、入試に向けて“予備院”に通う者も多いのだと聞きます。

 その予備院において歴代最高の成績を修めた平民の女性が編入してくるとのこと。

 “入学”ではなく“編入”で。


「向上心のある女性らしくてね、ご両親が与えてくれた好機に感謝して懸命に努力したそうだよ」

「素晴らしい方ですわね」


 当初は入学が望める程度で構わないと依頼された講師の方々も、女性の努力する姿勢に感銘を受けて奮起なされたとか。


「学力も二年生と変わらないとの判断から、僕達の同級生として編入することになったんだって。楽しみだよね」


 そう言って、優雅に紅茶を飲みながらにこりと微笑むマリウス様…今日も今日とて麗しくて見惚れてしまいます。

 腰まであるサラサラの銀髪を緩くひとつに纏めて肩に流し、神が寵愛したとしか思えない美貌。

 スカイブルーの切れ長な瞳はゾクリとするほど美しくて、男性なのにぷるぷると潤っている少し薄めの唇から漂う色気……はぅ…素敵♡


 !!!!!!!!!!!!!!


 そんなことよりこの展開…どこか既視感のあるものだと思っておりましたが…そうですわ!!

 ですわよ!!!!
 従姉妹のエトワールが貸してくれた!!
 巷で話題になっている!!
 世の女性を虜にしている!!

たとえ許されぬ愛だとしても大ベストセラー小説】!!


 主人公の男性が婚約者ではない女性に心を移してしまう不実なお話ですが、運命の相手を想う一途さに胸は高鳴り、ちょっぴり破廉恥な描写には頬を赤らめてしまうのです。


「ラシュエル?顔が赤いよ、大丈夫?」

「!!!!!!!!」


 おでこをコツンだなんて!!神が創りし美貌があまりに至近距離過ぎて鼻血が出そうですっ!!


「っだ、だい…だいじょぶ…ですわ」

「そう?無理はしないでね」


 いつの間にか席を隣に移してわたくしの腰を抱いているし…マリウス様は幼い頃からスキンシップが多めで困ってしまう。

 いえ、決して嫌ではなく…ただただ恥ずかしいと申しますか、わたくしだって恋愛小説バイブルに出てくる女性達のように応えたいのに、マリウス様を目の前にすると羞恥心が勝ってしまって。


「耳まで赤い…やっぱり熱でもあるのかな」

「いえっ、あの…っ」


 そう言って耳朶を優しく噛むから、ますます赤くなっているだろう事が分かる程に熱くなった。


「首筋も赤いね…色白だからよく分かる」


 チュッチュッと小さな音をたてながらマリウス様の唇が触れて、もうホントありがとうございます!!と叫び出したい衝動を抑え、されるがままになっているだけのヘタレ女でございます。


「ラシュエル…寒い?震えてるよ」


 いえ、悦びに打ち震えているだけですわ…なんてはしたない事を言えるはずもなく、大丈夫だと返して逸る鼓動を落ち着かせる。

 ところでマリウス様…あなた本当は分かってやってるのでしょう?

 チラリと見えた口元は口角が上がっているし、腰に回した手は不埒な動きで撫で回しているし。


「好きだよ、ラシュエル」

「わたくしも…大好きですわ」
 

 いつの間にか遠ざかっていた使用人達を視界の端に映しながら、ゆっくりと近付いてきた薄い唇がわたくしのものへと重ねられた。





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